腸内細菌ドナー支援アプリ「ちょうむすび」の新規開発

腸内細菌ドナー支援アプリ「ちょうむすび」の新規開発

腸内細菌ドナー支援アプリ「ちょうむすび」の新規開発

メタジェンセラピューティクス株式会社 様

事業統括部 プロダクトマネージャー 黒澤 晋様

公開日 2025.06.10


お客様の課題 お客様の課題
●事業を推進する上で地域に特化したサービスが必要だった
●toC向けのWebアプリ構築の実績がある開発会社を探していた
●開催が決定しているイベントに合わせた、タイトな納期でのリリースが必須だった
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ソリューション ソリューション
●サービス設計やプロジェクト全体の構想を踏まえた、的確な支援を受けられた
●toC領域での豊富な実績に基づき、ユーザー視点に立った提案を数多く得られた
●密なコミュニケーションと柔軟なスケジュール対応でタイトな納期でのローンチを実現

地域に特化したドナー募集における課題

メタジェンセラピューティクス株式会社様は、「腸内細菌叢(マイクロバイオーム)」の力を活用して新しい医療や創薬の社会実装に取り組む、順天堂大学・慶應義塾大学・東京科学大学発のバイオベンチャーです。

「マイクロバイオームサイエンスで患者さんの願いをかなえ続ける」というパーパスを掲げ、健康なドナーから採取した腸内細菌を含む便を加工し、患者さんの腸内に移植する「腸内細菌叢移植(FMT:Fecal Microbiota Transplantation)」の研究開発を進めています。

本事業の推進には、原料となる便を提供していただく腸内細菌ドナーからの協力が不可欠です。ドナーとなるためには厳格な適格性検査を通過する必要があり、合格率は約10%と見込まれています。たくさんのドナーにご協力いただくために、2025年4月、山形県鶴岡市に「つるおか献便ルーム」を開設しました。便の提供は当該施設で行う必要があることから、対象となるドナーは山形県庄内地域に限定されます。したがって、地域内で持続的にドナーを確保するという大きな課題を抱えておりました。ですが、ローンチ以前にもドナーの募集サービスは存在し成果を上げていました。しかし、当時は全国を対象としていたことから、庄内地域に特化した運用に切り替えることは困難な状況でした。

こうした背景を踏まえ、既存サービスを活用・拡張するのではなく、庄内地域に特化した新たな仕組みとして、腸内細菌ドナー支援Webアプリ「ちょうむすび」を構築運びになったとのことです。

庄内地域には、山菜などの食物繊維を豊富に含む食材を日常的に摂取する食文化があり、こうした食事は腸内細菌の多様性やバランスを整えることに寄与するとされています。腸内環境が良好であることは、「良質な便」の提供につながる可能性があるため、腸内細菌ドナーにご協力いただく地域として有望と考えています。(メタジェンセラピューティクス様)

献血ならぬ献“便”という新たな社会貢献のかたちを庄内地域で広めていくには、ドナーが迷わず使えるアプリの存在が不可欠でした。さらに、献便ルームの開所式にあわせてリリースするというタイトなスケジュールも重なり、短期間での開発と運用体制の構築が大きな課題を抱えておりました。

「数社の見積もりを取った中で、Ragateさんは技術力に加えて、toCサービスの豊富な実績が非常に魅力的でした。RFP(提案依頼書)に対しても、『こうすればご要望を叶えられます』と、より発展する方向での実現方法を提示してくださり、スケジュールにも十分な余裕を持たせた計画を示してくれたのが、本当に心強かったです。」(黒澤様)

サービス全体を見据えたRagateの伴走型支援

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000075935.html

本プロジェクトは、2024年10月に開始され、2025年4月のリリースを目指すという非常にタイトなスケジュールで進行しました。これは、ドナーから便を収集・前処理するための施設「つるおか献便ルーム」の開所時期に「ちょうむすび」のサービス提供を間に合わせる必要があったためです。

しかしながら、開発が始動すると、UI/UXを高めるための検討事項が想定以上に増え、当初のワイヤーデザインに比べて画面数が約2倍に膨れ上がることになりました。また、医療機関と連携するために同時並行で内製していたシステムは、医療機関や検査会社のニーズを汲み取りながら進めていたため、仕様の変更が多くありました。その影響で、「ちょうむすび」とのシステム連携においても調整が必要となる場面が生じました。

しかし、このような課題に対して、Ragateは技術的な解決に留まらず、プロジェクトや、そもそものサービス全体を見据えた提案を継続的に行うことで、解決に大きく貢献しました。

「Ragateさんは『実現したいことは何か』という目的を丁寧にすり合わせながら、優先度の高い機能から着実に実装を進め、開所式という明確なゴールに向けて最適な判断を一緒に組み立ててくれました。私たちの構想中の要望に対しても、深い理解に基づいたユーザー視点の具体的な提案をしていただけたと感じています。」(黒澤様)

