「なぜ生成AIに投資すべきか」を説得力をもって伝える

「生成AIを導入したい」——その思いがあっても、経営層の承認を得られなければプロジェクトは前に進みません。調査では10.7%の回答者が「経営層や現場の理解が得られない」ことを課題として認識しています。
経営層を説得するには、「流行っているから」「競合が使っているから」ではなく、データに基づいた論理的な提案が必要です。
本レポートでは、Ragate株式会社が2025年12月に実施した505名への独自調査データを活用し、経営層への効果的な提案方法とROI設計のポイントを詳しく解説します。
調査概要
本調査は以下の条件で実施しました。
- 調査期間:2025年12月11日〜
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 有効回答数:505名
- 調査対象:日本国内のビジネスパーソン(情報システム部門・DX推進室所属者)
経営層が気にする3つのポイント

経営層の関心事
生成AI導入の提案において、経営層は主に以下の3点を気にしています。
関心事 | 具体的な疑問 |
|---|---|
投資対効果(ROI) | 投資に見合うリターンは得られるのか? |
リスク | セキュリティ、コンプライアンスは大丈夫か? |
競争力 | 導入しないことで競合に遅れを取らないか? |
これらの疑問に対して、データと論理で明確に答えることが承認を得るための鍵です。
提案のフレームワーク
Step 1:市場動向の提示——「なぜ今か」を示す
活用すべきデータ①:導入状況

調査データから、約52.7%の企業が何らかの形で生成AIを導入済みであることが分かります。
導入状況 | 構成比 |
|---|---|
導入済み(正式導入〜PoC) | 52.7% |
検討・準備段階 | 19.0% |
未導入・禁止 | 20.4% |
その他・不明 | 7.9% |
提案時の活用ポイント > 「市場調査によると、すでに過半数の企業が生成AIを導入済みです。当社が検討を先延ばしにすることは、競合に対する競争力低下を意味します。」
活用すべきデータ②:投資動向

調査データから、約30.5%の企業が生成AI投資を拡大予定であることが分かります。
投資意向 | 構成比 |
|---|---|
投資拡大派 | 30.5% |
現状維持派 | 25.1% |
縮小・見直し派 | 8.7% |
未定・様子見 | 35.6% |
提案時の活用ポイント > 「投資を縮小・凍結予定の企業はわずか2.4%であり、市場は生成AIへの投資を肯定的に評価しています。今投資を開始することで、先行者優位を獲得できます。」
活用すべきデータ③:全社導入企業の割合
調査データから、約15%の企業が全社規模で生成AIを正式導入しています。
提案時の活用ポイント > 「約7社に1社がすでに全社規模で生成AIを活用しています。当社も全社展開を視野に入れた戦略的な導入を進めるべきです。」
Step 2:ROI(投資対効果)の設計——「いくら儲かるか」を示す
ROI算出のフレームワーク

経営層が最も気にするのは投資対効果です。調査では17.6%が「ROI算出が困難」を課題として認識しています。
基本式
ROI = (効果金額 - 投資コスト) / 投資コスト × 100%
効果金額 = 工数削減効果 + 売上増加効果 + 品質向上効果
投資コスト = 初期導入費用 + 年間運用費用活用領域別の効果試算
調査データに基づき、活用領域別の効果試算を行います。
活用領域 | 活用率 | 効果試算の考え方 |
|---|---|---|
情報収集・調査 | 39.2% | 調査時間の短縮 × 人件費単価 |
システム開発 | 37.4% | 開発工数の削減 × エンジニア単価 |
コンテンツ作成 | 30.9% | 作成時間の短縮 × 人件費単価 |
議事録作成 | 28.1% | 作成時間の短縮 × 会議数 |
問い合わせ対応 | 26.5% | 対応件数 × 1件あたりの時間 × 自動化率 |
具体的な試算例
前提条件
- 対象:情報システム部門(10名)
- 主な活用:問い合わせ対応の自動化
- 月間問い合わせ件数:500件
- 1件あたり対応時間:15分
- 人件費単価:5,000円/時
- AI自動化率:70%
効果計算
# 年間効果金額
500件 × 70% × 15分 × 12ヶ月 × 5,000円/時 ÷ 60分
¥5,250,000/年
# 投資計算
初期導入費用:¥3,000,000
年間運用費用:¥1,200,000
年間総コスト:¥4,200,000(1年目)
# ROI
1年目ROI = (5,250,000 - 4,200,000) / 4,200,000 = 25%
2年目以降ROI = (5,250,000 - 1,200,000) / 1,200,000 = 337%提案時の訴求ポイント
「問い合わせ対応の自動化だけでも、1年目でROI 25%、2年目以降は337%の投資対効果が見込めます。」
Step 3:リスクへの対応策提示——「安全か」を示す
経営層が懸念するリスク

