データ×生成AI:事例から学ぶビジネスインパクト創出の方程式

データ×生成AI:事例から学ぶビジネスインパクト創出の方程式

近年、生成AIを使ったサービスが話題となっています。テキストから画像や動画、プログラムコードなどを生成できるAIは、ビジネスシーンでも大きなインパクトを与える可能性を秘めています。

本記事では、AWS Summit Japanのセッション「データ×生成AI – 事例から学ぶビジネスインパクト創出の方程式」の内容をベースに、生成AIの国内外事例や、組織として生成AIや最新技術をどのように活用していくかについて考察していきます。

セッションのゴール

このセッションでは、Amazonを含む国内外の生成AI活用事例を紹介し、生成AIや最新技術を組織で活用する方法を理解することを目標としています。

生成AI導入における課題

生成AIは新しい技術ですが、私たちの社会が新しい技術と出会うのはこれが初めてではありません。過去を振り返ってみると、インターネットやクラウド、スマートフォンの登場など、様々な技術革新がありました。

これらの技術革新は、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらしました。しかし、IPAのデータによると、クラウドネイティブ化が進んでいる企業では生成AIの導入も進んでいる一方で、そうでない企業では導入が進んでいないという現状があります。

生成AIの導入クラウドネイティブ導入済検討中検討していない合計
導入していない943041190
検討中10242969
検討している1684692
導入している152281207
稼働13584197558

※ 出典: IPA「2023年版クラウドソフトウェア開発に関するアンケート調査結果」より、クラウドネイティブ/生成AIの導入状況を筆者加工

では、生成AIを活用できている企業とそうでない企業の違いはどこにあるのでしょうか?

生成AI活用を成功させる企業の共通点

生成AIの活用に成功している企業の共通点は、以下の3点です。

  1. 顧客視点の文化:顧客体験を重視し、顧客のニーズを満たすために生成AIを活用している。
  2. 小規模チーム:少人数のチームで開発をスタートし、迅速にプロトタイプを作成し、改善を繰り返している。
  3. 頻繁な実験:新しい技術やアイデアを積極的に試す文化があり、生成AIの活用にもその文化が活かされている。

生成AI活用事例

Adobe Firefly

Adobeは、生成AIをクリエイティブ制作機能としてクリエイターやマーケターに提供しています。Adobe Fireflyは、テキストから画像を生成できる基盤モデルであり、Webアプリケーションだけでなく、Adobe ExpressやIllustrator、Photoshopなど、様々なアプリケーションに組み込まれています。

Adobe Fireflyの特徴は、著作権問題に対応するために、Adobe Stockやパブリックドメインのデータのみを利用していることです。また、生成AIの機能をワークフローに組み込み、シームレスに利用できるようにしている点も重要です。

Adobe Fireflyでは、以下の様な機能が提供されています。

  • Generative Fill (生成塗りつぶし)
    画像内の不要な部分を指定し、テキストで指示した内容で塗りつぶすことができます。例えば、画像から人物を消して、そこに「プールに浮かんでいる浮き輪」と入力すると、AIが自動でプールと浮き輪を生成し、自然な画像を作成することができます。
  • Text Effects (テキスト効果)
    任意のテキストに様々なスタイルを適用できます。例えば、「トラ柄」と入力すると、テキストがトラ柄のフォントに変換されます。

Adobe Fireflyの開発は、より良い顧客体験の追求から始まりました。2016年からAIによる顧客体験改善に取り組み、少人数の研究開発チームからスタートし、その後100名規模の体制にスケールしました。そして、頻繁な実験を通して、製品の改善を繰り返しています。

Pinterest

Pinterestは、世界中のアイデアを検索・保存・購入できるビジュアル探索プラットフォームです。Pinterestは、膨大なデータを迅速にインサイトに活かすため、データレイクの拡張に生成AIを活用しています。

Pinterestでは、1秒間に数億回の機械学習の推論を実行し、1秒間に8000万のイベントを記録しています。このような膨大なデータを扱うため、1日で機械学習モデルの構築とデプロイまで行うという、頻繁な実験を繰り返すエンジニアリング文化が根付いています。

Pinterestのエンジニアは、データ分析のUIにテキストからのSQL生成機能とテーブル検索機能を統合しました。これにより、アナリストは分析のアイデアをテキストで記述するだけで、実行可能なSQLの提案を受け取ることができるようになりました。その結果、クエリによるデータ抽出や変換の作業時間が40%も削減されたという成果が出ています。

Amazon M5

Amazon自身も、生成AIを活用してショッピング体験を向上させています。Amazonが開発した基盤モデル「Amazon M5」は、Amazonで扱うデータで学習された、マルチモーダル、マルチリンガル、マルチロケール、マルチタスク、マルチエンティティという5つのMを特徴としています。エンティティとは、Amazon内部の商品コードやAmazonでのクエリ、レビューといったAmazon独自の表現のことです。

Amazon M5は、検索、商品予測、配送といった様々なアプリケーションに利用され、大きなビジネスインパクトをもたらしています。

Amazon M5の開発においても、顧客視点の文化、小規模チーム、頻繁な実験といった要素が重要視されています。

  • 顧客視点の文化:Amazon M5は、顧客のショッピング体験を向上させるために開発されました。
  • 小規模チーム:Amazon M5の開発は、少人数の「Two Pizza Team」と呼ばれるチームからスタートしました。
  • 頻繁な実験:Amazon M5の開発では、毎月1万件以上のABテストを実施し、評価を通過したものだけが本番環境にデプロイされています。

まとめ

生成AIを活用した国内外事例から、ビジネスインパクト創出の方程式が見えてきました。

要素説明
顧客視点の文化顧客体験を重視し、顧客のニーズを満たすために生成AIを活用する
小規模チーム少人数のチームで開発をスタートし、迅速にプロトタイプを作成し、改善を繰り返す
頻繁な実験新しい技術やアイデアを積極的に試す文化があり、生成AIの活用にもその文化が活かされている
責任あるAIの利用生成AIの利用における透明性、公平性、プライバシー、セキュリティなどを考慮する

生成AIは、ビジネスシーンにおいても大きな可能性を秘めた技術です。これらの要素を意識することで、生成AIをより効果的に活用し、ビジネスにインパクトを与えることができるでしょう。

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