生成AI導入の「勝ち組」と「負け組」の分かれ目
生成AIの導入を検討する企業が増える中、すでに全社規模で活用を推進している企業と、まだ検討段階にとどまっている企業との差が広がりつつあります。この差は何によって生まれるのでしょうか。
本レポートでは、Ragate株式会社が2025年12月に実施した505名への独自調査から、全社導入に成功している企業の特徴を分析し、成功要因を明らかにします。
調査概要
本調査は以下の条件で実施しました。
- 調査期間:2025年12月11日〜
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 有効回答数:505名
- 調査対象:日本国内のビジネスパーソン(情報システム部門・DX推進室所属者)
導入ステージ別の分布:全社導入は5社に1社

導入状況の全体像
調査結果から、企業の生成AI導入状況は以下のように分布していることが明らかになりました。
導入状況 | 割合 |
|---|---|
全社的に正式導入し活用推進中 | 21.4% |
一部の部門・プロジェクトに限定導入 | 17.7% |
現在PoC・試験運用段階 | 8.2% |
導入に向けて検討・情報収集中 | 4.2% |
導入していないが個人利用は許可 | 10.3% |
セキュリティリスク懸念から利用禁止 | 2.9% |
特に検討しておらず利用もしていない | 7.4% |
わからない | 28.0% |
導入フェーズ別グループ分け
この結果を整理すると、以下の3グループに分類できます。
グループ | 構成 | 割合 |
|---|---|---|
先進グループ(全社導入) | 全社的に正式導入 | 21.4% |
推進グループ(部分導入) | 部門限定導入 + PoC段階 | 25.9% |
検討/未導入グループ | 検討中 + 未導入 + わからない | 52.7% |
約5社に1社(21.4%)がすでに全社導入を達成しており、これらの企業を「先進グループ」と位置づけて分析します。
先進グループ(全社導入21.4%)の特徴

特徴①:予算拡大への積極姿勢
予算計画に関する調査結果と照らし合わせると、先進グループは予算拡大に積極的であることが推測されます。
予算計画 | 全体平均 |
|---|---|
大幅に拡大予定 | 15.1% |
ある程度拡大予定 | 20.4% |
現状維持 | 16.9% |
縮小検討 | 4.8% |
縮小・凍結予定 | 1.1% |
未定 | 41.5% |
約35%の企業が予算拡大を予定しており、これらの多くが先進グループに属していると考えられます。全社導入を達成した企業は、初期投資の効果を実感し、さらなる活用拡大に向けた追加投資を計画しているのです。
特徴②:多様な活用領域への展開
先進グループは、複数の業務領域で生成AIを活用しています。調査で判明した活用領域TOP5は以下の通りです。
活用業務領域 | 活用率 |
|---|---|
情報収集・調査・分析 | 37.8% |
システム開発・運用 | 35.4% |
コンテンツ作成・編集 | 25.1% |
議事録作成・要約 | 24.3% |
社内問い合わせ対応 | 23.5% |
先進グループは、単一の業務領域にとどまらず、組織横断で複数のユースケースを展開していると推測されます。
特徴③:課題を乗り越える組織力
全社導入を達成した企業は、導入課題を克服してきた実績があります。調査で判明した主要課題は以下の通りです。
課題 | 回答率 |
|---|---|
セキュリティリスク懸念 | 32.5% |
ハルシネーション懸念 | 27.0% |
スキル不足 | 24.3% |
法的懸念 | 23.0% |
先進グループは、これらの課題に対して具体的な対策を講じ、組織的に乗り越えてきたと考えられます。
推進グループ(部分導入25.9%)の位置づけ

PoC段階からの卒業が課題
「部門限定導入(17.7%)」と「PoC段階(8.2%)」を合わせた推進グループは、全社導入への移行が次のステップとなります。
PoC段階で停滞するパターン
多くの企業がPoC段階で停滞する理由として、以下が考えられます。
- ROIの可視化不足:効果を定量的に示せず、本格投資の承認が得られない
- スケールの壁:少人数での成功を全社に展開するリソースがない
- 組織的な抵抗:一部部門での成功が他部門に波及しない
全社導入への移行条件
PoC段階から全社導入に移行するためには、以下の条件が必要です。
- 成功事例の定量化:具体的なROIデータの蓄積
- 経営層のコミットメント:全社展開を推進するトップダウンの意思決定
- 横展開の仕組み:成功パターンを他部門に広げるナレッジ共有体制
成功企業に共通する5つの要因

