AWS Glue 5.0時代におけるETL開発・運用の現実解
「AWS Glue使ってみたいけど、最新バージョンでどう変わったの?」
「Development endpointsが使えなくなったって聞いたけど、どうやって開発すればいい?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。2024年12月にAWS Glue 5.0が正式リリースされ、ETL開発のパラダイムが大きく変わりました。特に注目すべきは「Spark 3.5.4」への対応と「Lake Formation」との深い統合です。これにより、パフォーマンスとセキュリティの両面で飛躍的な進化を遂げています。
しかしながら、新機能を闇雲に採用すれば良いというわけではありません。実際のプロジェクトでは、既存システムとの整合性やチームのスキルセット、そしてコストとのバランスを慎重に検討する必要があります。本記事では、AWS Glueの最新機能を活用しながら、実践的かつ持続可能な開発・運用体制を構築するためのベストプラクティスを詳しく解説していきます。
開発フェーズの劇的な変化と対応策
Glue 5.0への移行がもたらす本質的な価値
AWS Glue 5.0は単なるバージョンアップではありません。Spark 3.5.4とPython 3.11をサポートしたことで、最新のデータ処理技術とセキュリティパッチが利用可能になりました。特に重要なのは「Sparkネイティブの細粒度アクセス制御(FGA)」です。これによりLake Formationと連携して、テーブル・列・行・セルレベルでのアクセス制御が可能になりました。
私の経験上、多くの企業がGlue 3.0や4.0で稼働している既存ジョブを抱えていますが、段階的な移行戦略を立てることが重要です。まず新規開発はすべてGlue 5.0で統一し、既存ジョブは重要度と改修タイミングに応じて順次移行するアプローチが現実的でしょう。バージョン混在期間中は、チーム内でのナレッジ共有とドキュメント整備が特に重要になります。
Development endpointsの廃止とその代替戦略
Development endpointsがコンソールから非表示になったことは、多くの開発者にとって大きな変化です。しかし、これは後退ではなく、より洗練された開発環境への進化と捉えるべきでしょう。「Glue Studio」と「インタラクティブセッション」の組み合わせが新しいスタンダードとなっています。
インタラクティブセッションでは、ローカルのJupyterノートブックやVS Codeから直接AWS Glueのリソースを使用してコードを実行できます。これにより、従来のDevelopment endpointsよりも柔軟で高速な開発サイクルが実現できるようになりました。特に注目すべきは、セッションの起動時間が大幅に短縮され、コスト効率も向上している点です。
具体的な移行手順としては、まず既存のDevelopment endpointsで動作しているコードをエクスポートし、Glue Studioのノートブック機能で動作確認を行います。その後、チームの開発スタイルに応じて、Studio内での開発を継続するか、ローカル環境でのインタラクティブセッション開発に移行するかを決定します。
Git連携による本格的なCI/CD実現
Glue StudioのGit連携機能が実用レベルに達したことは、エンタープライズ開発において画期的な進歩です。CodeCommit、GitHub、GitLab、Bitbucketとの統合により、ジョブスクリプトとビジュアルETLジョブのバージョン管理が可能になりました。
ただし注意点として、ノートブックはまだGit連携の対象外です。この制約を踏まえ、ノートブックは探索的データ分析(EDA)やプロトタイピングに限定し、本番コードは必ずスクリプトジョブやビジュアルジョブとして実装する運用ルールを設けることをお勧めします。
実際のプロジェクトでは、以下のようなブランチ戦略を採用することで、効率的な開発フローを実現できます。開発ブランチで機能開発を行い、ステージング環境でのテスト後にメインブランチにマージ、そこから本番環境へのデプロイを行うという標準的なGitFlowを適用できるようになりました。
運用フェーズにおける可観測性の革新
Observabilityメトリクスが変えるトラブルシューティング
CloudWatch Observabilityメトリクスの導入により、AWS Glueジョブの内部動作が格段に可視化されました。従来の標準メトリクスでは把握できなかった、DPU単位やステージ毎の詳細なパフォーマンス情報が取得可能になっています。
