最近は、顧客のビジネス課題を解決するため、AWSなどのクラウドサービスを活用したモダナイズ開発や、マイクロサービス化、サーバーレスアーキテクチャの導入提案に力を入れています。
今回は、多くの企業が関心を寄せているSIer業界をテーマに、市場機会の分析事例を紹介します。
皆さんの戦略策定のヒントになるような情報を、現場目線で分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
まずは、SIer業界の市場概況と最新トレンドを把握していきましょう。
国内SIer業界は、企業のIT投資の増加や、クラウドコンピューティング、AI、IoTなどの最新技術の普及を背景に、堅調に成長を続けています。
特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが本格化する中、企業は既存システムの刷新や新規システムの構築に積極的に投資を行っており、SIerへの需要はますます高まっています。
それでは、実際に私がコンサルティングを行う場合を想定して、外部環境分析から市場機会を抽出するプロセスを解説していきます。
今回は、情報サービス業の中でも、特に競争が激化しているSIer業界を例に分析を進めていきましょう。
まずは、業界構造を把握するために、5F分析を実施します。
競争要因 | 分析結果 |
---|---|
新規参入業者の脅威 | – 新規参入障壁は比較的高く、大手企業が市場を寡占しているため、新規参入は容易ではない。 – 一方で、クラウドサービスの普及やオープンソースソフトウェアの活用により、中小企業やスタートアップ企業の参入障壁は低下しつつある。 |
買い手の交渉力 | – 買い手は大企業や官公庁が多いため、交渉力は比較的高く、価格交渉や納期短縮などを要求してくるケースが多い。 – 特に、近年はIT投資のROIに対する意識が高まっており、SIerは価格競争に巻き込まれやすい状況にある。 |
代替品の脅威 | – クラウドサービスやパッケージソフトウェアなど、SIerが提供するシステム開発サービスの代替となるサービスが増加している。 – 顧客は、コスト削減やスピードを求めて、代替サービスの導入を検討するケースが増えている。 |
供給業者の交渉力 | – システム開発に必要なハードウェア、ソフトウェア、人材などの供給業者は多数存在する。 – 一方で、特定の技術や製品に特化した専門性の高い供給業者は、交渉力を有している場合もある。 |
競争業者間の敵対関係の強さ | – 大手SIerを中心に、多くの企業が顧客獲得のために激しい競争を繰り広げている。 – 価格競争だけでなく、技術力や提案力、品質、納期対応力など、多岐にわたる要素で競争が行われている。 |
次に、マクロ環境要因を分析するために、PEST分析を実施します。
環境要因 | 分析結果 |
---|---|
Politics(政治) | – 政府は、「デジタル・ニッポン」を掲げ、IT投資を促進する政策を推進しており、SIer業界にとって追い風となっている。 – また、マイナンバー制度や電子政府などの取り組みも、SIerのビジネスチャンスを拡大させている。 |
Economy(経済) | – 国内経済の緩やかな回復基調や、企業業績の改善に伴い、IT投資は増加傾向にある。 – 一方で、世界経済の不確実性や、円高・円安などの為替変動は、SIer業界に影響を与える可能性がある。 |
Society(社会) | – 少子高齢化による労働人口の減少は、SIer業界にとっても深刻な課題となっており、人材不足が深刻化している。 – また、働き方改革やワークライフバランスへの関心の高まりは、SIerの労働環境改善を迫っている。 |
Technology(技術) | – クラウドコンピューティング、AI、IoT、ビッグデータなどの最新技術の進化は、SIer業界に大きな変化をもたらしている。 – SIerは、これらの最新技術を活用した新しいサービスを開発し、顧客に提供することで、競争優位性を確立していく必要がある。 |
ここでは、競合分析とコスト構造分析を組み合わせることで、競合企業の戦略をより深く理解し、自社の戦略立案に活用していきます。
競合企業 | コスト構造 | 強み | 弱み |
---|---|---|---|
A社 | – 人件費:高 – 開発費:高 – 販売管理費:低 | – 大規模プロジェクトの遂行能力 – 最新技術への対応力 | – 価格競争力 – ニッチ市場への対応力 |
B社 | – 人件費:低 – 開発費:低 – 販売管理費:高 | – 低価格 – ニッチ市場への特化 | – 大規模プロジェクトの遂行能力 – 最新技術への対応力 |
A社は、業界最大手のSIer企業であり、大規模プロジェクトの遂行能力や最新技術への対応力を強みとしています。しかし、人件費や開発費などのコストが高いため、価格競争力は低い傾向にあります。
B社は、ニッチ市場に特化したSIer企業であり、低価格を武器に顧客を獲得しています。しかし、人材や技術力などのリソースが限られているため、大規模プロジェクトへの対応や最新技術への追従は難しい状況です。
