エンタープライズAI基盤の選択が競争力を左右する時代

生成AIの業務活用が本格化する中、多くの企業が「ChatGPTを直接使う」段階から「自社専用のAI基盤を構築する」フェーズへと移行しています。その際に重要となるのが、エンタープライズ向けAIプラットフォームの選定です。
Amazon Bedrock、Azure OpenAI Service、Google Vertex AI——3大クラウドベンダーが提供するこれらのプラットフォームは、セキュリティ、スケーラビリティ、既存システムとの統合性において、消費者向けサービスとは一線を画す価値を提供します。
本レポートでは、Ragate株式会社が2025年12月に実施した505名への独自調査から、エンタープライズAIプラットフォームの利用実態と選定のポイントを詳しく解説します。
調査概要
本調査は以下の条件で実施しました。
- 調査期間:2025年12月11日〜
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 有効回答数:505名
- 調査対象:日本国内のビジネスパーソン(情報システム部門・DX推進室所属者)
エンタープライズAIプラットフォームの利用実態
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主要プラットフォームの利用率
調査結果から、エンタープライズ向けAIプラットフォームの利用状況は以下の通りです。
プラットフォーム | 利用率 | 主なクラウド基盤 |
|---|---|---|
Azure OpenAI Service | 7.5% | Microsoft Azure |
Amazon Bedrock | 6.7% | Amazon Web Services |
Google Vertex AI | 4.6% | Google Cloud |
Azure OpenAI Serviceが7.5%でトップを獲得し、Amazon Bedrock(6.7%)、Vertex AI(4.6%)が続きます。合計すると、約18.8%の企業がエンタープライズAIプラットフォームを利用していることになります。
消費者向けサービスとの比較
同調査における消費者向けサービスの利用率と比較すると、その差が明確になります。
サービスタイプ | 代表サービス | 利用率 |
|---|---|---|
消費者向け | ChatGPT | 46.3% |
消費者向け | Gemini | 30.9% |
エンタープライズ | Azure OpenAI | 7.5% |
エンタープライズ | Bedrock | 6.7% |
エンタープライズ | Vertex AI | 4.6% |
消費者向けサービスが圧倒的な利用率を示す一方、エンタープライズプラットフォームはセキュリティ要件の厳しい企業や本格的なAI基盤構築を目指す企業に選ばれています。
Azure OpenAI Service(7.5%):Microsoft環境との統合が強み
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Azure OpenAI Serviceの特徴
約13社に1社がAzure OpenAI Serviceを利用しており、エンタープライズAIプラットフォームの中ではトップシェアを獲得しています。
利用可能なモデル
- GPT-4o / GPT-4 Turbo / GPT-4
- GPT-3.5 Turbo
- DALL-E 3(画像生成)
- Whisper(音声認識)
- Embeddings(埋め込み)
強み
Microsoft環境との統合
- Copilot for Microsoft 365とのシームレスな連携
- Azure Active Directory(Entra ID)による認証統合
- Power Platformとの連携
エンタープライズセキュリティ
- データの学習利用オプトアウト保証
- 日本リージョン(東日本・西日本)での運用
- VNet統合によるプライベートアクセス
既存Azure投資の活用
- Azure利用実績がある企業は追加契約なしで利用開始
- 既存のセキュリティポリシーをそのまま適用
適している企業
- Microsoft 365を全社導入している企業
- Azureを主要クラウドとして利用している企業
- Copilot for M365との統合を検討している企業
Amazon Bedrock(6.7%):マルチモデル戦略の本命
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Amazon Bedrockの特徴
約15社に1社がAmazon Bedrockを利用しており、AWSユーザーを中心に浸透が進んでいます。
利用可能なモデル
- Anthropic Claude(3.5 Sonnet / 3 Opus / 3 Haiku)
- Meta Llama 3.1 / 3.2
- Amazon Titan
- Stability AI(画像生成)
- Cohere(埋め込み)
強み
マルチモデルアクセス
- 複数ベンダーのモデルを統一APIで利用可能
- ユースケースに応じた最適モデルの選択
- ベンダーロックインの回避
Claudeへの独占的アクセス
- Anthropic Claudeの最新モデルに早期アクセス
- 日本語性能に優れたClaude 3.5 Sonnetが利用可能
AWSエコシステムとの統合
- Lambda、SageMaker、S3等との連携
