OllamaのWeb Search機能でローカルLLMが最新情報にアクセス可能に

OllamaのWeb Search機能でローカルLLMが最新情報にアクセス可能に

最終更新日:2025年10月06日公開日:2025年10月06日
益子 竜与志
writer:益子 竜与志
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最近話題の「Ollama」をご存知でしょうか。ローカル環境でLLMを手軽に動かせるツールとして注目を集めていたOllamaが、2025年に入って大きく進化しました。なんとWeb Search機能が追加され、ローカルで動作するLLMが最新のインターネット情報にアクセスできるようになったのです。

ChatGPTのような商用サービスに頼らずとも、自前の環境で最新情報を含めた回答生成が可能になるという、まさにゲームチェンジャーとも言える機能です。本記事では、実際にOllamaのWeb Search機能を検証してみた結果と、その技術的な仕組み、そして実務での活用可能性について詳しく解説していきます。

Ollamaが実現する新たなローカルLLMの可能性

「Ollama」は、ローカル環境でLarge Language Model(LLM)を簡単に実行できるオープンソースのプラットフォームです。Go言語で実装された軽量な推論エンジンを持ち、GGUF量子化されたモデルを効率的に動作させることができます。これまでもLlama 2やMistral、Qwen3といった様々なオープンソースモデルをワンコマンドでダウンロード・実行できる手軽さから、多くのエンジニアに支持されてきました。

「Ollama」は、ローカル環境でLarge Language Model(LLM)を簡単に実行できるオープンソースのプラットフォーム
「Ollama」は、ローカル環境でLarge Language Model(LLM)を簡単に実行できるオープンソースのプラットフォーム

2025年に入って、このOllamaに画期的な機能が追加されました。それが「Web Search」と「Web Fetch」という2つのツールAPIです。これらの機能により、Ollamaは単なるローカルLLM実行エンジンから、「Retrieval-Augmented Generation(RAG)」型のプラットフォームへと進化を遂げたのです。

Web Search機能がもたらすパラダイムシフト

従来のローカルLLMの限界

これまでローカルで動作するLLMには、決定的な弱点がありました。それは「学習データのカットオフ」問題です。モデルの学習時点以降の情報については回答できないため、最新のニュースや技術動向について質問しても、的確な答えを得ることができませんでした。

例えば、2024年に学習されたモデルに対して「2025年のAWSの新サービスについて教えて」と質問しても、「申し訳ありませんが、私の知識は2024年までのものです」といった回答しか返ってこなかったわけです。

Web Searchが解決する課題

OllamaのWeb Search機能は、この問題を根本的に解決します。ユーザーからの質問に対して、モデルが自身の知識だけでは不十分と判断した場合、自動的にインターネット検索を実行し、最新の情報を取得して回答に反映させることができるようになりました。

具体的な動作フローは以下のようになります。

  1. ユーザーが質問を入力
  2. LLMモデルがプロンプトを解析し、検索が必要かを判断
  3. 必要と判断した場合、Web Search APIにクエリを送信
  4. 検索結果(タイトル、URL、スニペット)を取得
  5. 必要に応じてWeb Fetch APIで詳細な内容を取得
  6. 取得した情報を元に、根拠に基づいた回答を生成
  7. 参照元のURLを含めてユーザーに回答

このプロセスにより、ローカルで動作しながらも常に最新の情報にアクセスできる、まさにハイブリッドなLLMシステムが実現されたのです。

技術的な実装とアーキテクチャ

MCP(Model Context Protocol)による統合

OllamaのWeb Search機能の中核を成すのが「MCP Server」です。これはPythonで実装されたコンポーネントで、モデルと外部ツール間のやりとりを標準化する役割を担っています。

MCPサーバーは、モデルが出力した「ツール使用リクエスト」をインターセプトし、実際のAPI呼び出しにマッピングします。例えばモデルが以下のようなJSONを出力した例は以下となります。

{
  "function": "web_search",
  "arguments": {
    "query": "Ollama new engine updates",
    "max_results": 3
  }
}

MCPサーバーがこれを解析し、実際のWeb Search APIへのHTTPリクエストに変換して実行します。

Web Search API・Web Fetch API

Web Search APIとWeb Fetch APIは、シンプルなREST APIとして提供されています。以下はWeb Search APIのリクエスト例です。

const searchResults = await fetch('<https://ollama.com/api/web_search>', {
  method: 'POST',
  headers: {
    'Authorization': `Bearer ${API_KEY}`,
    'Content-Type': 'application/json'
  },
  body: JSON.stringify({
    query: '検索クエリ',
    max_results: 5
  })
});

API

エンドポイント

機能概要

Web Fetch API

https://ollama.com/api/web_fetch

APIは指定されたURLのページ内容をテキスト化して返します。HTMLタグは自動的にMarkdown形式に変換され、モデルが扱いやすい形式で提供されます。

Web Search API

https://ollama.com/api/web_search

レスポンスには、タイトル、URL、ページ内容のスニペットが含まれます。デフォルトでは5件、最大10件の検索結果を取得できます。

キャッシング戦略の重要性

Web Search機能を効率的に利用するためには、適切なキャッシング戦略が不可欠です。Ollama公式ガイドラインでも、以下のようなキャッシング実装が推奨されています。

