Dify、AI活用カンファレンス「IF Con Tokyo 2025」に参加してきました

Dify、AI活用カンファレンス「IF Con Tokyo 2025」に参加してきました

最終更新日:2025年10月27日公開日:2025年10月27日
柳澤 大志
writer:柳澤 大志
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2025年10月24日、東京・ベルサール汐留にて開催されたAI活用カンファレンス「IF Con Tokyo 2025」に参加してきました。本イベントは、ノーコード・ローコードAI開発プラットフォーム「Dify」を提供する株式会社LangGeniusが主催し、日本のAI社会実装の加速を目指す重要な機会となりました。

カンファレンスギフトセット(引用:X @DifyJapan)
カンファレンスギフトセット(引用:X @DifyJapan)

なぜ今、IF Con Tokyo 2025だったのか

生成AIツールが乱立する中、多くの企業が「どのプラットフォームを選ぶべきか」という課題に直面しています。同時に、PoCは成功するものの本格実装に至らないという壁にぶつかっています。Difyは世界中で100万以上のアプリケーションが稼働し、日本国内でも大手企業での導入実績があるので、あらためてその最前線の実態を確かめるべく今回の参加を決めました。

生成AIやAWS・サーバーレスの深い知見を有している当社ではDify × Amazon Bedrockのハンズオンセミナーを提供しており、多くの企業がAI導入をスムーズに出来るよう支援しております。より多くの企業様のAI活用が進むよう今回は内容の一部を共有していきます。

一般社団法人Dify協会の設立発表

カンファレンスは、「一般社団法人Dify協会」の設立発表からスタートしました。協会設立の背景には、AI活用における知見が各社に分散し、車輪の再発明が繰り返されているという業界全体の課題がありました。

協会の役割として強調されていたのは、特定ベンダーに依存しない中立的な立場で、実践的な知見を共有するハブとなることです。企業、開発者、学術機関をつなぎ、それぞれが抱える実装上の課題を共同で解決していく仕組みづくりが目指されています。会員登録の方法や今後の活動方針についても詳しく説明があり、定期的な勉強会やベストプラクティスの共有、さらには会員企業間でのマッチング支援なども計画されているとのことでした。

特に印象的だったのは、「AIツールは増えているが、それをどう組織に定着させるかのノウハウが不足している」という指摘です。技術的な実装だけでなく、組織変革や人材育成といった側面も含めた総合的な支援を協会が担っていくという姿勢に共感を覚えました。

多角的な視点から見るAI活用のユースケース

午後のセッションでは、実に多様な立場からの発表が行われました。それぞれの視点から語られるDify活用の実例は、ツールの汎用性と同時に各業界特有の課題解決にどう貢献しているかを示すものでした。

通信・ITの大手企業からは、エンタープライズレベルでの導入における課題と解決策が共有されました。セキュリティガバナンスの確立、既存システムとの連携、そして何より現場への浸透をいかに進めたかという話は、同規模の組織で導入を検討する際の重要な参考になります。多くの企業「年間○○時間の工数削減を実現できた」と具体的な数字を示し、AI活用が単なる実験ではなく、確実にビジネス成果につながることを証明していました。

特に興味深かったのは、どの企業でもAI人材の育成や勉強会実施へ投資を惜しまない点でした。年間でも約20回の勉強会やコミュニティの立ち上げで参加者が5,000名など大手企業でもAI活用は大きく進んでいると実感しました。これだけの規模で運用できているということは、システムの安定性とスケーラビリティが実証されていることを意味します。

ある企業からは「ノーコードながら高度なAI機能を駆使したエージェント開発ができる点が魅力」という評価があり、実際に迅速なデプロイとシンプルな操作性により、初めて利用する方でも扱いやすいという言葉が印象的でした。これは、AI開発を一部の専門家だけでなく、現場の担当者にも開放する「AIエージェントの市民開発」という考え方を体現しています。

カンファレンス中の様子(投影内容はモザイク処理しております)
カンファレンス中の様子(投影内容はモザイク処理しております)

