【勘違い?】モダナイズはただ最新技術に変えるだけじゃない!

【勘違い?】モダナイズはただ最新技術に変えるだけじゃない!

この記事では、システムのモダナイゼーションについて、その本質的な意味、必要性、メリット・デメリット、進め方など、包括的に解説していきます。

「モダナイズ」や「DX」といった言葉がバズワード的に使われるようになり、何となく「最新の技術やアーキテクチャに刷新すること」という認識を持っている方もいるかもしれません。しかし、モダナイゼーションは、単に技術的な側面だけを捉えれば良いわけではなく、ビジネス戦略、組織文化、人材育成といった多角的な視点からの取り組みが不可欠です。

この記事を読み終える頃には、モダナイゼーションに対する理解が深まり、具体的なプロジェクト推進のイメージが掴めるようになるでしょう。

1. モダナイゼーションとは何か?

システムのモダナイゼーションとは、既存のレガシーシステムを、最新の技術やアーキテクチャを用いて刷新し、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる状態にすることを指します。

従来のウォーターフォール型の開発手法や、オンプレミス環境に依存したシステムでは、変化の激しい現代のビジネスニーズに迅速に対応することが困難になりつつあります。市場のグローバル化、顧客ニーズの多様化、デジタル技術の急速な進化といった流れの中で、企業は常に競争力を維持し、新たなビジネスチャンスを創出していく必要があります。

このような背景から、既存システムのモダナイゼーションは、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。

2. モダナイゼーションが必要な理由

では、なぜ今、モダナイゼーションがこれほど重要視されているのでしょうか?主な理由としては、以下のような点が挙げられます。

2.1. ビジネスの俊敏性向上

市場の変化に迅速に対応するためには、システムも柔軟かつ迅速に変更できる必要があります。しかし、レガシーシステムは、複雑な構造や技術的な制約から、改修に時間とコストがかかりがちです。モダナイゼーションによって、システムの柔軟性と拡張性を高めることで、ビジネスの俊敏性を向上させることができます。

2.2. コスト削減

レガシーシステムの運用・保守には、多大なコストがかかります。老朽化したハードウェアの維持、専門性の高い技術者の確保、セキュリティ対策の強化など、コスト増の要因は多岐に渡ります。クラウドサービスやサーバーレス技術を活用したモダナイゼーションは、インフラコストの削減、運用・保守の効率化に大きく貢献します。

2.3. セキュリティ強化

サイバー攻撃の手法は日々巧妙化しており、レガシーシステムはセキュリティリスクに晒されやすくなっています。最新のセキュリティ技術を導入し、セキュリティ体制を強化することで、システムの安全性を確保し、企業の信頼を守ることが重要です。

2.4. 顧客体験の向上

顧客の購買行動は、デジタル化によって大きく変化しました。Webサイトやモバイルアプリなど、様々なチャネルを通じて、いつでもどこでも情報にアクセスし、商品やサービスを購入することが当たり前になっています。顧客体験を向上させるためには、システムもマルチデバイス対応、パーソナライズ化など、最新のデジタル技術に対応していく必要があります。

3. モダナイゼーションのメリット・デメリット

モダナイゼーションには、多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットも存在します。プロジェクトを成功させるためには、メリットとデメリットを理解し、適切な計画と対策を立てることが重要です。

3.1. メリット

  • ビジネスの俊敏性向上: 市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応可能
  • コスト削減: インフラコストや運用・保守コストの削減
  • セキュリティ強化: 最新のセキュリティ技術によるシステムの安全性向上
  • 顧客体験の向上: デジタル技術を活用した顧客満足度の向上
  • 開発効率の向上: 最新の開発環境やツールによる開発スピードアップ
  • 人材の魅力向上: 最新技術を活用できる環境による優秀な人材の確保

3.2. デメリット

  • 初期コストの発生: システム刷新に伴うコスト発生
  • プロジェクトのリスク: 大規模なシステム変更に伴うリスク発生
  • 既存システムとの互換性: 新システムと既存システムとの連携
  • 運用体制の変更: 新システムに対応した運用体制の構築
  • 人材育成の必要性: 最新技術に対応できる人材の育成

4. モダナイゼーションの進め方

モダナイゼーションは、一足飛びに実現できるものではありません。段階的に進めることで、リスクを抑制し、着実に成果を上げていくことが重要です。

4.1. アセスメント

まずは、現状のシステムを分析し、課題や改善点を明確にするアセスメントを実施します。ビジネス要件、技術的要件、セキュリティ要件などを洗い出し、モダナイゼーションの目標設定を行います。

項目内容
ビジネス要件モダナイゼーションによって、どのようなビジネス上の成果を期待するか
技術的要件現状のシステムアーキテクチャ、使用している技術、パフォーマンス、セキュリティレベルなどを分析
セキュリティ要件セキュリティポリシー、コンプライアンス要件、セキュリティ対策の現状などを確認
組織・体制モダナイゼーションを推進するための組織体制、人材のスキルレベル、プロジェクトマネジメント体制などを評価
コストモダナイゼーションに必要なコスト(初期費用、運用費用、人件費など)を試算

4.2. 計画策定

アセスメント結果を基に、具体的なモダナイゼーション計画を策定します。どのシステムをどのようにモダナイズするか、スケジュール、必要なリソース、予算などを明確にします。

