はじめに
今回のLT会では、システムの信頼性を支える考え方やネットワークの基礎、新しい技術を実際に試した経験から、資格学習、暮らし、事業活動まで、幅広い知見が共有されました。
全体に共通していたのは、技術や手法を受け身で知るだけで終わらせず、「何のために必要なのか」を考え、自ら手を動かして確かめる姿勢です。障害時の挙動を想像する、基礎を学び直す、用意された環境の前提まで確認するなど、それぞれの発表には、表面的な理解にとどまらない工夫がありました。
個人が試行錯誤の過程や気づきを言葉にして共有することで、その経験はほかのメンバーやプロジェクトでも活用できる知恵へと変わります。こうした学びの循環も、RagateのLT会が大切にしていることの一つです。
Talk 1:異常時を想像し、運用に強いコードをつくる

最初のテーマは、SREの考え方をコードレビューに応用する方法です。SREでは、障害を検知・追跡し、同じ問題を繰り返さないように運用を継続的に改善します。その視点は、運用開始後だけでなく、実装やレビューの段階から活用できます。
発表では、外部APIへのアクセスが例に挙げられました。正常な応答だけを想定したコードでは、一時的な通信エラーや応答遅延が発生した際、サービス全体へ影響が広がる可能性があります。そこで確認したいのが、タイムアウトの上限、リトライの条件や回数、レートリミットへの対策、最終的に処理が失敗した場合の動作です。
同じ処理を繰り返しても意図しない結果を生まない「冪等性」も重要です。単純な再実行が、データの重複登録など別の問題につながる場合があるためです。
AIがコードを生成する機会が増えても、正常時に動くことだけで品質は判断できません。「どのような条件で困るか」「失敗したときに利用者や運用担当者へどのような影響があるか」を考えることが、安定したサービスと顧客からの信頼につながります。
- 関連資料:LT会 Talk1.pdf
Talk 2:通信の階層を理解し、障害の原因を切り分ける

続いて、TCP/IPにおけるネットワークの階層モデルが紹介されました。過去に携わった分野を改めて学び直し、知識を整理した発表です。
TCP/IPでは、通信の仕組みをアプリケーション層、トランスポート層、インターネット層、ネットワークインターフェース層の4階層に分けます。アプリケーション層ではHTTPなどを用いてデータを扱い、トランスポート層ではTCPやUDPによってデータの届け方を決めます。インターネット層はIPアドレスを使って宛先を指定し、ネットワークインターフェース層はケーブルやWi-Fiなど、実際の通信手段を担います。
送信時には各階層で必要な情報を加える「カプセル化」が行われ、受信側ではそれらを順に取り外して元のデータを取り出します。各層の役割が分かれているため、一つの層に変更があっても、ほかへの影響を抑えられることが階層モデルの利点です。
こうした基礎知識は、通信トラブルの原因を切り分ける際の共通言語になります。目の前の現象だけで判断せず、「どの層で問題が起きているのか」を順序立てて考えることで、調査の精度と速度を高められます。
- 関連資料:LT会 Talk2.pdf
Talk 3:障害を防ぐだけでなく、回復できるシステムへ

3つ目のテーマは、AWSにおける「レジリエンス」です。レジリエンスとは、障害が発生した際に、できるだけ早く復旧するための回復力を指します。
重要なのは、障害を完全になくそうとするだけではなく、「システムは壊れる可能性がある」という前提に立つことです。そのうえで、自動復旧や冗長化を組み込み、顧客への影響を最小限に抑えます。
具体例として、複数のアベイラビリティゾーンを利用するマルチAZ構成や、東京リージョンに問題が起きた場合に大阪リージョンで復旧できるような複数リージョン構成が紹介されました。また、意図的に障害を発生させ、想定したエラーや復旧動作になるかを継続的にテストする考え方にも触れています。
AWS Resilience HubやRoute 53 Application Recovery Controllerなどのサービスもありますが、導入自体が目的ではありません。顧客に求められる信頼性や障害時の影響を踏まえ、適切なアーキテクチャを設計することが重要です。
- 関連資料:LT会 Talk3.pdf
Talk 4:目的を持って試す、AIワークショップの実践