上記のような外部環境分析の結果を踏まえ、市場機会を抽出していきます。
PEST分析の結果から、クラウドコンピューティングはSIer業界に大きな変化をもたらす技術トレンドの一つとして挙げられます。
多くの企業がクラウドサービスの導入を検討している一方で、セキュリティや既存システムとの連携などの課題を抱えているケースも少なくありません。
そのため、SIerにはクラウドサービスの導入を支援するサービスに対する需要が高まっています。
5F分析の結果から、SIer業界は競争が激化しており、大手企業との価格競争に巻き込まれるリスクがあります。
そこで、特定の業界や業務に特化したサービスを提供することで、大手企業との差別化を図り、競争優位性を築く戦略が考えられます。
例えば、医療機関向け、金融機関向け、製造業向けなど、特定の業界に特化したシステム開発やITコンサルティングサービスを提供することで、専門性を高め、顧客からの信頼を獲得することができます。
PEST分析の結果から、AIやIoTなどの最新技術は、SIer業界のビジネスチャンスを拡大させる可能性を秘めていることが分かります。
これらの最新技術を活用した新しいサービスを開発し、顧客に提供することで、新たな収益源を獲得することができます。
例えば、AIを活用したデータ分析サービスや、IoTを活用した設備監視システムなど、顧客のニーズに合わせたサービスを開発することで、市場での競争力を高めることができます。
SIer業界で成功するためには、以下のKSFが重要となります。
SIer業界の顧客は、業種、規模、システム導入の目的などによって、多岐にわたります。
効果的なマーケティング戦略を策定するためには、顧客をいくつかのセグメントに分類し、それぞれのニーズに合わせたサービスやプロモーションを展開していく必要があります。
例えば、顧客を以下のようなセグメントに分類することができます。
セグメント | 特徴 | ニーズ |
---|---|---|
大企業 | – システム投資額が大きい – 最新技術への関心が高い – 長期的な視点でシステム導入を検討 | – 最新技術を活用したシステム – 大規模プロジェクトの遂行能力 – 長期的なサポート体制 |
中小企業 | – システム投資額は比較的小さい – コストパフォーマンスを重視 – 短期導入を希望 | – 低価格なシステム – 短納期での開発 – 運用サポートのアウトソーシング |
官公庁 | – 大規模システムの導入が多い – セキュリティ対策が重要 – 長期運用を前提 | – 高い信頼性とセキュリティ – 長期的な保守体制 – 法規制への対応 |
顧客セグメンテーションの結果を踏まえ、自社の強みを活かせるターゲットセグメントを選定します。
例えば、最新技術への対応力や大規模プロジェクトの遂行能力を強みとするSIer企業であれば、大企業セグメントをターゲットにすることが有効です。
一方、低価格や短納期での開発を強みとするSIer企業であれば、中小企業セグメントをターゲットにすることが有効です。
ターゲットセグメントに効果的にアプローチするために、4P(Product, Price, Place, Promotion)を組み合わせたマーケティングミックス戦略を策定します。
ターゲットセグメントのニーズに合わせたシステム開発サービスやITコンサルティングサービスを開発します。
例えば、大企業セグメント向けには、最新技術を活用したシステム開発サービスや、大規模プロジェクトのマネジメントサービスなどを提供します。
中小企業セグメント向けには、低価格なパッケージシステムや、クラウドサービスの導入支援サービスなどを提供します。
ターゲットセグメントに効果的にアプローチできる流通チャネルを選定します。
例えば、大企業セグメント向けには、営業担当者による直販や、パートナー企業との協業による販売などが考えられます。
中小企業セグメント向けには、Webサイトやセミナーによる集客、販売代理店との提携などが考えられます。
ターゲットセグメントに合わせた価格設定を行います。
例えば、大企業セグメント向けには、高価格帯で高品質なサービスを提供します。
中小企業セグメント向けには、低価格帯でコストパフォーマンスの高いサービスを提供します。
ターゲットセグメントへの認知度向上と顧客獲得を目的としたプロモーション活動を行います。
例えば、Webサイトやブログでの情報発信、セミナーや展示会への出展、ホワイトペーパーや事例集の配布などが考えられます。
今回は、SIer業界を例に、市場機会の分析事例を紹介しました。
市場機会を効果的に捉えるためには、外部環境分析や顧客セグメンテーションなどを通じて、市場の状況や顧客ニーズを深く理解することが重要です。
そして、自社の強みと弱みを客観的に分析し、競争優位性を築ける戦略を策定していくことが重要です。
AWSモダナイズ開発、基幹業務システムのUI.UX刷新はお気軽にお問い合わせください。
スモールスタート開発支援、サーバーレス・NoSQLのことなら
ラーゲイトまでご相談ください
低コスト、サーバーレスの
モダナイズ開発をご検討なら
下請け対応可能
Sler企業様からの依頼も歓迎