また、密なコミュニケーション体制にも、高い評価をいただきました。

「毎日30分〜1時間の夕会を通じて、Ragateさんと目線を合わせながらプロジェクトを進行したことが、期間内でのリリースを実現したことにつながりました。設計書をワークツールのNotionで一元管理できた点もよかったですね。記載の粒度や内容も高く、認識のズレを防いで効率的なレビューができました。」(黒澤様)

期待を上回る反響と、地域に根ざす未来への第一歩

約半年間の開発を経てローンチされた「ちょうむすび」は、予想を大きく上回る反響を呼び、庄内地域の多くの方から応募が殺到する状況となりました。これは、メタジェンセラピューティクス株式会社様が掲げていた「鶴岡からはじまる健康のお裾分け」というコンセプトの実現に向けて動き出したことを実感させる出来事でした。

「アプリのローンチからわずか1ヶ月で、300名を超えるドナー応募がありました。現在も、基準を満たして次のステップに進んでいる方が約70名いらっしゃいます。これは、従来のサービスと比べても非常に速いペースです。あえて対象地域を庄内地域に限定したことで、情報の伝わりやすさや応募者の動機づけにつながったのではないかと考えています。社内でも、この反響の大きさに手応えを感じています。」(黒澤様)

完成したアプリは、ドナーの応募から適格性検査、献便実績の確認に至るまで、複雑なドナー認定・献便プロセスをユーザーが迷わず進められるよう設計されています。また、抽選にはなりますが、腸内細菌叢検査を無料で受けられる機能も備えており、アプリを通じて健康への関心を高めるきっかけにもなっています。

メタジェンセラピューティクス様はこうした機能を備えたアプリを、つるおか献便ルームの開所式にあわせてリリースできたことは、本プロジェクトにとって非常に意義深い成果だったと考えていただいております。

「実際のユーザーからは、『庄内地域からこうした新しい取り組みが始まるのは嬉しい』『ドナー登録を通じて、健康への関心がより高まった』といった声が多く寄せられています。こうした反響が得られたのも、アプリの完成度があってこそだと感じており、社内の『ちょうむすび』に対する信頼感や今後の展開への期待も、ますます高まっています。」(黒澤様)

「ちょうむすび」が描く未来とRagateへの期待

メタジェンセラピューティクス様は、「ちょうむすび」を通じて持続的な献便文化を醸成し、社会貢献へとつなげていくことを目指しています。今後はユーザーの声に基づき、UI/UXを継続的に改善し、PMF(プロダクトマーケットフィット)の確立を目指す考えです。

将来的には、「地域の活性化や住民の健康意識向上につながる、社会的にも意義のあるサービス」へと成長させていくことを目指しています。

たとえば、アプリにアップロードされた食事写真から、食物繊維の「種類」を解析できる機能が実装されれば、ドナー自身の健康の維持・改善のきっかけにもつながると考えています。さらに、こうした取り組みを地域の住民同士で共有できる仕組みが備われば、情報や行動が自己組織的に広がっていくことも期待されます――と黒澤様は語ります。

「Ragateさんの提案力とスピード感には大変感謝しており、引き続きご支援いただきたいと強く思っています。特に、『それって本当にアプリ上に必要ありますか?』といったサービスの本質を追求する姿勢には、Ragateさんの気概やエネルギーのようなものを感じますね。長期的な視点での改善提案や、新たな技術的チャレンジに、これからも伴走してくださることを期待しています。」(黒澤様)

Ragateはメタジェンセラピューティクス株式会社様の期待に応え、「マイクロバイオームサイエンスで患者さんの願いを叶え続ける」という壮大なパーパスの実現に向けて、最適なソリューションを提案・提供し続けます。

Ragateメンバーの紹介

AWS SAP 認定 プロジェクトマネージャー 久保翔太

AWSソリューションアーキテクト Pro 認定プロジェクトマネージャー。 AWSサーバーレス開発のプロジェクトマネージャーとして、数多くの大規模プロジェクトへAWSサーバーレス導入を手掛ける。得意領域は、大規模開発の中長期を見据えたAWS全体の設計。

好きなAWSサービス

CloudFormation/Lambda/DynamoDB/OpenSearch/AppSync/CloudFront/StepFunctions

アカウントマネージャー 柳澤大志

過去、エンジニア人材を扱う企業に従事し、デジタルマーケティングを活用した顧客獲得を経験。AWS活かした高度なエンゲージメント向上やマーケティング戦略、BPR支援でお客様のビジネスを加速させる。

好きなAWSサービス

Lambda/DynamoDB/StepFunctions/Cognito/CloudTrail