AWS IAM Identity Center: 信頼できる ID 伝播でデータへのアクセス制御と監査をシンプルに!

AWS IAM Identity Center: 信頼できる ID 伝播でデータへのアクセス制御と監査をシンプルに!

現代のビジネスにおいて、データはビジネスを差別化する重要な要素となっており、データに基づいた意思決定やサービス向上が求められています。特に、クラウド環境では、データレイクなどのデータ基盤に大量のデータを蓄積し、分析や機械学習などの様々な用途で活用することが一般的です。しかし、このような環境下では、適切なアクセス制御と監査ログの取得が非常に重要になります。

本記事では、AWSにおける最新のアクセス制御と監査パターン、特に「信頼できるID伝播」について解説します。この機能は、AWS IAM Identity Centerと連携し、ユーザーのアイデンティティをデータレイクなどのデータソースに安全かつ効率的に伝播させることを可能にします。

データへのアクセス制御: 従来のアプローチとその課題

従来のデータアクセス制御は、多くの場合、ロールベースのアクセス制御(RBAC)に依存してきました。これは、ユーザーをグループに割り当て、各グループに特定の権限を持つIAMロールを付与することでアクセスを制御する仕組みです。しかし、このアプローチは、データの粒度が細かくなると複雑化し、管理が困難になるという課題がありました。

たとえば、複数のプロジェクトや部門でデータを共有する場合、各プロジェクトや部門ごとに異なるIAMロールを作成し、ユーザーを適切に割り当てる必要があり、煩雑な管理作業が発生します。また、データの種類や属性、地理的な場所など、より詳細なアクセス制御が必要な場合、RBACだけでは柔軟性に欠けることがあります。

信頼できるID伝播: AWSにおける最新アクセス制御

信頼できるID伝播は、これらの課題を解決するためにAWSが提供する新しいアクセス制御機能です。この機能により、ユーザーのアイデンティティを信頼できる方法でAWSサービスに伝播させ、データソースへのアクセスをよりシンプルかつセキュアに制御することができます。

AWS IAM Identity Center

信頼できるID伝播の中核となるのが、AWS IAM Identity Centerです。このサービスは、企業の既存のIDプロバイダー(例:Okta、Microsoft Entra ID、旧Azure AD)と統合し、ユーザーのアイデンティティをAWS環境に連携させることができます。

信頼できるID伝播の仕組み

信頼できるID伝播は、ユーザーのアイデンティティをデータソースまで安全に伝播させるための仕組みです。この仕組みでは、ユーザーがAWSサービスにアクセスする際、IAM Identity Centerがユーザーのアイデンティティを検証し、その情報をAWSサービスに提供します。

AWSサービスは、受け取ったアイデンティティ情報に基づいて、ユーザーのアクセス権限を判定し、適切なデータへのアクセスを許可します。このプロセスを通じて、ユーザーは単一のアイデンティティで複数のAWSサービスにアクセスし、データを操作することができます。

信頼できるID伝播のメリット

信頼できるID伝播は、以下のメリットを提供します。

  • 簡素化されたアクセス制御: ユーザーのアイデンティティがAWSサービスに自動的に伝播されるため、管理者は個々のサービスで複雑なIAMロール設定を行う必要がなくなります。
  • 強化されたセキュリティ: 信頼できるIDプロバイダーによる認証と認可により、データへのアクセスが厳密に制御され、セキュリティリスクが軽減されます。
  • 詳細な監査ログ: AWS CloudTrailと統合することで、誰がどのデータにアクセスしたかを詳細に記録し、監査とコンプライアンス要件を満たすことができます。

信頼できるID伝播のユースケース: EMR Studioを例に

信頼できるID伝播は、様々なAWSサービスで利用できますが、ここでは、Elastic MapReduce (EMR) Studioを例に、具体的な動作を見てみましょう。

EMR Studioは、AWS上でSparkなどのビッグデータ処理エンジンを簡単に利用できるサービスです。従来、EMR Studioにアクセスするユーザーは、IAMロールを使用してアクセス制御されていましたが、信頼できるID伝播を使用することで、よりシンプルかつセキュアなアクセス制御が可能になります。

EMR Studioにおける信頼できるID伝播

  1. IAM Identity Centerとの統合: 企業のIDプロバイダーとIAM Identity Centerを統合し、ユーザーとグループ情報をAWS環境に同期します。
  2. EMR Studioの構成: EMR Studioのワークスペースを作成し、IAM Identity Centerとの統合を有効化します。
  3. ユーザー認証: ユーザーがEMR Studioにアクセスする際、IAM Identity Centerで認証が行われます。
  4. アイデンティティの伝播: 認証が成功すると、IAM Identity Centerはユーザーのアイデンティティ情報をEMR Studioに提供します。
  5. データアクセス制御: EMR Studioは、受信したアイデンティティ情報に基づいて、Lake Formationのグラントテーブルを参照し、ユーザーのアクセス権限を判定します。
  6. データへのアクセス: アクセスが許可された場合、EMR Studioはユーザーの代わりにS3にアクセスし、必要なデータを取得します。

このプロセスを通じて、ユーザーはEMR Studioにアクセスする際に、IAMロールを意識することなく、自身の企業アカウントで認証を行い、データにアクセスすることができます。また、Lake Formationのグラントテーブルによって、ユーザーがアクセスできるデータが制限されるため、セキュリティリスクを軽減できます。

まとめ

本記事では、AWSにおける信頼できるID伝播について解説しました。この機能は、企業の既存のID管理システムと統合し、ユーザーのアイデンティティをAWS環境に連携させることで、データへのアクセス制御と監査を簡素化し、セキュリティを強化します。

信頼できるID伝播は、データレイクなどのデータ基盤を活用する企業にとって、セキュリティとコンプライアンスを確保しながら、データの価値を最大限に引き出すための重要な機能と言えるでしょう。

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