生成AI活用は「技術者のもの」で終わってよいのか

生成AIの導入が進む中、「エンジニアはバリバリ使っているが、事務系部門はまだまだ」という状況は多くの企業で見られます。しかし、生成AIの真価は組織全体で活用してこそ発揮されるものです。一部の職種に活用が偏っている状態では、投資対効果の最大化は望めません。
本レポートでは、Ragate株式会社が2025年12月に実施した505名への独自調査から、職種別の生成AI活用実態を分析し、組織全体でのAI活用を推進するためのポイントを解説します。
調査概要
本調査は以下の条件で実施しました。
- 調査期間:2025年12月11日〜
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 有効回答数:505名
- 調査対象:日本国内のビジネスパーソン(情報システム部門・DX推進室所属者)
回答者の職種構成:技術系が約半数を占める
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職種別分布
調査回答者の職種構成は以下の通りです。
職種 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
会社員(技術系) | 228 | 45.2% |
会社員(事務系) | 115 | 22.8% |
会社員(その他) | 63 | 12.5% |
経営者・役員 | 42 | 8.3% |
公務員 | 29 | 5.7% |
その他 | 28 | 5.5% |
技術系会社員が45.2%と最多を占め、次いで事務系会社員(22.8%)が続きます。情報システム部門・DX推進室を対象としたことが、技術系の比率が高い背景にあります。
活用領域データが示す「技術系優位」の実態
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システム開発領域の活用率37.4%の意味
調査では、生成AIの活用領域として「システム開発・運用」が37.4%という高い活用率を示しました。
活用業務領域 | 活用率 |
|---|---|
情報収集・調査・分析 | 39.2% |
システム開発・運用 | 37.4% |
コンテンツ作成・編集 | 30.9% |
議事録作成・要約 | 28.1% |
社内問い合わせ対応 | 26.5% |
クリエイティブ業務 | 17.2% |
翻訳・外国語対応 | 15.0% |
システム開発領域での活用率37.4%は、技術系職種が主導していることを強く示唆しています。一方、事務系職種に親和性の高い「コンテンツ作成・編集」(30.9%)や「議事録作成・要約」(28.1%)も一定の活用率を示しており、事務系への浸透も進んでいます。
技術系職種における生成AI活用の実態

開発者向けツールの利用状況
技術系職種における生成AI活用の中心は、開発支援ツールです。
ツール名 | 利用率 |
|---|---|
GitHub Copilot | 11.1% |
Cursor | 6.3% |
Kiro | 1.6% |
GitHub Copilotが11.1%でリードし、Cursor(6.3%)が急速に台頭しています。これらを合計すると、約19%の回答者が開発者向けAIツールを業務で活用しています。
回答者の約45%が技術系であることを考慮すると、技術者の約4割程度がAI駆動開発を実践していると推測されます。
技術系が活用しやすい理由
技術系職種でAI活用が進む背景には、以下の要因があります。
1. ツールの親和性:GitHub CopilotやCursorは開発環境に直接統合され、導入障壁が低い
2. 効果の可視化が容易:コード生成量や開発時間の短縮など、定量的な効果測定が可能
3. 試行錯誤の文化:新しいツールを試すことへの抵抗感が低い
4. 技術コミュニティの存在:ベストプラクティスの共有が活発
事務系職種における生成AI活用の現状と課題
事務系に適した活用領域
事務系職種が主に活用できる領域とその活用率は以下の通りです。
活用領域 | 活用率 | 事務系との親和性 |
|---|---|---|
コンテンツ作成・編集 | 30.9% | 高 |
議事録作成・要約 | 28.1% | 高 |
社内問い合わせ対応 | 26.5% | 高 |
情報収集・調査・分析 | 39.2% | 中〜高 |
翻訳・外国語対応 | 15.0% | 中 |
