ECSへの移行で運用コスト削減!EC2との比較とメリット・デメリットを徹底解説

ECSへの移行で運用コスト削減!EC2との比較とメリット・デメリットを徹底解説

今回は、AWSのコンテナオーケストレーションサービスであるAmazon Elastic Container Service(ECS)について、従来のAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)と比較しながら、メリットとデメリットを徹底的に解説していきます。

ECSは、Docker等のコンテナ技術を活用したアプリケーションの運用を簡素化し、運用コストの削減やスケーラビリティの向上に寄与するサービスです。一方、EC2は仮想マシンを提供するサービスであり、柔軟性が高い反面、運用の手間やコストが増大する傾向にあります。

本記事では、これらのサービスの特徴を比較し、どのようなシナリオでECSへの移行が有効か、また移行する際の注意点等について詳しく解説します。

なお、本記事を理解するにあたって、以下の知識があると理解がスムーズになります。

  • AWSの基本的な概念(リージョン、VPC、IAM等)
  • Dockerの基本的な概念(イメージ、コンテナ、Dockerfile等)
  • インフラ運用の基礎知識(ロードバランサ、オートスケーリング等)

また、ECSおよびEC2の詳細については、以下の公式ドキュメントが参考になります。

それでは、早速本題に入っていきましょう!

ECSとEC2の基本的な違い

まず、ECSとEC2の基本的な違いについて整理しておきましょう。

比較項目ECSEC2
提供形態コンテナオーケストレーションサービス仮想マシン
管理対象コンテナ(タスク)インスタンス
スケーラビリティ高い(コンテナ単位で柔軟にスケール)中程度(インスタンス単位でスケール)
運用の手間少ない(コンテナの管理はECSが担当)多い(OSやミドルウェアの管理が必要)
柔軟性中程度(コンテナの設定が主体)高い(OS・ミドルウェアを自由に設定可能)
運用コスト比較的安価(コンテナの稼働分のみ課金)比較的高価(インスタンスの稼働分を課金)

ECSはコンテナ技術を活用したサービスであり、Docker等で構築したコンテナイメージを元に、コンテナ(タスク)を起動・管理します。コンテナオーケストレーションの機能により、複数のコンテナを連携させたアプリケーションの運用が容易になります。

一方、EC2は仮

想マシンを提供するサービスであり、利用者は OS やミドルウェアを自由に設定できる代わりに、それらの管理負担も発生します。

ECS ではコンテナ単位で柔軟にスケールできるため、アクセス増加時の対応が容易です。また、コンテナの管理は ECS 側で行われるため、運用の手間を大幅に削減できます。ただし、コンテナの設定が主体となるため、EC2 ほどの柔軟性はありません。

コスト面では、ECS はコンテナの稼働分のみが課金されるのに対し、EC2 はインスタンスの稼働分が課金されるため、ECS の方が運用コストを抑えられる傾向にあります。

以上のように、ECS と EC2 にはそれぞれ特徴があります。次のセクションでは、ECS への移行が効果的なシナリオについて見ていきましょう。

ECSへの移行が効果的なシナリオ

ECS への移行は、以下のようなシナリオで特に効果を発揮します。

1. アクセス量が変動するWebアプリケーション

Webアプリケーションでは、アクセス量が時間帯や曜日によって大きく変動することがあります。ECS では、コンテナ数を柔軟に増減できるため、アクセス量に応じたスケーリングが容易です。これにより、過剰なリソースを確保せずに済み、コスト最適化が可能になります。

2. マイクロサービスアーキテクチャを採用している

マイクロサービスアーキテクチャでは、アプリケーションを小さな独立したサービスに分割します。ECS を使えば、これらのサービスをコンテナとして管理でき、サービス間の連携もスムーズに行えます。また、サービスごとに必要なリソースを割り当てられるため、効率的な運用が可能です。

3. 開発と運用の一貫性を重視する

コンテナ技術を活用することで、開発環境と本番環境の差異を最小限に抑えられます。ECS では、開発段階で作成したコンテナイメージをそのまま本番環境で利用できるため、デプロイの手間やトラブルを大幅に削減できます。これにより、開発と運用の一貫性が向上し、リリースサイクルの短縮化が期待できます。

4. サーバーの管理負担を減らしたい

EC2 では、OS やミドルウェアのパッチ適用、バージョンアップ等の管理作業が必要ですが、ECS ではこれらの作業負担を大幅に軽減できます。コンテナの管理は ECS 側で行われるため、利用者はアプリケーションの実装に集中できます。また、コンテナ化されたアプリケーションは、OS やミドルウェアとの依存関係が少ないため、長期運用でも安定性が高いというメリットがあります。

以上のように、ECS への移行は、スケーラビリティ、コスト最適化、開発・運用の効率化等、様々な点でメリットがあります。特に、アクセス変動の大きいWebアプリケーションやマイクロサービスアーキテクチャを採用している場合は、ECS の導入を積極的に検討すべきでしょう。

ECSへの移行における注意点

ECS への移行は多くのメリットがある一方、以下のような点に注意が必要です。

1. Dockerの学習コストが発生する

ECS を利用するには、Docker 等のコンテナ技術の知識が必要不可欠です。既存のアプリケーションをコンテナ化するには、Dockerfile の作成やコンテナイメージの最適化等、一定の学習コストが発生します。チーム内でコンテナ技術の知見が不足している場合は、事前の学習や教育が必要になるでしょう。

2. 移行作業に一定の工数が必要

EC2 で運用しているアプリケーションを ECS に移行するには、一定の工数が必要です。単にアプリケーションをコンテナ化するだけでなく、ロードバランサやオートスケーリングの設定、ログ管理、監視の仕組み作り等、周辺の環境整備も必要になります。移行作業は段階的に進め、十分なテストを行いながら進めることが重要です。

3. 一部のシステムはコンテナ化に向かない

全てのアプリケーションがコンテナ化に適しているわけではありません。例えば、ステートフルなアプリケーションや、OS・ミドルウェアと密結合したレガシーシステム等は、コンテナ化が難しいケースがあります。無理にコンテナ化を進めるのではなく、アプリケーションの特性を見極めた上で、適切な移行計画を立てる必要があります。

4. ベンダーロックインへの懸念

ECS を利用することで、AWS へのベンダーロックインが強まる可能性があります。他のクラウドベンダーへの移行や、オンプレミス環境への移行が難しくなるリスクがあるため、事前に十分な検討が必要です。ただし、ECS はオープンソースのコンテナオーケストレーションツール(Kubernetes等)との互換性も高いため、一定の可搬性は確保されています。

以上のような注意点はありますが、十分な準備と計画を行うことで、ECS への移行によるメリットを最大限に活かすことができるでしょう。

まとめ

本記事では、ECS と EC2 の比較を通じて、ECS への移行のメリットとデメリットを詳しく解説しました。

ECS は、コンテナ技術を活用したアプリケーションの運用に特化したサービスであり、スケーラビリティ、運用コスト、開発・運用の効率等の点で大きなメリットがあります。特に、アクセス変動の大きいWebアプリケーションやマイクロサービスアーキテクチャを採用している場合は、ECS への移行を積極的に検討すべきでしょう。

一方で、ECS への移行にはコンテナ技術の学習コストや移行作業の工数等、一定の注意点もあります。アプリケーションの特性を見極め、十分な準備と計画を行うことが重要です。

ECS は、アプリケーションの運用を効率化し、ビジネスの成長を加速させるための強力なツールです。本記事が、ECS への移行を検討する際の一助となれば幸いです。