特に価値があるのは、メモリ使用率やシャッフルデータ量といった、Sparkジョブのボトルネック特定に直結するメトリクスです。これらのメトリクスを活用することで、「なぜこのジョブは遅いのか」「どこでOOMエラーが発生しているのか」といった問題を迅速に特定できるようになりました。
実運用では、これらのメトリクスをCloudWatchダッシュボードで一元管理し、異常値検知アラームと組み合わせることで、プロアクティブな監視体制を構築することが重要です。特に本番環境では、ジョブの実行時間が通常の1.5倍を超えた場合や、メモリ使用率が80%を超えた場合にアラートを発火させる設定を推奨します。
Spark UIとローリングログの活用術
Spark UIの有効化は、ジョブのパフォーマンスチューニングにおいて必須の設定です。DAGビジュアライゼーション、ステージ詳細、シャッフル統計などの情報により、ジョブの実行フローを詳細に分析できます。
ここで重要なのは「ローリングログ」の設定です。長時間実行されるジョブの場合、通常のログ出力ではS3のストレージコストが膨大になる可能性があります。ローリングログを有効にすることで、必要な期間分のログのみを保持し、コストを抑制しながら必要十分な情報を確保できます。
私が関わったあるプロジェクトでは、日次バッチジョブのSpark UIログが月間で数TBに達していました。ローリングログの導入により、直近7日分のみを保持する設定に変更し、ストレージコストを約85%削減しました。このような実践的な設定は、長期運用において大きな差を生み出します。
継続ログによるリアルタイム監視の実現
継続ログ機能により、ジョブ実行中からCloudWatch Logsへのストリーミングが可能になりました。これは特に長時間実行されるジョブや、エラー発生時の早期検知において威力を発揮します。
従来は、ジョブが完了するまでログを確認できないケースが多く、問題の早期発見が困難でした。継続ログを有効にすることで、実行中のジョブの進捗状況やエラーをリアルタイムで把握でき、必要に応じて早期にジョブを停止することも可能になります。
ワーカータイプの選択とコスト最適化戦略
メモリ最適化ワーカー(R.*)の登場がもたらすインパクト
AWS Glueのワーカータイプにメモリ最適化型(R.*)が追加されたことは、大規模データ処理における選択肢を大きく広げました。従来のG系ワーカーでメモリ不足に悩まされていたケースでは、R系ワーカーの採用により安定性が大幅に向上します。
ワーカータイプの選択指針を以下の表にまとめました。実際のワークロード特性に応じて適切に選択することが重要です。
表 AWS Glueワーカータイプ選択ガイド
ワーカータイプ | 推奨用途 | メモリ/DPU | 起動時間 | コスト効率 |
---|---|---|---|---|
G.1X | 軽量ETL、開発テスト | 4GB | 標準 | 高 |
G.2X | 一般的なETL処理 | 8GB | 標準 | 高 |
G.4X~G.8X | 大規模集計、複雑な変換 | 16-32GB | 標準 | 中 |
G.12X~G.16X | 超大規模処理 | 48-64GB | 遅い | 低 |
R.* | メモリ集約的処理 | 最大128GB | 遅い | 中 |
G.025X | ストリーミング専用 | 1GB | 高速 | 最高 |
私の経験では、多くのケースでG.2Xから開始し、実行時のメトリクスを分析してから適切なワーカータイプに調整するアプローチが効果的です。特にR系ワーカーは起動レイテンシが高いため、頻繁に実行される短時間ジョブには不向きです。一方で、日次や週次の大規模バッチ処理では、その恩恵を最大限に享受できます。
Flex実行によるコスト削減の実践
Flex実行クラスは、非緊急のワークロードに対して最大35%のコスト削減を実現する画期的な機能です。ただし、いくつかの制約があることを理解しておく必要があります。
Flex実行が適用可能なのはG.1XとG.2Xワーカーのみで、新しい大型ワーカーやメモリ最適化ワーカーには対応していません。また、SLAが保証されないため、時間制約の厳しい本番バッチには不向きです。開発環境でのテスト実行、過去データの再処理、データ品質チェックなど、完了時刻に余裕があるワークロードに最適です。
料金体系も通常実行とは異なり、稼働ワーカーの実時間総和で課金されます。このため、並列度を上げて実行時間を短縮するよりも、少ないワーカー数で長時間実行する方がコスト効率が良い場合があります。
オートスケーリングとタイムアウト設定の最適化
