なぜ今、Database Savings Plansがアツいのか
re:Invent 2025で発表されたAWS Database Savings Plans、チェックされましたか?正直、個人的にはかなりアツいアップデートだと思っています。
というのも、僕がサーバーレス開発を始めた2017年頃から、ずっと「データベースのSavings Plansってなんでないんだろう」と感じていたんですよね。EC2やLambdaにはCompute Savings Plansがあるのに、RDSやDynamoDBには個別のReserved InstancesやReserved Capacityしかなくて。
複数のデータベースサービスを使い分けるモダンなアーキテクチャだと、それぞれに対して別々のコミットメントを管理するのって、なかなか骨が折れるわけです。実際、僕がクライアント支援をしている中でも「RIの管理が複雑すぎて結局オンデマンドのまま放置している」というケースを何度も見てきました。
そんな課題を解決してくれるのが、今回のDatabase Savings Plans。さっそく中身を見ていきましょう。

Database Savings Plansで何ができるのか
対象となる9つのサービス
Database Savings Plansがカバーするのは、Aurora、RDS、DynamoDB、ElastiCache(Valkeyのみ)、DocumentDB、Neptune、Keyspaces、Timestream(InfluxDBのみ)、そしてDMSの9サービスです。
僕が特に注目しているのは、DocumentDB、Neptune、Keyspaces、Timestream、DMSについてはDatabase Savings Plansが初めてのコミットメント購入オプションになるという点。これまで割引の手段がなかったサービスにも、ようやくコスト最適化の道が開かれたわけですね。正直、Neptune使っているお客さんから「割引オプションないの?」と聞かれて困ったことが何度かあったので、これは嬉しい。
割引率はどれくらいか
割引率はデプロイメントモデルによって異なります。サーバーレス(Aurora Serverless v2、DocumentDB Serverless等)が最大35%、プロビジョンドインスタンスが20%、DynamoDBオンデマンドスループットが18%、DynamoDBプロビジョンドキャパシティが12%という構成です。
ここで「おっ」と思った方もいるかもしれません。そう、サーバーレスデプロイメントが最も高い割引率なんです。これは僕にとってかなりの朗報でした。Ragateではサーバーレスファーストでシステム設計をすることが多いんですが、これまでサーバーレスDBには割引オプション自体がなかったので、この35%は完全に「増分的な節約」になります。
Reserved Instancesとどう使い分けるか
「じゃあReserved Instances(RI)はもう要らないの?」という疑問が浮かびますよね。結論から言うと、両方を上手く使い分けるのがベストです。
正直に言うと、純粋な割引率ではRIのほうが上です。Aurora/RDSのRIは1年で最大45%、3年で最大66〜69%。DynamoDB Reserved Capacityは1年で最大54%、3年で最大77%。対してDatabase Savings Plansは最大35%(サーバーレス)なので、「とにかく安くしたい」ならRIを選ぶべきです。
でも、Database Savings Plansの真価は柔軟性にあります。エンジン間の変更(Oracle→PostgreSQL、RDS→DynamoDB)、インスタンスサイズの変更、リージョン間移動、プロビジョンドとサーバーレスの切り替え…こういった変更があっても割引が継続するんです。

僕がクライアントワークでよく見るパターンとして、「最初はRDS MySQLで作ったけど、途中からAurora PostgreSQLにモダナイゼーションしたい」みたいなケースがあります。RIだとこういう変更で割引が無駄になりがちですが、Savings Plansなら継続して使えるんです。この柔軟性は、特にシステムの変化が激しいスタートアップや、モダナイゼーション真っ最中の企業にとって大きな価値があると思います。
実践的な使い分け戦略
経験則も含めて、僕なりの使い分けの考え方をお伝えします。
本番環境で構成が完全に固まっていて、3年間は変更予定がないワークロードであれば、迷わずReserved Instancesを選ぶべきです。最大割引を取りに行くのが合理的ですし、安定したワークロードなら予測もしやすい。
一方で、開発・テスト環境や、インスタンスタイプやエンジンを頻繁に変えたいケース、モダナイゼーションを計画しているケース、複数のDBサービスを使い分けているケースでは、Database Savings Plansのほうが向いています。僕の感覚だと、SMB市場のお客さんはこっちのパターンが多い印象です。
そして、サーバーレスワークロードについては、正直Database Savings Plans一択だと思っています。これまで割引手段がなかったところに最大35%の割引が来たわけで、使わない理由がない。特にAurora Serverless v2を本番で使っているお客さんには、すぐにでも検討をおすすめしたいですね。
導入時に注意したい3つのポイント
実際に導入を検討する際、僕が気をつけてほしいと思っているポイントが3つあります。
まず、現時点では1年間のコミットメントのみという点。Compute Savings Plansのように3年オプションはまだありません。逆に言えば、まずは1年で試してみて、効果を確認してから継続するかどうか判断できるので、導入のハードルは低いとも言えます。
次に、Database Savings Plansはdb.r7g、db.r8gなど第7世代以降のインスタンスが対象です。旧世代のインスタンスを使っているなら、まずアップグレードを検討しましょう。どのみち旧世代は性能面でもコスト効率面でも不利なので、これを機にアップグレードするのは良い判断だと思います。

最後に、Savings Plansは$/時間でコミットするという点を忘れずに。AWSの推奨ツール(Recommendations、Purchase Analyzer)を活用して、過去の時間単位の使用量パターンを分析したうえでコミットメント額を決めるのがコツです。いきなり100%カバーを目指すのではなく、まずは70-80%程度のカバー率から始めて、様子を見ながら調整していくのが現実的なアプローチだと考えています。
サーバーレス時代のコスト最適化に向けて
Database Savings Plansは、特にサーバーレスDBを積極活用しているチーム、複数のDBサービスを横断利用しているチーム、モダナイゼーションを進行中のチームに恩恵が大きいと考えています。
僕自身、サーバーレス技術の黎明期からAWSを触ってきて、「サーバーレスは便利だけど割引がないからコスト面で不利」という声をたくさん聞いてきました。今回のアップデートで、その課題が一つ解消されたのは素直に嬉しいですね。
まずはAWS Cost Explorerで自分たちの使用パターンを確認して、Recommendationsを見てみるところから始めてみてください。