検索結果のキャッシングにおいて考慮すべき主要なポイントは以下の通りです。

  • クエリ文字列をキーとして検索結果をキャッシュ
  • URLをキーとして取得したページ内容をキャッシュ
  • セッション間でキャッシュを再利用して重複呼び出しを防止

これにより、APIコール数の削減とレスポンスタイムの改善が実現できます。

実践的な活用シナリオ

技術調査とドキュメント作成

私が実際に試してみて特に有用だと感じたのは、最新の技術動向調査です。例えば「今週リリースされたAWSの新機能」について質問すると、Ollamaは自動的にAWSのブログや公式ドキュメントを検索し、要約してくれます。

以下は実際のやり取りの例です。

// Ollamaエンジンへの問い合わせ
const response = await ollama.chat({
  model: 'qwen3:4b',
  messages: [{
    role: 'user',
    content: 'Ollamaのエンジンは今週何が変わりましたか?リンク付きで教えて'
  }],
  tools: ['web_search', 'web_fetch']
});

モデルは内部で「最新のOllamaエンジン更新を調べる必要がある」と判断し、Web Search APIを呼び出します。そして得られた検索結果から、例えば「Ollama – 新しいモデルスケジューリング(2025年9月23日)」といったブログ記事を発見し、その内容を要約して回答してくれるのです。

開発者向けのコード生成支援

コード生成においても、Web Search機能は威力を発揮します。最新のライブラリのAPIや、新しくリリースされたフレームワークの使い方について質問すると、公式ドキュメントやGitHubのREADMEから情報を取得して、適切なコードサンプルを生成してくれます。

実際の開発現場ではLLMの呼び出し回数が多ければ多いほど、消費トークンに料金が課金されますが、Ollamaを使用すれば心配いりません。(相応のPCスペックが必要なのに注意!!)

競合ソリューションとの比較

LangChain + SerpAPIとの違い

LangChainは、信頼性の高いAIエージェントやLLMアプリの開発・運用を支援するプラットフォームで、コード生成・検索・評価・デプロイまでを統合的にサポートします。単体でも使えますが、LangGraphやLangSmithと組み合わせることで、より強力な開発体験が可能です。  1
LangChainは、信頼性の高いAIエージェントやLLMアプリの開発・運用を支援するプラットフォームで、コード生成・検索・評価・デプロイまでを統合的にサポートします。単体でも使えますが、LangGraphやLangSmithと組み合わせることで、より強力な開発体験が可能です。 1

LangChainは柔軟なLLMフレームワークとして知られていますが、Web検索機能を実装するにはSerpAPIなどの外部サービスとの連携が必要です。

表 OllamaとLangChain+SerpAPIの比較

比較項目

Ollama Web Search

LangChain + SerpAPI

セットアップの容易さ

簡単(APIキー設定のみ)

やや複雑(複数ライブラリ必要)

コスト

無料枠が大きい

API従量課金が発生

カスタマイズ性

中程度

高い

レスポンス速度

高速(ローカル処理主体)

API通信による遅延あり

プライバシー

検索部分のみクラウド

全体がAPI依存

LangChainは柔軟性が高い反面、実装の負担も大きくなります。一方Ollamaは、必要最小限のコードで機能を有効化できるよう最適化されています。

Haystackとの比較

Haystackは、検索拡張生成(RAG)やエージェント型AIなどの高度なLLMアプリケーションを柔軟に構築できるオープンソースのAIフレームワークです。クラウド環境や本番運用にも対応しており、複雑なワークフローをGUIやコードで自在に設計できます。
Haystackは、検索拡張生成(RAG)やエージェント型AIなどの高度なLLMアプリケーションを柔軟に構築できるオープンソースのAIフレームワークです。クラウド環境や本番運用にも対応しており、複雑なワークフローをGUIやコードで自在に設計できます。

Haystackは元々ドキュメントQA向けのRAGシステムとして開発されました。自社の文書群を事前にインデックス化し、その中から回答を見つけることに特化しています。

Haystackの強みは以下の点にあります。

  • 数十万〜数百万件の大規模ドキュメント処理
  • ElasticsearchやFAISSなどの高速ベクトル検索
  • 高度にカスタマイズ可能なパイプライン構築

しかし、オープンなWeb全体を対象とした検索には向いていません。結局は外部の検索APIと組み合わせる必要があり、その点ではOllamaのように最初から統合されているソリューションの方が使いやすいと感じています。

LlamaIndexとの位置づけ

LlamaIndexは、企業内の非構造化データから情報を抽出・整理し、AIエージェントによる自動化ワークフローを構築できる開発者向けフレームワークです。RAGやエージェント型処理に最適化されており、柔軟なモジュール構成で迅速なプロトタイプ開発と本番運用を支援します。
LlamaIndexは、企業内の非構造化データから情報を抽出・整理し、AIエージェントによる自動化ワークフローを構築できる開発者向けフレームワークです。RAGやエージェント型処理に最適化されており、柔軟なモジュール構成で迅速なプロトタイプ開発と本番運用を支援します。