  • 対象範囲の決定: 全システムを刷新するのか、一部システムから着手するのか
  • モダナイゼーション手法の選定: リフト&シフト、リプラットフォーム、リファクタリングなど
  • クラウドサービスの選定: AWS、Azure、GCPなど
  • スケジュール策定: 各工程の開始・終了時期、マイルストーン設定
  • 体制構築: プロジェクトチームの編成、役割分担、責任範囲
  • 予算策定: 各工程にかかる費用を試算、予算配分
  • リスク管理計画: 潜在的なリスクを洗い出し、対応策を検討

4.3. 実施

計画に基づき、実際のモダナイゼーション作業を進めます。開発、テスト、デプロイといった工程を、アジャイル開発手法などを導入しながら、効率的に進めていくことが重要です。

  • 開発環境構築: 最新の開発ツールを導入し、効率的な開発環境を構築
  • コードのモダナイゼーション: 既存コードを最新技術に対応させる、新規開発
  • テスト自動化: テスト工程を自動化し、品質向上と効率化
  • CI/CD 導入: 継続的インテグレーション/継続的デリバリーを導入し、開発スピード向上
  • 監視体制構築: システムの稼働状況を監視する体制

4.4. 運用・評価

モダナイズされたシステムの運用を開始し、定期的に評価を行います。システムのパフォーマンス、セキュリティ、運用コストなどを監視し、必要に応じて改善策を検討します。

  • パフォーマンス監視: システムの応答速度、処理能力などを監視
  • セキュリティ監視: セキュリティイベントの検知、脆弱性診断
  • 運用コスト監視: クラウドサービスの利用状況、コスト分析
  • ユーザーフィードバック収集: ユーザーからの意見や要望を収集
  • 改善策の実施: 監視結果やフィードバックを基に、システムを継続的に改善

5. モダナイゼーション・パスウェイ

AWS では、モダナイゼーションの進め方として、**「モダナイゼーション・パスウェイ」**という6つの代表的なパターンを提唱しています。これらのパターンは、AWS がこれまで多くの顧客のモダナイゼーションを支援してきた経験に基づいて体系化されたものです。

5.1. Move to Cloud Native

モノリシックなアプリケーションをマイクロサービスアーキテクチャに分解し、クラウドネイティブなサービスを活用することで、システムの柔軟性・拡張性を高め、開発スピードを向上させます。

項目内容
キーワードドメイン駆動開発、マイクロサービス、イベント駆動アーキテクチャ、サーバーレス、コンテナ化、ストラングラーフィグパターン
関連サービス例AWS Lambda, AWS API Gateway, Amazon ECS, Amazon EKS, Amazon EventBridge, Amazon SQS, Amazon SNS, AWS Migration Hub Refactor Spaces

5.2. Move to Containers

既存アプリケーションをコンテナ化することで、環境間の移植性を高め、運用管理の効率化を実現します。

項目内容
キーワードコンテナ化、運用効率、複数環境間の一貫性
関連サービス例Amazon ECS, Amazon EKS, AWS Fargate, Amazon ECR, AWS App Runner

5.3. Move to Managed Databases

商用データベースから、AWS のフルマネージドデータベースサービスに移行することで、運用管理の負荷を軽減し、可用性・拡張性を向上させます。

項目内容
キーワードRDB 以外の選択肢、耐障害性と拡張性の向上、業務効率化
関連サービス例Amazon Aurora, Amazon RDS, Amazon Redshift, Amazon DynamoDB, Amazon ElastiCache, Amazon MemoryDB for Redis, Amazon DocumentDB

5.4. Move to Open Source

商用ソフトウェアからオープンソースソフトウェアに移行することで、ライセンスコストを削減し、柔軟なシステム構築を実現します。

項目内容
キーワードTCO 削減
関連サービス例Amazon RDS, Amazon Aurora, Amazon MQ, .NET Core on Linux

5.5. Move to Modern Analytics

データ分析基盤をクラウドに移行し、最新の分析ツールを活用することで、データドリブンな意思決定を促進します。

項目内容
キーワードデータレイク、データカタログ、データ共有、きめ細かいアクセス制御
関連サービス例Amazon Athena, Amazon EMR, Amazon Redshift, Amazon Kinesis, Amazon OpenSearch Service, Amazon QuickSight, AWS Glue, AWS Lake Formation

5.6. Move to Modern DevOps

CI/CD パイプラインの構築、自動化ツール導入など、DevOps のプラクティスを取り入れることで、開発・運用プロセスを効率化し、リリースサイクルを短縮します。

項目内容
キーワードCI/CD、テスト自動化、テスト駆動開発、IaC (Infrastructure as Code)
関連サービス例AWS CodeCommit, AWS CodeBuild, AWS CodeDeploy, AWS CodePipeline, AWS CDK, AWS CloudFormation, AWS Proton, AWS CloudWatch, AWS X-Ray

まとめ

この記事では、モダナイゼーションとは何か、なぜ必要なのか、そのメリット・デメリット、具体的な進め方などについて解説しました。モダナイゼーションは、単にシステムを最新化するだけではなく、ビジネスの成長を支えるための重要な戦略です。

AWS のモダナイゼーション・パスウェイや、豊富なクラウドサービスを活用することで、モダナイゼーションを成功させるための道筋が見えてくるはずです。

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