会場の雰囲気

各セッション後の質疑応答では、大手事業会社やSIerのAI事業・活用推進者から実務的な質問が次々と挙がりました。「社内展開で最も苦労した点は何か」「セキュリティ監査にはどう対応したのか」といった、現場ならではの具体的な疑問に対し、登壇者たちは自身の経験を率直に語っていました。

特に印象に残ったのは、定着化の部分です。

AIに関して抵抗感がある方に対して身近に感じてもらうため、各部署のユースケースに沿った形での勉強会、ハンズオンの実施。DX推進、Dify担当者が現場へ足を運び実際の声を聴いて使いやすいアプリの構築や実際の現場でもすぐ作成できるように直接の指導を行っているなど各社多く工夫していた中、口をそろえて大事な点としていたのはUIUXの点です。

いくらいいアプリを構築できても直感的ではないと定着化まで時間がかかる、または最悪の場合は定着しないという点を懸念しています。正直UIUXを検討することなどは面倒な部分のひとつでありますが、手を抜くと後々でより時間やコストが跳ね返ってくると言います。

Difyの実力を見極める

一日を通じて見えてきたDifyの導入理由は、「プラットフォーム」としての完成度の高さでした。エージェントワークフローからRAGパイプラインまで、コードを書くことなくGUIベースで直感的にAIアプリケーションを作成できる設計は、技術者だけでなく現場の業務担当者にもAI開発の門戸を開くものです。

ドラッグ&ドロップの操作で高度なワークフローを数分で構築できるという点は、非常に多くの企業の参入ハードルを下げていると感じました。Dify導入の決定用要因として共有性の高さと語っている登壇者がおりました。共有がスムーズにいくこのスピード感は、アジャイルな開発サイクルを回す上で大きなアドバンテージとなります。

また、多様なLLMとの連携が可能な点も見逃せません。OpenAI、Anthropic、Google、さらにはオープンソースのモデルまで、状況に応じて最適なモデルを選択できる柔軟性は、特定のベンダーにロックインされるリスクを軽減します。モデル間の切り替えも設定画面で選ぶだけで、ワークフローの変更は不要という点も実用性を高める要素だと感じております。

これからのAI活用に求められること

今回のカンファレンスを通じて痛感したのは、AI活用において技術的な知識だけでは不十分だということです。もちろん、生成AIやノーコード開発ツールを使いこなす基礎的なスキルは必要です。しかし、それ以上に重要なのは、PoCで終わらせず実装まで持っていく推進力、組織内の関係者を巻き込むコミュニケーション力、そして変化を楽しみながら学び続ける姿勢だと感じました。

技術は比較的誰でもアクセスできる時代になってきています。差がつくのは、その技術をどう業務に落とし込むかという実装力にあると考えます。技術の進化スピードに合わせて、私たち自身も継続的に学び、適応していく必要があると改めて感じることが出来ました。

当社においても、生成AIの積極的な活用やお客様への支援は始まっておりますが、次のステージとして求められるのは、単にツールを使う・導入することではなく、業務プロセス全体を見直し、データの流れを最適化し、現場の摩擦を取り除いていく支援をすることです。そのためには、技術トレンドを追うだけでなく、それをどう事業価値に変えるかという視点が不可欠だと改めて認識しました。

まとめ

今回のIF Con Tokyo 2025参加を通じて、Difyが単なる流行のツールではなく、実務に耐えうる本格的なAI開発プラットフォームであることが再確認できました。すでに大手企業での導入実績があり、具体的な成果が数字で示されている点は、導入検討において大きな判断材料となります。

特に重要だと感じたのは、Dify協会という業界横断的なコミュニティが形成されつつあることです。AI活用の課題は技術だけでなく、組織文化や業務プロセスにも及びます。そうした複合的な課題に対し、業界全体で知見を共有し、共に解決していく仕組みができつつあることは、今後のAI社会実装を加速させる重要な基盤になります。

今回学んだ実装プロセスや運用ノウハウ、そして得られたつながりを活かし、当社でもDifyを活用したAI実装の具体化を進めていきたいと思います。生成AIが当たり前の道具になった今、次に求められるのは、それをいかに業務に組み込み、実際の価値を生み出していくかです。IF Con Tokyo 2025は、その道筋を示してくれる貴重な機会となりました。

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