オートスケーリング機能により、ワークロードに応じて動的にワーカー数を調整できますが、その設定には注意が必要です。最小ワーカー数を低く設定しすぎると起動時のパフォーマンスが低下し、最大ワーカー数を高く設定しすぎるとコストが跳ね上がります。
また、タイムアウトが最長7日(10,080分)に拡張されましたが、これは諸刃の剣です。長時間実行を前提とした設計は、障害時の影響範囲が大きくなるため、可能な限りジョブを分割し、チェックポイント機能を活用した再実行可能な設計を心がけるべきです。
データガバナンスとセキュリティの新標準
Lake Formation統合による細粒度アクセス制御
AWS Lake FormationとGlue 5.0の統合により、「セルレベル」までの細粒度アクセス制御が可能になりました。これは単なるセキュリティ機能の強化ではなく、データガバナンスの在り方を根本的に変える進化です。
従来のテーブルレベルやカラムレベルの制御では、特定の行やセルに含まれる機密情報を適切に保護することが困難でした。Sparkネイティブの細粒度アクセス制御(FGA)により、例えば「特定部門のユーザーは自部門のデータのみ参照可能」といった複雑な要件も実装できるようになりました。
実装にあたっては、まずLake Formationでデータカタログを構築し、タグベースのアクセス制御(TBAC)を設定します。その後、Glue 5.0ジョブからこれらの権限設定を自動的に参照する仕組みを構築します。この統合により、データガバナンスとETL処理が密接に連携し、コンプライアンス要件を満たしながら効率的なデータ処理が実現できます。
VPCエンドポイントとプライベート接続の必須化
S3へのVPCエンドポイント設定は、もはや選択肢ではなく必須要件と考えるべきです。パブリックインターネットを経由したデータ転送は、セキュリティリスクだけでなく、データ転送料金の観点からも避けるべきです。
VPCエンドポイントの設定に加えて、Glueジョブの「Network接続」設定も重要です。適切なVPC、サブネット、セキュリティグループを設定することで、完全にプライベートな環境でETL処理を実行できます。特に金融業界やヘルスケア業界など、規制要件の厳しい業界では、この設定が監査要件となることも多いです。
Secrets Managerによる認証情報管理
データベース接続情報やAPIキーなどの機密情報は、AWS Secrets Managerで管理することが推奨されます。Glueの接続設定からSecrets Managerを参照することで、ハードコーディングを避け、定期的なローテーションも自動化できます。
実装時のポイントとして、Secrets Managerのシークレットには適切なタグを付与し、IAMポリシーと組み合わせて最小権限の原則を適用することが重要です。また、シークレットへのアクセスログをCloudTrailで監査することも忘れてはいけません。
ストリーミングETLの実践的アプローチ
Kafka/Kinesisとの統合における考慮事項
ストリーミングETLジョブの設定は、バッチ処理とは異なる観点が必要です。特にKafkaやAmazon Kinesisとの接続では、認証方式(IAM、SASL/SCRAM)の選択が重要になります。
ストリーミング専用の軽量ワーカー「G.025X」は、コスト効率が非常に高く、軽量なストリーミング処理に最適です。ただし、メモリが1GBと限られているため、ウィンドウ集計や大規模な状態管理を伴う処理には不向きです。処理の複雑度に応じて、G.1XやG.2Xへのスケールアップを検討する必要があります。
チェックポイントとパーティション設計
ストリーミングETLでは、チェックポイントの設計が処理の信頼性を左右します。S3上のチェックポイント位置を適切に設定し、障害時の再開ポイントを明確にすることで、データの重複や欠落を防げます。
パーティション設計においては、データの到着頻度とクエリパターンのバランスを考慮する必要があります。時間ベースのパーティション(年/月/日/時)が一般的ですが、データ量が少ない場合は過度な小ファイル問題を引き起こす可能性があります。定期的なコンパクション処理と組み合わせた運用設計が重要です。
データ品質管理の自動化
Data Quality Definition Language (DQDL)の活用
AWS Glue Data QualityのDQDLを使用することで、データ品質ルールをコードとして管理できます。これにより、データ品質チェックの標準化と自動化が実現します。
実践的な活用方法として、まず基本的なルール(NULL値チェック、範囲チェック、一意性チェック)から始め、段階的に複雑なビジネスルールを追加していくアプローチが効果的です。また、データ品質スコアをダッシュボード化し、経時的な品質トレンドを可視化することで、データの信頼性を継続的に改善できます。