コンテンツ作成(30.9%)、議事録作成(28.1%)、社内問い合わせ対応(26.5%)は、事務系職種が即座に効果を実感できる領域です。
事務系でAI活用が進まない理由
一方で、事務系職種でのAI活用には以下の課題があります。
1. プロンプトエンジニアリングスキルの不足
調査では24.9%が「従業員のリテラシー・スキル不足」を課題として認識しています。技術系と異なり、AIへの指示出し(プロンプト)の経験が少ない事務系職種にとって、「何をどう指示すればよいか」という入り口のハードルが高くなっています。
2. 業務への適用方法が不明確
「どの業務にAIを使えばよいか分からない」という声も多く聞かれます。技術系には「コード生成」という明確なユースケースがある一方、事務系は業務が多岐にわたるため、適用先の見極めが難しくなっています。
3. ツールの選択肢が多すぎる
ChatGPT、Gemini、Copilot for M365など、汎用ツールの選択肢が多く、「どれを使えばよいか分からない」状態に陥りやすいのが実情です。
職種間格差を解消するための3つのアプローチ
アプローチ1:職種別のユースケース集の整備
事務系職種向けに、「この業務にはこうAIを使う」という具体的なユースケース集を整備することが有効です。
職種・業務 | ユースケース例 |
|---|---|
総務 | 社内規程FAQチャットボット、会議室予約の自動調整 |
人事 | 採用文面の下書き作成、面接記録の要約 |
経理 | 経費精算の問い合わせ対応、レポート作成支援 |
営業事務 | 見積書・提案書の下書き、議事録の自動生成 |
広報 | プレスリリースの下書き、SNS投稿案の作成 |
アプローチ2:ノーコードAIツールの導入
DifyのようなノーコードAIツールを導入することで、プログラミングスキルがなくても社内AIアプリケーションを構築できます。これにより、事務系職種が自らの業務に特化したAI活用を実現できます。
調査ではDifyの利用率は5.5%にとどまっていますが、内製化志向の企業を中心に導入が進んでいます。
アプローチ3:部門横断のAI活用推進チーム
AI活用を技術部門だけに任せるのではなく、各部門の代表者を含む横断チームを組成することで、事務系職種のニーズを汲み取りながら活用を推進できます。
年代別の活用傾向:30代〜40代が中心
年代別分布
調査回答者の年代構成も、AI活用の傾向を示しています。
年代 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
20代 | 43 | 8.5% |
30代 | 143 | 28.3% |
40代 | 150 | 29.7% |
50代 | 132 | 26.1% |
60代以上 | 37 | 7.3% |
30代〜40代が約58%を占めており、この世代がAI活用の中心となっています。一方、50代以上も約33%を占めており、シニア層へのリスキリング支援も重要な課題です。
組織全体でAI活用を推進するためのロードマップ
Phase 1:現状把握と目標設定(1ヶ月)
- 職種別のAI活用状況を調査
- 活用率の低い部門・職種を特定
- 部門別の活用目標を設定
Phase 2:環境整備とツール選定(2ヶ月)
- 全社共通の生成AIツールを選定
- セキュリティガイドラインを整備
- 部門別のユースケース集を作成
Phase 3:教育・研修の実施(継続)
- プロンプトエンジニアリング研修の実施
- 部門別の実践ワークショップ開催
- 成功事例の共有会を定期開催
Phase 4:効果測定と改善(継続)
- 部門別の活用率をモニタリング
- ROIの定量化と可視化
- 課題抽出と改善策の実施
まとめ
本調査により、以下の点が明らかになりました。
1. 技術系(45.2%)と事務系(22.8%)でAI活用に格差が存在し、システム開発領域(37.4%)の活用率が技術系優位を示唆
2. 事務系向けの活用領域(コンテンツ作成30.9%、議事録28.1%)も一定の浸透が進行中
3. 格差解消にはユースケース整備、ノーコードツール導入、横断チーム組成が有効
4. 30代〜40代が活用の中心であり、シニア層へのリスキリングも課題
生成AIの真価は、組織全体で活用してこそ発揮されます。職種間の格差を解消し、全社的なAI活用を実現することで、投資対効果を最大化してください。
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