【セミナー参加レポート】生成AI開発プラットフォーム「Dify」の可能性を探る!AWS主催イベントに参加しました

最終更新日:2025年12月24日公開日:2025年12月24日
森木 李甫
writer:森木 李甫
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セミナーの概要と参加背景

2025年11月21日、AWSが主催する「Dify Enterprise on AWS」セミナーに参加してきました。

現在、弊社ではDifyのアドバイザリー支援を行っており、私自身もそのプロジェクトを担当しています。クライアント様により良い提案ができるよう知見を深めたいと思い、今回のセミナーに参加しました。

Difyの有料プラン「Enterprise」の新機能やAWS上での構築方法、そして月間2,300名規模で活用するリコー様の実践事例まで、クライアント支援に活かせる学びが多くありましたのでご紹介します。


なぜ今「Dify」が注目されているのか?

皆さんは「Dify」をご存知でしょうか?

Difyは、ChatGPTやClaudeなどの生成AIを活用したアプリケーションを、ノーコード・ローコードで開発できるプラットフォームです。エンジニアでなくても、業務用AIチャットボットやワークフローを構築できることから、企業での導入が進んでいます。

Difyには大きく分けてクラウドサービス(Dify Cloud)とセルフホスト版の2つの提供形態があります。セルフホスト版には無料のCommunity版(OSS版)と有料のPremium、Enterprise版があります。Enterprise版ではSSO(シングルサインオン)やマルチワークスペースなど、企業利用に必要なセキュリティ・ガバナンス機能が提供されています。

今回のセミナーでは、Difyの最新動向と実践的な活用方法について、様々な角度から解説していただきました。


セミナーで学んだ3つのポイント

ポイント① Enterprise版の新機能でセキュリティが大幅強化

Dify Enterprise版では、企業利用に欠かせないセキュリティ機能が充実しています。

特に印象的だったのは、プラグイン認証管理機能です。Community版では各ユーザーが自由にAPIキーを設定できるため、「誰がどのAPIキーを使っているか把握できない」「退職者のAPIキーが残り続ける」といったリスクがありました。

Enterprise版では、管理者がAPIキーを一元管理し、特定のワークスペースでのAPIキー追加を制限できるようになっています。

「エンタープライズの認証管理機能を使えば、どのワークスペースでどのAPIを使っていいか、細かく制御できるようになります」 (登壇者様コメント)

クライアント支援の視点: セキュリティ要件が厳しい企業様には、Community版ではなくEnterprise版を提案すべきだと改めて感じました。APIキーの管理だけでなく、SSO連携による認証基盤の統合も、情報システム部門の負荷軽減につながります。

ポイント② Snowflakeプラグインでデータ活用が身近に

セミナーで実演されたSnowflake連携のデモは、非常に印象的でした。

従来、社内データベースからデータを取得するには、IT部門への依頼やSQLの知識が必要でした。しかし、DifyのSnowflakeプラグインを使えば、自然言語で質問するだけでAIがSQLを自動生成し、データを取得してくれます。

デモでは「1995年に公開された映画の中で、評価の平均点が高い順にトップ10のタイトルとジャンルを教えてください」という質問から、複数テーブルを結合する複雑なSQLが自動生成される様子が紹介されました。

「SQLを書けない担当者でも、セルフサービスでデータ活用が可能になります。IT部門の負荷軽減にもつながりますね」 (登壇者様コメント)

クライアント支援の視点: Snowflakeを導入済みのクライアント様には、ぜひこの連携をご紹介したいです。「現場担当者がIT部門に依頼せずにデータを取得できる」という価値は、DX推進の大きな一歩になると思います。

ポイント③ リコー様の実践事例から学ぶ「推進のコツ」

最も参考になったのは、リコー様の社内実践事例です。月間約2,300名が利用し、469のワークスペース、5,806のアプリが作成されているとのこと。月間約7万回のワークフロー実行、約21億トークンを使用しているそうです。

リコー様が大切にしているのは、COEによる「やる場・やる気・やる腕」の3つの観点からの推進体制です。

やる場(活動できる環境)

  • 会社の認証基盤と連携したEnterprise環境の整備
  • 業務目的ごとにワークスペースを分離
  • モデルプロバイダー設定済みの環境を払い出し、すぐにRAGアプリ開発が可能
  • 社内ポータル(Dify社内実践環境運用サイト)の設置
  • セルフホスト版のCommunity版環境も別途用意し、最新機能を先行検証

やる気(活動がわかる仕組み)

  • 約1,000名が参加する社内発表会で事例を共有
  • 「1人1個Dify」キャンペーンで身近な課題解決を促進
  • 利用状況の見える化ダッシュボードで、どの部門がどう活用しているか可視化

やる腕(スキル向上)

  • プロセスDX人材の認定制度を整備(FY26からDifyスキルも追加予定)

「市民開発者が”安心してアクセルを踏める”環境を整備しつつ、自律的な活動を厳しくしすぎない、オープンな形で推進・展開」という考え方が印象的でした。

クライアント支援の視点: 「ツールを導入して終わり」ではなく、社内への定着支援までをセットで提案することの重要性を再認識しました。リコー様のCOE体制は、クライアント様への推進支援のモデルケースとしてご紹介できそうです。


セミナーを終えて感じたこと

日頃からDifyのアドバイザリー支援を行う中で、今回のセミナーを通じてEnterprise版ならではの価値を深く理解することができました。特に、リコー様のような月間2,300名規模での運用事例は、クライアント様への提案に直結する貴重な情報でした。

特に、マルチワークスペース機能は部門ごとにデータを分離できるため、機密データを扱う部門がある企業様には強くおすすめしたいポイントです。

また、リコー様の事例にあった「Community版とEnterprise版の併用運用」は、Difyの進化が早い中で安定性と最新機能のキャッチアップを両立できる良い運用方法だと感じました。Community版で新機能を先行検証し、Enterprise版に反映されたタイミングで本番展開するという考え方は、クライアント様にもご提案していきたいです。


まとめ

生成AIの活用が当たり前になりつつある今、企業ではセキュリティやガバナンスを考慮した運用が求められています。Dify Enterpriseは、そうした企業の要件を満たしながら、柔軟なAI活用を実現できるプランだと感じました。 今回学んだ内容は、現在担当しているアドバイザリー支援プロジェクトにしっかり活かしていきたいと思います!

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