要因①:明確なビジョンと目標設定
先進グループの企業は、「なぜ生成AIを導入するのか」という明確なビジョンを持っています。単なる「流行への追随」ではなく、「業務効率化により〇〇時間を創出する」「顧客体験を△△のレベルに向上させる」といった具体的な目標を設定しています。
目標設定のフレームワーク
レベル | 目標例 |
|---|---|
経営目標 | 生産性20%向上、コスト10%削減 |
部門目標 | 文書作成時間50%短縮 |
個人目標 | 日常業務のAI活用率30%以上 |
要因②:トップダウンとボトムアップの両輪
成功企業では、経営層のコミットメント(トップダウン)と現場の創意工夫(ボトムアップ)の両方が機能しています。
トップダウンの役割
- 全社的な方針・ビジョンの策定
- 予算・リソースの確保
- 部門間の調整・壁の排除
ボトムアップの役割
- 具体的なユースケースの発掘
- 現場ニーズに基づく改善提案
- 草の根的な普及活動
要因③:専門チーム/CoE(Center of Excellence)の設置
先進グループの多くは、AI活用を推進する専門チームを設置しています。このチームは以下の役割を担います。
- 戦略策定:全社AI活用ロードマップの策定
- 技術支援:ツール選定、環境構築のサポート
- 教育研修:リスキリングプログラムの設計・実施
- ガバナンス:利用ガイドライン策定、コンプライアンス管理
- ナレッジ管理:成功事例の収集と横展開
要因④:段階的なスケールアップ戦略
いきなり全社導入を目指すのではなく、段階的にスケールアップする戦略が有効です。
4ステップのスケールアップモデル
Phase | 範囲 | 目的 |
|---|---|---|
Phase 1 | パイロット部門(1-2部門) | 概念実証、課題の洗い出し |
Phase 2 | 先行展開(5-10部門) | 成功モデルの確立、ROI検証 |
Phase 3 | 本格展開(全部門) | 横展開、全社浸透 |
Phase 4 | 最適化・発展 | 継続的改善、新領域への拡大 |
要因⑤:継続的な学習と改善の文化
先進グループは、導入後も継続的に学習し改善する文化を持っています。
PDCAサイクルの実践
- Plan:新しいユースケースの企画
- Do:試験的な実装・運用
- Check:効果測定、フィードバック収集
- Act:改善策の実施、横展開
学習する組織の特徴
- 失敗を許容する文化
- ナレッジ共有の仕組み(社内Wiki、事例共有会など)
- 外部情報の積極的な収集
導入フェーズ別の推奨アクション
検討/未導入グループへの推奨
- まずは小さく始める:1部門、1ユースケースからスタート
- 経営層の巻き込み:競合動向や市場データを示してAI投資の重要性を訴求
- 外部パートナーの活用:PoC支援やコンサルティングサービスを活用
推進グループへの推奨
- ROIの定量化:成功事例を数値で示し、投資対効果を可視化
- 成功パターンの横展開:他部門への展開プランを策定
- 専門チームの設置:AI推進を担うCoEの組成を検討
先進グループへの推奨
- さらなる活用領域の拡大:新しいユースケースの発掘
- 高度化への投資:カスタムモデル、RAG構成などへの発展
- エコシステムの構築:パートナー企業や顧客も巻き込んだAI活用
まとめ
本調査により、以下の点が明らかになりました。
- 全社導入済み企業は21.4%で、約5社に1社が先進グループに該当
- 成功企業の5つの共通要因:明確なビジョン、トップ&ボトムの両輪、専門チーム、段階的スケールアップ、学習文化
- PoC段階からの卒業がROI可視化と経営コミットメントがカギ
- 予算拡大企業35%のうち、多くが先進グループと推測される
全社導入への道は、一足飛びには進みません。段階的なアプローチで成功体験を積み重ね、組織全体を巻き込んでいくことが重要です。
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