異常検知とアラート設定
データ品質の異常検知機能は、統計的手法により自動的に異常を検出しますが、追加のDPU課金が発生することに注意が必要です。コスト効率を考慮し、ビジネスクリティカルなデータセットに限定して適用することをお勧めします。
EventBridgeとの連携により、品質チェック結果に基づいたアラートやワークフローのトリガーが可能です。例えば、品質スコアが閾値を下回った場合にSlackへ通知し、同時に問題のあるデータを隔離用のS3バケットに移動する、といった自動化が実現できます。
オーケストレーション戦略の使い分け
Glue WorkflowsとStep Functionsの選択基準
Glue Workflowsは、Glue内で完結するシンプルなワークフローに最適です。ジョブ、クローラ、トリガーの組み合わせで、直列・並列・条件分岐を簡単に実装できます。
一方、Step Functionsとの連携は、より複雑なオーケストレーションが必要な場合に選択します。Lambda、ECS、SageMakerなど他のAWSサービスと組み合わせた処理や、人間の承認プロセスを含むワークフローでは、Step Functionsの表現力が必要になります。
私の経験則として、3つ以上のAWSサービスが関わる場合、または外部システムとの連携が必要な場合は、Step Functionsを選択することが多いです。ただし、Step Functionsは状態遷移ごとに課金が発生するため、高頻度で実行される単純なワークフローではコスト面でGlue Workflowsが有利になることもあります。
エラーハンドリングとリトライ戦略
ワークフローの設計において、エラーハンドリングは最も重要な要素の一つです。Glue Workflowsでは、ジョブの失敗時に別のジョブを実行する条件付きトリガーを設定できます。Step Functionsではより高度なエラーハンドリングが可能で、エラータイプに応じた分岐処理や、指数バックオフによるリトライが実装できます。
実運用では、一時的なエラー(ネットワークエラー、リソース不足)と恒久的なエラー(データ形式エラー、権限不足)を区別し、それぞれに適切な対処を行うことが重要です。
実装チェックリストと落とし穴の回避
開発フェーズのチェックポイント
2025年現在のAWS Glue開発において、以下のチェックリストを確実に実施することで、多くの問題を未然に防ぐことができます。
開発開始時に確認すべき重要事項を以下にまとめました。
- Glue 5.0(Spark 3.5.4/Python 3.11)での統一開発環境の構築
- Git連携の設定とブランチ戦略の明文化(ノートブックは対象外であることの周知)
- インタラクティブセッションまたはStudio環境の選択と設定
- 開発/検証/本番環境の分離とIAMロールの適切な設定
- ローカル開発用Dockerイメージのセットアップ(ユニットテスト環境)
運用フェーズの必須設定
運用開始前に必ず設定すべき項目は以下の通りです。これらを怠ると、障害発生時のトラブルシューティングが極めて困難になります。
- Observabilityメトリクスの有効化とCloudWatchダッシュボードの構築
- Spark UIの有効化とローリングログの設定
- 継続ログの有効化とログ保持期間の設定
- S3 VPCエンドポイントの設定とNetwork接続の構成
- Lake Formationによる細粒度アクセス制御の実装
- Secrets Managerによる認証情報の管理
- データ品質ルール(DQDL)の定義とアラート設定
よくある落とし穴と回避策
実際のプロジェクトで頻繁に遭遇する問題と、その回避策を共有します。
ワーカータイプの不適切な選択による問題は非常に多く見受けられます。「とりあえずG.1Xで始めて、遅ければ増やす」という安易なアプローチは避けるべきです。開発段階でワークロードの特性を分析し、適切なワーカータイプを選定することが重要です。特にR系ワーカーの起動レイテンシを考慮せずに採用し、SLAを満たせなくなるケースが散見されます。
Flex実行の制約を理解せずに採用する問題も増えています。G.1X/G.2Xのみという制約や、SLA非保証という特性を理解せず、本番クリティカルパスに組み込んでしまうケースです。Flex実行は開発環境や非緊急バッチに限定し、本番環境では慎重に適用範囲を検討すべきです。