LlamaIndexは、様々なデータソースを取り込んでインデックスを作成し、LLMから問い合わせるためのライブラリです。階層的インデックスやメモリ効率の良いデータ構造を提供しており、大量の文書を扱う場合に効率的です。

使い分けとしては、以下のような判断基準が考えられます。

  • 自社データや過去文献の活用 → LlamaIndex
  • 時事ニュースや最新Web情報の取得 → Ollama
  • フルカスタマイズが必要 → LangChain/LlamaIndex
  • 短期間でプロトタイプ作成 → Ollama

実装上の注意点とベストプラクティス

レート制限への対応

Web Search APIを利用する際は、適切なレート制限対策が必要です。連続して大量のクエリを送信すると、一時的にアクセスが制限される可能性があります。

私が実装で採用している対策は以下の通りです。

  • exponential backoffによるリトライ処理
  • 同一クエリの重複排除
  • バッチ処理時の適切な待機時間設定

プロンプトエンジニアリングの工夫

モデルが適切にツールを呼び出すためには、プロンプトの設計が重要です。特に以下の点に注意が必要です。

システムプロンプトに含めるべき重要な指示内容:

  • 不確実な情報や時事的な内容については必ず検索すること
  • 検索結果を引用する際は必ずURLを含めること
  • 複数の情報源がある場合は、信頼性を評価して選択すること

エラーハンドリングの実装

ネットワークエラーやAPI障害に備えて、適切なエラーハンドリングが必要です。

async function searchWithFallback(query: string) {
  try {
    const results = await ollamaWebSearch(query);
    return results;
  } catch (error) {
    console.error('Web Search failed:', error);
    // フォールバック処理:ローカルモデルの知識のみで回答
    return await ollamaChat({
      model: 'qwen3:4b',
      messages: [{
        role: 'user',
        content: query + ' (注:最新情報は取得できませんでした)'
      }]
    });
  }
}

プライバシーとセキュリティの考慮事項

データの取り扱い

OllamaのWeb Search機能を利用する際、検索クエリはOllamaのクラウドサービスを経由します。そのため、機密性の高い情報を含むクエリには注意が必要です。

Ollama公式の方針によれば「Zero data retention」となっており、ユーザーの検索クエリや結果のログ保存は行われないとされています。それでも、以下のような対策を検討することをお勧めします。

機密情報を扱う際の推奨セキュリティ対策:

  • 個人情報や機密情報を含むクエリの事前フィルタリング
  • VPNやプロキシ経由でのアクセス
  • 検索結果の社内での二次利用に関するポリシー策定

コンプライアンスへの配慮

企業での利用を検討する場合、以下の点について事前に確認が必要です。

まず、利用規約とライセンスについてです。Ollamaエンジン自体はMITライセンスのOSSですが、Web Search部分はOllama運営のクラウドサービスであり、商用利用の場合は有料プランへの加入が必要になる可能性があります。

次に、取得したWeb情報の著作権についても注意が必要です。検索結果として得られた情報を二次利用する際は、元サイトの利用規約を確認し、適切な引用ルールに従う必要があります。

今後の展望と可能性

ローカル検索エンジンの統合

現在のOllama Web Searchはクラウド経由での検索が前提ですが、コミュニティではSearxNGなどのOSSメタ検索エンジンとの統合を試みるプロジェクトも進んでいます。将来的には完全にローカルで動作する検索機能が実現される可能性があります。

マルチモーダル対応の拡張

2025年5月のアップデートでOllamaはマルチモーダル対応(画像・動画入力)が導入されました。今後はWeb Search機能でも画像検索や動画コンテンツの取得・解析が可能になることが期待されます。

エンタープライズ向け機能の充実

企業での本格的な活用に向けて、以下のような機能拡張が予想されます。

今後期待される企業向け機能強化のポイントは以下での通りです。

  • 社内検索システムとの連携API
  • 監査ログとコンプライアンス機能
  • ファインチューニングされたドメイン特化型検索

まとめ

OllamaのWeb Search機能は、ローカルLLMの可能性を大きく広げる画期的な機能だと感じています。プライバシーを保ちながら最新情報にアクセスできるという、これまでトレードオフの関係にあった要件を両立させることに成功しました。

特に印象的だったのは、セットアップの簡単さです。複雑な設定やコーディングなしに、数行のコードで最新情報を取り込んだ回答生成が可能になるのは、多くのエンジニアにとって朗報でしょう。

もちろん、完全なカスタマイズ性を求める場合はLangChainやLlamaIndexの方が適しているケースもあります。しかし、「手軽に始められて実用的」というバランスの良さは、Ollamaならではの強みです。

個人的には、今後のアップデートでローカル検索機能が実装されれば、真の意味での「プライベートLLM + リアルタイム情報」という理想的な環境が実現すると期待しています。それまでの間も、現在のWeb Search機能だけでも十分に実用的であり、様々なプロジェクトでの活用を検討する価値があると考えています。

皆さんもぜひ一度、OllamaのWeb Search機能を試してみてください。ローカルLLMの新たな可能性を実感できるはずです。

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