Google Antigravityで開発者は「エージェントのマネージャ」になる

Google Antigravityで開発者は「エージェントのマネージャ」になる

最終更新日:2025年12月17日公開日:2025年12月17日
益子 竜与志
writer:益子 竜与志
XThreads

Googleが3600億円でWindsurfチームを引き抜いて開発したAIエディタ「Google Antigravity」が話題です。このエディタは、単なるコード補完ツールではありません。開発者の役割を「コードを書く人」から「AIエージェントを管理する人」へと変えようとしています。

どういうことか、技術的な仕組みと合わせて解説します。

Antigravityとは何か

Google Antigravityは2025年11月18日に発表されたAIネイティブな開発エディタです。VS Codeをベースにしていますが、設計思想が根本的に異なります。

従来のIDEは「エディタの中にAIがいる」という発想でした。コードを書いている最中にAIがサポートする、という形です。

Antigravityは逆です。「AIの中にエディタがある」という発想。AIエージェントが主体でタスクを実行し、人間はそれを管理・承認する立場になります。

Gemini 3 Proの実力

AntigravityのコアにはGemini 3 Proが搭載されています。このモデルのベンチマーク結果は驚異的です。

LMArenaで1501 Eloを達成し、初めて1500を超える歴史的スコアを記録しました。SWE-bench Verified(実際のGitHub Issue解決テスト)では76.2%という高精度を達成。これは実務的なコーディング能力の高さを示しています。

また、ScreenSpot-Pro(PC画面理解度テスト)では72.7%を達成。Gemini 2.5 Proの11.4%から劇的に向上しています。これがブラウザ操作機能の基盤になっています。

2つのインターフェース

Antigravityには2つの主要なインターフェースがあります。

Agent Manager(ミッション・コントロール)

複数のエージェントを同時に走らせ、それぞれのタスク進行状況を一覧で管理するダッシュボードです。

たとえば「フロントエンドのボタン修正」をエージェントAに、「バックエンドのAPIテスト作成」をエージェントBに同時に依頼できます。エージェントが作業を完了すると受信トレイに通知が届き、レビューを待つ形になります。

Editor View(エディタビュー)

VS Codeライクな従来のエディタ画面です。ショートカットキーや拡張機能がそのまま使えるので、VS Codeユーザーなら学習コストはほぼゼロ。

エージェントに任せず自分でコードを書きたいときは、こちらを使います。

4つのコアテナント

Antigravityは以下の4つの原則で設計されています。

Trust(信頼)では、エージェントの作業に関する文脈をタスクレベルの抽象度で提供します。ユーザーが信頼を得るために必要なアーティファクト(成果物)と検証結果のセットを提示してくれます。

Autonomy(自律性)では、エージェントが複雑なエンドツーエンドのソフトウェアタスクを自律的に計画・実行できる環境を提供しています。

Feedback(フィードバック)として、タスク内でどのツールがどのように呼び出されたかを一覧で確認でき、コメントやスクリーンショットを用いて容易にフィードバックを行えます。

Self-improvement(自己改善)により、エージェントは過去の作業から学習できます。

3つの自律性モード

エージェントにどこまで任せるかを3段階で設定できます。

Agent-driven development(エージェント駆動)は、AIが主体で進める完全自動運転モードです。目標を指示すればエージェントが計画から実装、テスト、修正までを自律的に完了します。

Agent-assisted development(エージェント支援)は、AIが補助しつつ人間が主体となるバランス型です。推奨されるオプションとして位置づけられています。

Review-driven development(レビュー駆動)では、AIは提案するだけで自動実行は最小限に抑えられます。

ブラウザ統合が革新的

Antigravityの特徴的な機能がブラウザ統合です。Gemini 2.5 Computer Useモデルにより、AIエージェントがChromeブラウザを直接操作できます。

クリック、スクロール、入力、コンソールログの読み取りなど、ブラウザ制御に必要なツールにアクセス可能です。DOM解析、スクリーンショット、マークダウン解析、さらに動画撮影までできます。

これにより、「アプリを作って」→「ローカルで起動して」→「ブラウザで動作確認して」→「バグがあれば修正して」という一連のフローを、エージェントが自律的に実行できます。

Windsurfチームの技術継承

Antigravityの開発チームは、GoogleがCodium社(Windsurf開発元)から24億ドルで引き抜いた人材です。WindsurfのCEO Varun Mohan氏、共同創業者Douglas Chen氏、研究開発部門の主要メンバーがGoogle DeepMindに移籍しています。

Windsurfの「Cascade」機能(コードへの深い理解、多様なツール群、リアルタイムのアクション認識)の技術がAntigravityに継承されています。

私の見解

Antigravityを触ってみて感じたのは、「開発者の役割が変わる」という予感です。

これまでは「自分でコードを書く」ことが開発者のアイデンティティでした。しかしAntigravityの世界観では、開発者は「AIエージェントに何をさせるかを設計し、その成果物をレビューする」役割にシフトします。

これを「スキルの低下」と捉えるか「高度化」と捉えるかは人それぞれでしょう。私は後者だと考えています。詳細な実装をエージェントに委譲することで、人間はより高いレイヤー(アーキテクチャ設計、要件定義、品質保証)に集中できるからです。

ただし、現時点ではパブリックプレビュー段階であり、レート制限やクォータ制約もあります。本番利用にはもう少し時間がかかりそうです。

まとめ

Google Antigravityは、AIエージェント時代の開発体験を先取りしたIDEです。

  • Agent Managerで複数エージェントを並列管理
  • 3つの自律性モードで人間の関与度を調整
  • ブラウザ統合でエンドツーエンドの開発を自動化
  • Windsurfチームの技術を継承したGemini 3 Pro搭載

「コードを書く」から「エージェントを管理する」へ。開発者の役割の変化を体験できるツールです。

参考リンク

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