Git連携でノートブックも管理できると誤解する問題は、移行プロジェクトでよく発生します。ノートブックでの開発コードを本番環境にデプロイしようとして、Git連携できないことに後から気づくパターンです。開発初期から、ノートブックは探索的分析に限定し、本番コードはスクリプトジョブとして実装するルールを徹底することが重要です。
タイムアウト7日を過信した設計も危険です。「最長7日まで実行できるから大丈夫」という考えで、巨大なジョブを設計すると、障害時の影響が甚大になります。ジョブは可能な限り小さく分割し、チェックポイント機能を活用した再実行可能な設計を心がけるべきです。
コスト最適化の実践的アプローチ
開発環境のコスト削減施策
開発環境では、以下の施策により大幅なコスト削減が可能です。
インタラクティブセッションのアイドルタイムアウトを適切に設定することで、使用していないリソースの課金を防げます。デフォルトの設定では長すぎる場合が多いため、チームの利用パターンに応じて30分から1時間程度に短縮することをお勧めします。
開発用ジョブには積極的にFlex実行を活用し、さらに夜間や週末の実行にはスケジュール調整を行うことで、コストを最小限に抑えられます。また、開発データのサンプリングを行い、本番の10%程度のデータ量でテストすることも効果的です。
本番環境の継続的な最適化
本番環境では、継続的なモニタリングと最適化が不可欠です。
Observabilityメトリクスを定期的に分析し、過剰なリソース割り当てがないか確認します。特に、CPU使用率が常に50%を下回っているジョブは、ワーカータイプのダウングレードを検討すべきです。逆に、メモリスピルが頻発しているジョブは、R系ワーカーへの移行やワーカー数の増加を検討します。
データ量の増加トレンドを監視し、将来的なスケーリング要件を予測することも重要です。急激なデータ量増加に対応できるよう、オートスケーリングの上限値には余裕を持たせつつ、通常時は最小構成で運用する設計が理想的です。
今後の展望と準備すべきこと
生成AIとの統合への備え
AWS Glueと生成AIサービスの統合は、今後さらに進化することが予想されます。すでにAmazon Bedrockとの連携事例が増えており、データ前処理から機械学習モデルの推論まで、一貫したパイプラインの構築が可能になっています。
現時点から準備すべきこととして、データのスキーマ管理とメタデータの充実化が挙げられます。生成AIがデータを理解し活用するためには、明確なスキーマ定義と豊富なメタデータが不可欠です。Glue Data Catalogの充実化は、将来的なAI活用の基盤となります。
サーバーレス化の更なる進化
AWS Glueのサーバーレス化は今後も進化を続けるでしょう。現在のDPUベースの課金モデルから、より細かい粒度での従量課金モデルへの移行も考えられます。
この流れに対応するため、ジョブの設計段階から効率性を重視し、無駄な処理を排除することがますます重要になります。また、イベントドリブンなアーキテクチャとの統合も進むと予想されるため、EventBridgeやStep Functionsとの連携パターンを今から習得しておくことをお勧めします。
まとめ
AWS Glue 5.0時代の開発・運用において、技術の進化は確実に私たちの選択肢を広げています。Development endpointsの廃止という一見後退に見える変更も、実はインタラクティブセッションというより優れた代替手段への進化でした。Observabilityメトリクスやcontinuous loggingといった新機能は、これまでブラックボックスだったジョブの内部動作を可視化し、トラブルシューティングの効率を飛躍的に向上させています。
しかし、新機能の採用は慎重に行うべきです。R系ワーカーの起動レイテンシ、Flex実行の制約、Git連携におけるノートブックの非対応など、それぞれの機能には必ず制約や考慮事項が存在します。本記事で紹介した実践的なアプローチを参考に、自社の要件とチームの成熟度に応じた段階的な採用を進めることが成功の鍵となります。
特に重要なのは、Lake Formationとの統合による細粒度アクセス制御の実装です。データガバナンスは後付けでは困難な要素であり、初期段階から適切に設計することで、将来的な規制要件やセキュリティ要件の変化にも柔軟に対応できます。
AWS Glueは今後も進化を続けるでしょう。本記事で紹介したベストプラクティスを基礎としながら、常に最新情報をキャッチアップし、実践的な検証を重ねることで、より効率的で信頼性の高いデータ基盤を構築できるはずです。データ活用が企業競争力の源泉となる現代において、AWS Glueの適切な活用は、ビジネス価値創出の重要な要素となることは間違いありません。