レガシーシステムのモダナイズ、どこまでやるべき?範囲の定義

レガシーシステムのモダナイズ、どこまでやるべき?範囲の定義

「モダナイゼーション」って言葉、最近よく耳にするけど、実際何をどこまでやればいいのか、
迷ってしまうことってありませんか? 特に、長年運用してきた基幹システムともなると、
その規模の大きさと複雑さから、どこから手をつければいいのか途方に暮れてしまうこともあるかもしれません。

私もこれまで、数多くのモダナイゼーション案件に携わってきました。
その経験から言えるのは、「モダナイゼーションに万能な正解はない」ということです。
企業のビジネスゴールやシステムの現状、そして開発チームのスキルセットによって、最適なモダナイゼーションの範囲は変化します。

そこで今回は、レガシーシステムのモダナイゼーションに取り組む際に重要となる「範囲の定義」に焦点を当てて解説していきたいと思います。
モダナイゼーションの目的を明確化し、適切な範囲を設定することで、プロジェクトを成功に導くための道筋が見えてきます。

1. なぜモダナイゼーションが必要なのか?

まず、なぜモダナイゼーションが必要なのか?改めて考えてみましょう。
長年稼働しているレガシーシステムは、ビジネスの成長を支えてきた一方で、時代の変化とともに、以下のような課題を抱えるケースが増えています。

  • 保守運用コストの増大: ハードウェアの老朽化や、サポート切れによるソフトウェアのアップデート費用など、維持費が増加傾向にある。
  • セキュリティリスクの増加: 最新のセキュリティ脅威に対応できない、脆弱性が放置された状態になりやすい。
  • ブラックボックス化: 開発当時の担当者が退職し、システムの全体像を把握している人がいない、ドキュメントが整備されていないため改修が困難。
  • ビジネスアジリティ の低下: 新しいビジネス要件への対応が遅れ、市場競争力を失う可能性がある。

これらの課題を解決し、企業が持続的な成長を遂げるために、モダナイゼーションは不可欠な取り組みと言えるでしょう。

2. モダナイゼーションの範囲

では、実際にモダナイゼーションを行う場合、どこまでの範囲を対象とすれば良いのでしょうか?
モダナイゼーションの範囲は、大きく以下の3つのレイヤーに分類できます。

  • インフラストラクチャ: ハードウェア、OS、ミドルウェアなどを最新化する。
  • アプリケーション: アプリケーションのアーキテクチャやコードを最新化する。
  • データ: データベースの構造やデータ形式を最新化する。

これらのレイヤーをすべて対象とする「フルモダナイゼーション」を行うケースもありますが、必ずしもすべてを刷新する必要はありません。
モダナイゼーションの目的と、現状の課題を分析し、適切な範囲を定めることが重要です。

3. モダナイゼーションの範囲を定義する4つのステップ

モダナイゼーションの範囲を具体的にどのように定義すれば良いのか、4つのステップで解説していきます。

ステップ1. ビジネス目標の明確化

モダナイゼーションは、あくまでビジネス目標を達成するための手段です。
まずは、モダナイゼーションを通じて、どのようなビジネス成果を実現したいのかを明確に定義する必要があります。

  • コスト削減?
  • 開発スピード向上?
  • セキュリティ強化?
  • 新規ビジネス展開?

ビジネス目標を定量的な指標で設定することで、モダナイゼーションの成功を評価する基準を明確化できます。

ステップ2. 現状分析

次に、現状のシステムにおける課題を分析します。
現状分析を行うことで、どのレイヤーに課題が集中しているのかモダナイゼーションの必要性が高いのはどの部分なのかを把握することができます。

  • アプリケーション: アーキテクチャ、プログラミング言語、フレームワーク、コード品質、技術的負債などを評価します。
  • インフラストラクチャ: ハードウェアの老朽化、OS やミドルウェアのバージョン、可用性、拡張性などを評価します。
  • データ: データベースの種類、データ構造、データ品質、データ量などを評価します。
  • 運用プロセス: 現在の開発プロセス、デプロイプロセス、運用監視体制などを評価し、自動化や効率化の余地を検討します。

これらの分析結果を踏まえ、ビジネス目標達成のために、どのレイヤーをどの程度モダナイズする必要があるかを検討します。

ステップ3. モダナイゼーションのアプローチ

ステップ1、2で得られた情報をもとに、具体的なモダナイゼーションのアプローチを決定します。
代表的なアプローチとして、以下の7つの方法(7Rs)があります。

アプローチ説明
リプレイス既存システムを廃止し、全く新しいシステムを導入する。パッケージソフトウェア導入や SaaS への移行などが該当する。
リタイア既存システムを廃止し、機能を停止する。ビジネス要件の変化により、不要になったシステムに適用される。
リテイン現状のまま維持する。ビジネス上重要度が低く、モダナイゼーションによるメリットが少ないシステムに適用される。
リホストアプリケーションに変更を加えず、インフラストラクチャのみをクラウドへ移行する。「リフト&シフト」とも呼ばれる。
リプラットフォームアプリケーションに変更を加えず、OS やミドルウェアを最新化してクラウドへ移行する。
リファクタリングアプリケーションのアーキテクチャやコードを最新化する。クラウドネイティブな技術を活用し、マイクロサービス化やサーバーレス化などを行う。
リイマジンビジネス要件を再定義し、最新の技術を活用してシステムを再構築する。最も大規模なモダナイゼーション。

各アプローチのメリット・デメリットを考慮し、ビジネス目標、現状の課題、開発チームのスキルセットなどを総合的に判断して、最適なアプローチを選択しましょう。

ステップ4. 優先順位とロードマップ

最後に、モダナイゼーションの範囲を、機能単位やアプリケーション単位に分割し、優先順位を付けます。
すべての機能を一度にモダナイズするのは現実的ではないため、ビジネス上の重要度 が大きく、実現可能性の高いものから段階的に取り組むロードマップを作成します。

ロードマップ策定には、以下のような観点を考慮します。

  • ビジネスへの影響度: どの機能がビジネスに最も貢献しているか?
  • 技術的な複雑さ: モダナイズにかかる工数、難易度、リスクはどの程度か?
  • 依存関係: 他のシステムとの連携、影響範囲はどの程度か?
  • 開発チームのスキルセット: 現状のスキルで対応可能か?外部リソースが必要か?

優先順位の高い機能から段階的にモダナイズを進めることで、早期にビジネス価値を実現し、プロジェクト全体の成功確率を高めることができます。

まとめ

今回は、レガシーシステムのモダナイゼーションにおける範囲の定義について、4つのステップで解説しました。
モダナイゼーションは、適切な範囲を定義し、段階的に進めることが成功の鍵です。

  • ビジネス目標を明確にする
  • 現状の課題を分析する
  • 最適なアプローチを選択する
  • 優先順位とロードマップを作成する

これらのステップを丁寧に踏むことで、モダナイゼーションを成功に導くことができるでしょう。

AWSモダナイズ開発基幹業務システムのUI.UX刷新はお気軽にお問い合わせください。