最新技術を活用したGenerative AIアプリケーションのセキュリティ対策:スコープ別に考える

最新技術を活用したGenerative AIアプリケーションのセキュリティ対策:スコープ別に考える

本記事では、Generative AI(生成AI)アプリケーションのセキュリティ対策について解説します。生成AIは、テキスト、音声、画像、コードなど、さまざまな種類の新しいコンテンツを生成するAI技術であり、多くの企業がその可能性に注目し、ビジネスへの活用を検討しています。しかし、生成AIアプリケーションのセキュリティ対策については、まだ十分に理解されていない部分も多く、企業は適切な対策を講じる必要があります。

生成AIとは

まず、生成AIの特徴について簡単に説明します。生成AIは、従来の予測型AIとは異なり、新しいデータを作成することに重点が置かれています。例えば、大量のテキストデータを学習した生成AIは、自然な文章を作成したり、要約したり、翻訳したりすることができます。

生成AIは、多くの分野で革新的なアプリケーションを生み出す可能性を秘めていますが、セキュリティ面では新たな課題も抱えています。生成AIアプリケーションのセキュリティ対策は、従来のアプリケーションとは異なるアプローチが必要となる場合があるため、適切な対策を理解し、実装することが重要です。

生成AIのセキュリティ対策:3つの柱

生成AIのセキュリティ対策には、大きく分けて以下の3つの柱があります。

  • 生成AIアプリケーション自体のセキュリティ対策
  • 生成AIを活用したセキュリティ対策
  • 生成AIによる新たな脅威への対策

本記事では、特に「生成AIアプリケーション自体のセキュリティ対策」に焦点を当て、AWSが提唱する「Generative AI Security Scoping Matrix」というフレームワークを紹介します。

セキュリティ対策の基本:セキュリティ要件を満たす

生成AIアプリケーションのセキュリティ対策は、従来のアプリケーションと同様に、データ保護、ログ監視、ユーザー教育、脆弱性管理、インシデント対応計画など、セキュリティの基礎をしっかりと固めることが重要です。

生成AIアプリケーションは、大量のデータを扱うため、データ保護と分類は特に重要です。また、生成AIの出力結果が意図しない情報を含まないように、ログ監視やユーザー教育を通じて、適切な利用を促す必要があります。

生成AIアプリケーションのセキュリティスコープ

生成AIアプリケーションのセキュリティ対策は、そのアプリケーションの「スコープ」によって異なるアプローチが必要となります。AWSは、生成AIアプリケーションを以下の5つのスコープに分類しています。

スコープ説明
コンシューマーアプリ公開されている生成AIサービスを利用するアプリChatGPT, Amazon Bedrock Playground, Amazon Re:query
エンタープライズアプリ生成AI機能を搭載したエンタープライズ向けアプリSalesforce Einstein GPT, Amazon Q
事前学習済みモデルバージョン管理された事前学習済みモデルを利用してアプリを構築Amazon Bedrock Host Models
Fine-tunedモデル自社のデータでFine-tuningしたモデルを利用してアプリを構築Amazon Bedrock Customized Models, Amazon SageMaker JumpStart
Self-trainedモデル自社のデータでゼロから学習させたモデルを利用してアプリを構築Amazon SageMaker Studio

各スコープにおけるセキュリティ対策

各スコープにおけるセキュリティ対策のポイントを以下にまとめます。

コンシューマーアプリ

  • データ保護: 個人情報 (PII) や機密データは入力しない。利用規約 (EULA) を確認し、データの使用方法を理解する。
  • ログ監視: ログ監視はサービスプロバイダーの責任となる。
  • レジリエンス: サービスレベルアグリーメント (SLA) は提供されない場合が多い。重要なビジネスプロセスに利用する場合は注意が必要。

エンタープライズアプリ

  • データ保護: 利用規約 (EULA) や契約内容に基づいて、データの取り扱いに関する責任範囲を明確にする。
  • ログ監視: サービスプロバイダーの責任範囲と自社の責任範囲を明確にする。
  • レジリエンス: サービスレベルアグリーメント (SLA) が提供される場合がある。重要なビジネスプロセスに利用する場合は、SLAの内容を確認する。

事前学習済みモデル

  • データ保護: モデルの学習に使用されたデータの内容を理解し、自社のユースケースに適しているかを確認する。
  • リスク管理: モデルの脆弱性や悪用可能性を考慮し、OWASP Top 10 for LLMなどを参考にリスク評価を行う。
  • コントロール: API GatewayやWAFなどを利用して、モデルへのアクセスを制御する。

Fine-tunedモデル

  • データ保護: Fine-tuningに使用したデータの機密性を考慮し、適切なアクセス制御を行う。
  • リスク管理: Fine-tuningによってモデルの脆弱性や悪用可能性が変化する可能性があるため、再評価を行う。
  • コントロール: Fine-tuningしたモデルのバージョン管理を行い、不正な改ざんを防ぐ。

Self-trainedモデル

  • データ保護: 学習データの機密性と完全性を確保する。
  • リスク管理: モデルの脆弱性や悪用可能性を徹底的に評価する。
  • コントロール: モデルへのアクセス制御、データの暗号化、ログ監視などを実装する。

まとめ

本記事では、生成AIアプリケーションのセキュリティ対策について、AWSの「Generative AI Security Scoping Matrix」というフレームワークを用いて解説しました。生成AIは、ビジネスに革新をもたらす可能性を秘めていますが、セキュリティ面では新たな課題も存在します。各スコープにおけるセキュリティ対策のポイントを理解し、自社の状況に合わせて適切な対策を講じることが重要です。

生成AIは急速に進化している分野であり、セキュリティ対策も日々更新されています。最新の情報を収集し、常にセキュリティ対策を見直すことが重要です。

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