調査データから、企業が認識している主要なリスクは以下の通りです。
リスク | 回答率 |
|---|---|
情報漏洩・セキュリティリスク | 42.2% |
ハルシネーション(出力精度) | 35.2% |
著作権・コンプライアンス | 28.3% |
リスク対策の提示
リスク | 対策 |
|---|---|
セキュリティ | エンタープライズサービス(Azure OpenAI, Bedrock)の採用、利用ガイドラインの整備 |
ハルシネーション | RAGによる社内データ連携、人間によるレビュー体制 |
コンプライアンス | 商用利用可能なサービス選定、法務部門との連携 |
提案時の活用ポイント > 「セキュリティ懸念には、Azure OpenAI ServiceやAmazon Bedrockなどエンタープライズ向けサービスを採用することで対応します。これらはデータの学習利用がなく、VPC接続による閉域網運用も可能です。」
Step 4:段階的なアプローチ提案——「どう進めるか」を示す
段階的導入のロードマップ

いきなり大規模投資を提案するのではなく、段階的なアプローチを提示することで、経営層の承認ハードルを下げます。
Phase | 期間 | 投資規模 | 目的 |
|---|---|---|---|
Phase 1 | 2ヶ月 | 小 | PoC実施、効果検証 |
Phase 2 | 3ヶ月 | 中 | パイロット導入、ROI確認 |
Phase 3 | 6ヶ月 | 大 | 全社展開 |
提案時の活用ポイント > 「まずは小規模なPoCから開始し、効果を確認してから本格投資に進む段階的アプローチを提案します。Phase 1の投資は○○万円で、失敗した場合のリスクは限定的です。」
経営層向け提案資料の構成

推奨構成
セクション | 内容 | ページ数目安 |
|---|---|---|
1. エグゼクティブサマリー | 結論と推奨アクション | 1ページ |
2. 市場動向 | 調査データに基づく市場の現状 | 2ページ |
3. 課題と機会 | 自社の現状課題とAI活用による解決 | 2ページ |
4. 提案内容 | 具体的な導入計画 | 3ページ |
5. 投資対効果 | ROI試算と効果シミュレーション | 2ページ |
6. リスクと対策 | 想定リスクと具体的な対応策 | 2ページ |
7. スケジュール | 段階的な導入ロードマップ | 1ページ |
8. 次のステップ | 承認後のアクション | 1ページ |
エグゼクティブサマリーの書き方
【エグゼクティブサマリー】
■ 結論
生成AIの全社導入を提案します。
■ 市場環境
- 52.7%の企業がすでに導入済み
- 30.5%が投資拡大を予定
- 縮小・凍結はわずか2.4%
■ 期待効果
- 年間約5,000万円のコスト削減
- 2年目以降ROI 300%以上
■ 投資額
- 初期導入:3,000万円
- 年間運用:1,200万円
■ リスク対策
- エンタープライズサービス採用でセキュリティ確保
- 段階的導入で投資リスクを最小化
■ 推奨アクション
Phase 1(PoC)の承認をお願いします。よくある反論への対応
反論1:「まだ早いのでは」
対応 > 「市場データでは52.7%の企業がすでに導入済みであり、30.5%が投資拡大を予定しています。『早い』というより『標準』になりつつあります。様子見を続けることは、競合に対する遅れを意味します。」
反論2:「セキュリティが心配」
対応 > 「エンタープライズ向けサービス(Azure OpenAI, Amazon Bedrock)では、データの学習利用がなく、VPC接続による閉域運用も可能です。調査では7.5%の企業がAzure OpenAI、6.7%がBedrockを利用しており、セキュリティ要件の厳しい企業でも導入が進んでいます。」
反論3:「ROIが不明確」
対応 > 「本提案では具体的なROI試算を行っています。問い合わせ対応の自動化だけでも年間約500万円の効果が見込め、1年目でROI 25%、2年目以降は300%以上となります。まずはPoCで効果を検証し、確認が取れてから本格投資に進む段階的アプローチを採用します。」
反論4:「他に優先すべきことがある」
対応 > 「調査では35%の企業が生成AI投資を拡大予定であり、これは戦略的な投資と位置づけられています。他の施策との優先順位は検討が必要ですが、生成AIの導入を遅らせることによる機会損失(競争力低下、人材獲得への影響)も考慮すべきです。」
まとめ
本レポートでは、経営層への生成AI提案において以下のポイントを解説しました。
- 市場データの活用:52.7%が導入済み、30.5%が投資拡大という事実で「なぜ今か」を説明
- ROI設計:具体的な数値で投資対効果を提示
- リスク対策:懸念に対する具体的な対応策を用意
- 段階的アプローチ:PoCから始める低リスクな導入計画
経営層の承認を得るには、「感情」ではなく「データと論理」で説得することが重要です。本レポートの内容を参考に、説得力のある提案を作成してください。
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