クラウドサービスの利用料金は、使った分だけ支払う従量課金制が一般的です。これは、従来のオンプレミス環境と比較して柔軟性が高い一方、適切な管理を行わないとコストが想定以上に増加してしまう可能性も孕んでいます。
特に、AWSのような多様なサービスを提供するクラウドプラットフォームでは、利用状況やコストを可視化し、継続的に最適化していくことが重要です。
本記事では、AWSコスト管理の最新事情と具体的なコスト削減方法を、ユースケースを通して解説していきます。
AWSでは、コスト管理を効率的に行うためのベストプラクティスとして「Well-Architected Framework」が提供されています。Well-Architected Frameworkは、クラウドシステムの設計・運用を最適化するためのフレームワークであり、その柱の一つに「コスト最適化」があります。
コスト最適化の柱では、以下の5つの設計原則に従うことで、コスト最適化を実現できるとされています。
設計原則 | 説明 |
---|---|
1. クラウド財務管理 (CFM) を実践する | コストの可視化、最適化、計画・予測、FinOpsの実践といった4つの柱からなるフレームワーク |
2. 不要な「費用」を抑制する | 使っていないリソースや過剰なスペックを削減する |
3. ビジネス成果の測定に適切な「デリバリ」コストを 使ってコスト効率性を評価する | コスト効率性を評価し、必要に応じてリソースの調整を行う |
4. 差別化につながらない「高負荷」の作業に費用を かけるのをやめる | 差別化に繋がらない作業を自動化したり、マネージドサービスを利用する |
5. 費用対効果が「より」高くなる費用項目を明らかにする | 費用対効果の高いサービスや機能を優先的に利用する |
では、具体的なユースケースを通して、コスト最適化の方法を見ていきましょう。
ある企業の経理部から、AWS利用料金の増加に関する問い合わせが入りました。
クラウド管理担当者は、まずAWS Cost Explorer を使ってコストの可視化を行います。Cost Explorerは、AWSの利用料金を分析・可視化するためのサービスで、様々な条件でコストを絞り込むことができます。
例えば、以下の条件でコストを絞り込むことができます。
この結果、EC2インスタンスの利用料金が4月から5月にかけて大幅に増加していることがわかりました。さらに詳しく調査するために、Cost Explorerのグラフ表示を切り替え、折れ線グラフで確認してみましょう。
折れ線グラフで確認すると、EC2インスタンスの中でも、特定のインスタンスタイプの利用料金が大きく増加していることがわかります。
さらに詳細な分析を行うには、タグ を活用するのが有効です。タグとは、AWSリソースに付与できるキーと値のペアであり、リソースを分類・管理するために使用されます。
例えば、以下のようなタグをEC2インスタンスに付与することができます。
このようにタグを付与することで、どのアプリケーションや環境のEC2インスタンスの利用料金が増加しているのかを特定することができます。
ポイント: タグを有効活用するためには、コスト配分タグ として登録する必要があります。コスト配分タグとは、コスト分析に利用できるタグのことで、Cost Explorerなどのコスト関連サービスで利用することができます。
コスト増加の原因が特定できたので、次は不要な費用の抑制に取り組みます。
今回のユースケースでは、開発環境の検証用として起動されたままになっていたEC2インスタンスが原因でした。そこで、以下の方法で不要な費用の抑制を行いました。
これらの対策を実施することで、EC2インスタンスの利用料金を大幅に削減することができました。
コストの可視化と不要な費用の抑制を行った後は、さらなるコスト最適化に取り組みましょう。
継続的にコストを最適化するためには、以下のような活動が有効です。
本記事では、AWSコスト管理の最新事情と具体的なコスト削減方法をユースケースを通して解説しました。AWSコスト管理は、以下の3つのステップで進めていくのが効果的です。
AWSコスト管理は、継続的な取り組みが必要です。本記事で紹介したツールや手法を参考に、ぜひ自社の環境に最適なコスト管理体制を構築していきましょう。
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