- 既存のIAMポリシーをそのまま適用
- サーバーレスアーキテクチャでのコスト最適化
適している企業
- AWSを主要クラウドとして利用している企業
- マルチモデル戦略を採用したい企業
- サーバーレスアーキテクチャを活用したい企業
Google Vertex AI(4.6%):Geminiとの統合が魅力

Vertex AIの特徴
Vertex AIの利用率は4.6%と、3プラットフォームの中では最も低いものの、Google Workspaceユーザーを中心に採用が進んでいます。
利用可能なモデル
- Gemini 1.5 Pro / 1.5 Flash
- Gemini 1.0 Pro
- PaLM 2
- Imagen(画像生成)
- Embeddings
強み
Geminiの高度な機能
- 100万トークンの超長文コンテキスト
- マルチモーダル処理(テキスト・画像・動画)
- グラウンディング(検索連携)機能
Google Workspaceとの連携
- Gmail、Google Docs、Sheets等との統合
- Gemini for Workspaceとの連携
機械学習プラットフォームとしての成熟度
- AutoML、カスタムトレーニング機能
- MLOpsパイプラインの構築支援
適している企業
- Google Cloudを主要クラウドとして利用している企業
- Google Workspaceをメインで利用している企業
- 長文処理やマルチモーダル処理が必要な企業
3プラットフォームの徹底比較
機能・特徴比較表
観点 | Azure OpenAI | Amazon Bedrock | Vertex AI |
|---|---|---|---|
主要モデル | GPT-4o | Claude 3.5 | Gemini 1.5 |
マルチモデル | △(OpenAI中心) | ◎(複数ベンダー) | ○(Google中心) |
日本リージョン | ◎(東日本・西日本) | ◎(東京・大阪) | ○(東京) |
既存連携 | M365/Azure | AWS全般 | GWS/GCP |
セキュリティ | ◎ | ◎ | ◎ |
従量課金 | ○ | ◎ | ○ |
選定の判断基準
既存クラウド環境で選ぶ
既存環境 | 推奨プラットフォーム |
|---|---|
Azure中心 | Azure OpenAI Service |
AWS中心 | Amazon Bedrock |
GCP中心 | Vertex AI |
マルチクラウド | Amazon Bedrock(マルチモデル優位) |
利用したいモデルで選ぶ
優先モデル | 推奨プラットフォーム |
|---|---|
GPT-4o | Azure OpenAI |
Claude | Amazon Bedrock |
Gemini | Vertex AI |
複数モデル | Amazon Bedrock |
ユースケースで選ぶ
ユースケース | 推奨プラットフォーム |
|---|---|
M365連携 | Azure OpenAI |
サーバーレスAI | Amazon Bedrock |
長文処理 | Vertex AI(Gemini) |
マルチモーダル | Vertex AI |
セキュリティ要件への対応
調査結果:セキュリティ懸念が最大の課題
調査では42.2%が「情報漏洩・セキュリティリスク」を課題として認識しています。エンタープライズプラットフォームは、この懸念に対して以下の対策を提供します。
共通のセキュリティ機能
機能 | Azure OpenAI | Bedrock | Vertex AI |
|---|---|---|---|
データ非学習保証 | ◎ | ◎ | ◎ |
プライベートエンドポイント | ◎ | ◎ | ◎ |
監査ログ | ◎ | ◎ | ◎ |
暗号化(保存・転送) | ◎ | ◎ | ◎ |
日本リージョン | ◎ | ◎ | ○ |
導入コストの考え方
従量課金モデル
3プラットフォームとも従量課金(トークン単位)が基本です。
プラットフォーム | 代表モデル | 入力(1Kトークン) | 出力(1Kトークン) |
|---|---|---|---|
Azure OpenAI | GPT-4o | $0.005 | $0.015 |
Bedrock | Claude 3.5 Sonnet | $0.003 | $0.015 |
Vertex AI | Gemini 1.5 Pro | $0.00125 | $0.005 |
※価格は参考値であり、変動する可能性があります
TCO(総所有コスト)の考え方
単純なAPI料金だけでなく、以下を含めた総合的な評価が重要です。
- インフラ運用コスト
- 開発・カスタマイズコスト
- 人材育成コスト
- 既存システムとの統合コスト
まとめ
本調査により、以下の点が明らかになりました。
1. Azure OpenAI(7.5%)がトップシェアで、Microsoft環境を持つ企業に選ばれている
2. Amazon Bedrock(6.7%)はマルチモデル戦略とAWSエコシステムが強み
3. Vertex AI(4.6%)はGeminiの高度な機能とGoogle連携が魅力
4. 選定の最重要基準は既存クラウド環境との親和性
エンタープライズAIプラットフォームの選定は、今後数年間のAI戦略を左右する重要な判断です。自社のクラウド戦略、セキュリティ要件、ユースケースを総合的に勘案し、最適な選択を行ってください。
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