AI駆動開発の失敗と成功、全部話してきた

久保 翔太
久保 翔太 SI事業部・プロジェクトマネージャー
XThreads
最終更新日:2026年03月25日公開日:2026年03月25日

AI駆動開発導入の実体験レポート。最初の失敗から、RAG整備・育成プログラムによる組織適応、生産性30%向上・工数50%削減の成果まで、全部正直に話してきました。

2025年12月20日(土)、LTS TechDay 2025(LTSグループ主催の社外オープンテックイベント)に登壇してきました。Ragate株式会社から3名で登壇した振り返りレポートです。

Cursorとの出会い

AI駆動開発の話をする前に、私たちの転機となったひとつのツールについて触れておきたいと思います。AIコーディングツール「Cursor」との出会いです。

CursorはVS Codeをベースにしたエディタで、IDE上でAIが直接コードを提案・補完してくれるという体験を提供してくれます。初めて触れたとき、率直に衝撃を受けました。コードを書いている最中にAIが文脈を読み取り、次に書くべきコードを的確にサジェストしてくれる。まるで、隣に優秀なエンジニアが座ってペアプログラミングをしているような感覚でした。

それまでのAIコーディング支援といえば、チャット画面にコードを貼り付けて質問するという「往復」が前提でした。Cursorはそれを根本から変えました。開発のフローを中断することなく、書いているその場でAIの力を借りられる。「これは使える」——チーム内でそう直感したメンバーは少なくありませんでした。

このCursorとの出会いが、私たちにとってAI駆動開発への本格的な一歩となりました。「AIはコードを書く現場でこそ力を発揮する」という確信を得たことで、組織全体でのAI活用に向けた議論が一気に加速していったのです。

発表テーマ:AI駆動開発、正直に話します

タイトルは「AI-DLC仕様駆動開発の潮流とエンジニアの将来展望」。聞きなれない言葉かもしれませんが、要するに「AIを使って開発プロセスを根本から変えようとしたら何が起きたか」の実体験レポートです。

きれいな成功談だけをお届けするつもりはありませんでした。最初はうまくいかなかったこと、現場が「使わない」を選び続けた期間のこと、それでも諦めなかった理由——全部テーブルに出してきました。

最初はうまくいかなかった

ChatGPTが世を席巻し始めた頃、私たちも「これで生産性が上がる!」と胸を躍らせながらAIツールを現場に導入しました。ところが現実は甘くなかった。

  • 「AIが出すコードは信用できない」という心理的抵抗
  • ツールを用意しても「使う理由がない」と感じるエンジニアたち
  • プロンプトの品質がバラバラで、アウトプットも安定しない

正直なところ、数ヶ月はほぼ「使われない日々」が続きました。導入したのに使われないというのは、ツールの問題ではなく仕組みと文化の問題だったのです。

転換点は「仕組みで解く」という発想

仕組みで解く

諦めずに向き合い続けた結果、問題の核心が見えてきました。エンジニアがAIを使いこなせないのは、「AIの使い方を知らない」のではなく「何を渡せばよいかがわからない」のだ、と。そこで着手したのが2つの取り組みです。

  1. RAG(検索拡張生成)の整備:社内ドキュメント・過去案件・コーディング規約をナレッジベース化し、AIが「文脈を知った状態」で答えられる環境を構築
  2. 育成プログラムの設計:プロンプトの書き方、仕様書の渡し方、AIとのペアプロの作法を体系化してチーム全体に展開

「AIに仕様を渡す」ための仕様書の書き方自体を見直す——これが「仕様駆動開発」との接続点です。AIはざっくりした指示より、構造化された仕様に対して圧倒的に良いアウトプットを返します。仕様書を書く文化が、そのままAI活用の底力になる。

成果:生産性30%向上・工数50%削減

地道な取り組みを続けた結果、数字に変化が現れ始めました。

📈 生産性 30% 向上 / ⏱️ 工数 50% 削減 — これは特定のエースエンジニアだけの話ではありません。RAG整備と育成プログラムによって「組織全体で適応した」結果として生まれた数字です。

AIが使えるエンジニアを増やすのではなく、AIが使いやすい組織をつくる——この発想の転換が分岐点でした。

登壇を終えて

発表後、参加者の方から「自社でも同じことが起きていて、どこから手をつければいいかわからなかった」という声をいただきました。AI導入に悩んでいるチームは、私たちだけではなかったのだと改めて実感しました。

LTS TechDayは「好きなことを好きに話せる場」でありながら、参加者のレベルが高く、刺激的な議論が飛び交う場でもありました。他社・他チームの取り組みに触れることで、自分たちのやっていることを客観的に見直す機会にもなりました。

失敗も含めて正直に話せたことで、「リアルな話が聞けた」と言っていただけたのが一番うれしかったです。きれいな成功談より、泥臭い実体験の方が誰かの役に立つこともある——そう信じて登壇してよかったと思っています。

さいごに

AI駆動開発は「ツールを入れたら終わり」ではありません。仕組みをつくり、文化を育て、組織全体で適応していくプロセスです。Ragateはその道のりをまだ歩き続けています。

同じ悩みを抱えているチームの方、ぜひ一度お話しできればうれしいです。

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