生成AIの進化「支援」から「自律」へ
セミナーでは、生成AI技術が仕事を任せられる方向に進化しているという説明がありました。
2023年のChatGPT登場時はAIが人間を「支援」する立場でしたが、2024-2025年にかけてAIエージェントが台頭し、タスクの受付から完了まで、AIが計画を立て、ツールを使い、自律的に実行できるようになってきているとのことです。
また、測定指標も「社員が生成AIを使える割合」から、「生成AIが仕事を担えている割合」へと変化してきているという指摘がありました。この視点の転換は興味深く、開発組織のあり方を見直すきっかけになりそうだと感じました。
AIエージェント 開発を変える技術

AIエージェントは、目的とツールを与えることで以下のサイクルを回しタスクを自律的に完了する技術とのことです。
- 計画:ゴール達成までの手順を自ら設計
- ツールの利用:Web検索、API呼び出し、コード実行などを駆使
- 観測:実行結果を評価し、計画を修正
従来技術との違いとして説明されたポイント
- RPAとの違い:事前に定義された手順に従うのではなく、その場で柔軟に計画を立てられる
- チャット型AIとの違い:人間に提案するだけでなく、自ら実行・進捗管理する自律性を持つ
AI エージェントの実装、実行環境、セキュリティ面などにおいてもStrands Agents SDKやAgentCoreなどを提供することで整備されていっている印象を受けました。
AI-DLC 生成AI時代の開発ライフサイクル
AI-Driven Development Lifecycle(AI-DLC)は、従来の開発手法が人間主導の長期プロセス向けに設計されていたのに対し、AIを中心的な協力者として位置づけ、ソフトウェア開発ライフサイクル全体にAIの能力を組み込むことを目的とした手法です。
特定タスクをAIで補助する「AI-assisted開発」と、ユーザー要件から完全自動でアプリを生成する「AI-autonomous開発」の2つの既存のアプローチと比べ、AI-DLCはAIにプランの作成や修正、実行を任せ、それらを人がレビューすることで、開発速度と品質の両立を実現するアプローチのようです。
AI-DLCの3フェーズ

ソフトウェア開発は以下の3つのフェーズで行われると紹介されました:
Inception(計画) AIがビジネス意図を詳細な要件、ストーリー、作業単位に変換します。「Mob Elaboration」と呼ばれる手法で、チーム全体がAIの質問と提案を積極的に検証するとのことです。
Construction(構築) Inceptionフェーズで検証されたコンテキストを使用し、AIが論理アーキテクチャ、ドメインモデル、コード、テストを提案します。「Mob Construction」でチームが技術的決定やアーキテクチャの選択について即座に明確化させます。
Operation(運用) AIが前のフェーズから蓄積されたコンテキストを適用し、Infrastructure as Codeとデプロイメントを管理します。
Kiro
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Kiroは「プロトタイプからプロダクションまで」を実現することを目指すAgentic IDEとして紹介されました。
従来のプロンプト駆動型の「Vibe Coding」では、コードを素早く生成できる反面、本番環境への移行時に「AIがどんな前提で実装したのか」「なぜこのアーキテクチャを選んだのか」といった疑問に直面するという課題が指摘されていました。Kiroは仕様書駆動開発によってこの課題を解決しようとしているとのことです。
仕様書駆動開発の3ステップ
Kiroは機能開発を3つのフェーズに分解し、それぞれをMarkdownファイルとして管理します:
1. requirements.md(要件定義)
ユーザーストーリーと受け入れ基準を**EARS記法(Easy Approach to Requirements Syntax)**で構造化。この記法により、エッジケースまで含めてAIの前提を明示的にします。
2. design.md(技術設計)
要件を技術アーキテクチャに変換し、データフロー図、TypeScriptインターフェース、データベーススキーマ、APIエンドポイントなどを文書化。要件の明確化に関する長い往復のやり取りが不要になります。
3. tasks.md(実装タスク)
作業を相互に関連する実装タスクのチェックリストに分解。各タスクにはユニットテスト、ローディング状態、統合テスト、レスポンシブデザイン、アクセシビリティが自動的に含まれます。
仕様とコードの継続的な同期
開発者はコードを書いてKiroに仕様更新を依頼するか、手動で仕様を更新してタスクをリフレッシュできるとのこと。これにより、ドキュメントがプロジェクトのライフサイクル全体を通じて正確性を保つことが期待されています。
さらに、生成されたコードの各行は元となる仕様にトレースバック可能です。これはコンプライアンス、コードレビュー、そしてAIの判断背景の理解に活用できる可能性があります。
最後に
今回のセミナーを通じて、「2025年以降、開発の主体がAIに移る」というのも現実味を帯びてきました。Kiroのような具体的なツールも登場しており、これは単なる将来予測ではなく、実際に動き始めている変化だと実感しました。
生成AIは「いつか使う技術」ではなく、「今、検討し始めるべき技術」であることは間違いないと思います。
まずはセミナーで得たことを小規模なプロジェクトで実験的に取り入れながら、自分たちの開発スタイルに合った活用方法を探っていきたいと思います。

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