4つ目は、前日に開催された「AI道場」への参加レポートです。登壇者は「知らないサービスをキャッチアップすること」と「ハンズオンを最後まで試すこと」という二つの目的を事前に定め、ワークショップに臨みました。
ハンズオンでは、AWSが用意したEC2、GitLab、エディタなどの環境を利用しました。紹介されたツールがオープンソースとして公開されており、内部の仕組みを確認できる点にも関心を持ったそうです。一方、必要な画面の説明がすぐに見つからず、自ら検索して情報を探す場面もありました。
用意された環境をそのまま使うだけでなく、付与された権限も確認。管理者権限である「AdministratorAccess」が設定されていたことに気づき、実際にコマンドを試しながら、環境の構成や操作できる範囲を確かめました。その後は、5つのラボを並行して進めています。
新しい技術を受け身でなぞるのではなく、目的を決め、自分で調べ、環境の前提まで確認しながら手を動かす。短時間で学びを深めるための実践的な姿勢が伝わる発表でした。利用可能な環境が残っていることにも触れ、未参加のメンバーへ挑戦を呼びかけました。
Talk 5:資格学習で、PMOの知識を体系化する

5つ目の発表では、日本PMO協会の「PMOスペシャリスト」資格への挑戦が共有されました。約12.5時間のeラーニングとオンライン試験を通じて、PMOの導入手法やプロジェクトマネジメントの基礎を学べる資格です。
動画の再生速度を調整し、隙間時間を使って進めるなど、学習を継続するための工夫も紹介されました。資格取得をきっかけに、実務で得た断片的な経験を体系的な知識として整理する取り組みです。
- 関連資料:LT会 Talk5.pdf
Talk 6:ストリートビューで振り返る、街と暮らしの変化

5つ目は、Googleマップのストリートビューにある「他の日付を見る」機能についての発表です。
Ragateオフィス周辺や身近な周辺の画像を遡り、前の建物が残っていた時期や、その後撤去されて周辺が整備されていく様子を紹介しました。現在地を確認するために使うことの多いストリートビューですが、過去の画像をたどることで、街並みや暮らしの変化を振り返ることもできます。
普段何気なく使っているサービスにも、まだ知らない機能や楽しみ方があります。身近な道具を少し違う角度から試してみる、好奇心の大切さが感じられる発表でした。
Talk 7:注文住宅に学ぶ、要件定義と設計レビュー

6つ目のテーマは、注文住宅づくりです。希望する暮らしや必要な設備を要望書にまとめ、設計士との対話と図面の修正を繰り返した経験が紹介されました。
土地の条件や妥協できる点を整理したうえで、子どもの遊び場、キッチンの回遊動線、書斎などの要望を具体化。収納やコンセントの位置も、実際の生活動線を想像しながら検討しました。さらに新旧の図面を重ね、変更漏れやズレも確認したそうです。
利用場面を想像して要件を定め、成果物をレビューする流れは、システム開発にも通じます。満足できる成果を得るためには、事前の整理と丁寧な合意形成が欠かせないことが伝わる発表でした。
Talk 8:営業活動の進展と、新たな知見発信へ

最後の発表では、現在進行している営業活動について共有されました。
複数の提案や関係各所との連携が進んでおり、新たな案件の創出に向けた取り組みが着実に広がっています。
あわせて、書籍出版に向けた活動も紹介されました。日々の業務で培ってきた専門知識を社内だけにとどめず、書籍という形で広く届ける取り組みです。
営業活動を通じて新たな機会をつくることと、蓄積した知見を社外へ発信すること。その両面から、Ragateの今後につながる動きが共有された発表でした。
- 関連サイト:MCPの教科書(上巻) MCPの教科書(下巻)
おわりに
今回のLT会では、障害を想定した設計、ネットワークの基礎、AIワークショップでの実践、資格学習、身近なサービスの意外な機能、住宅設計、営業活動など、8つの多様な経験と知見が共有されました。
各発表に共通していたのは、与えられた技術や情報をそのまま受け入れるのではなく、まず目的を明確にし、自ら手を動かして確かめる姿勢です。異常時の挙動を想像する、基礎に立ち返る、環境や権限まで確認する、利用する人の動きを具体的に考える。こうした取り組みは、課題の本質を正しく捉え、より良い解決策を導くことにつながります。
個人の試行錯誤や日常の気づきを持ち寄り、対話を通じて組織の知恵へ変えていくことも、LT会の大切な役割です。Ragateではこれからも、技術を使うこと自体を目的にせず、その先にある価値を考えながら、学びを周囲へ還元していきます。
次回のLT会もお楽しみに!






.webp?q=65&fm=webp&w=400&h=260&fit=crop)








