AWS Japan AI Agent Day 2025 参加レポート「生成AIが仕事を担う時代」に向けて、私たちが走る"長期戦"マラソンとは?

最終更新日:2025年12月26日公開日:2025年12月26日
日向野 理博
writer:日向野 理博
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こんにちは!Ragate株式会社の日向野と申します! 突然ですが「AI Agent」ってご存知ですか?

私は2025年10月24日(金)、AWS主催のオンラインウェビナー「AWS Japan AI Agent Day 2025」に参加しました。

このイベントで一貫して語られていたのは、「生成AI(ChatGPTのような技術)をどう活用するか」という問いが、「生成AIにどこまで仕事を任せるか」という、より大きな問いへとシフトしているという未来でした。

このブログでは、普段AI Agentを触らない方にも伝わるよう、イベントで学んだ「AI Agent」の概要や「AI Agent」が実現する未来の働き方と長期的な戦略についてお話します。

AI Agentとは?

イベントの冒頭で語られたキーワードが「AI Agent」。

これは“人の代わりに考え、判断し、行動するAI”を指します。

Gartnerによれば、2028年までに日常業務の意思決定の多くがAIエージェントを通じて実行されるようになるとのこと。

企業が競争力を維持するには、AIを「使う」だけでなく「共に働く」時代に入っています。

「AIアシスタント」から「AI Agent」へ。仕事の主体が逆転する未来

生成AIの進化は非常に速いですが、イベントでは、その進化の方向性が「人間を支援するツール」から「人間から仕事を任されるAgent(代理人)」へと向かっていることが示されました。

過去に歩んできたAIの進化のステップ

【ポイント】

これまでのAIは、人間が「計画」し、必要な時にAIにアドバイスを求める使い方でした。

しかし、AI Agentの時代(2025年以降)は、Agentが主体的に「計画」し、実行し、必要な時に人間にアドバイスを求めるというように、仕事の主体が逆転していきます。

生成AI活用は短期的なトレンドではなく「長期戦」のマラソン

生成AIの技術は「5~10年超」という長期視点で継続的に取り組むべき「長期戦」であり、マラソンに例えられます。

マラソンを完走し、良い結果を出すためには、「コンディションを整える」「怪我の予防(リスク対策)」「レース全体の計画」が必要です。 AWSは、企業の生成AI導入プロセスを3つのステップで提示し、この長期戦をどう勝ち抜くかを提案しています。

ただし、多くの企業がStep1とStep2の間で足踏みしてしまう現状があります。 この「足踏み」を乗り越えAIがタスクを自律的に実行するLevel 3以上へ進むには「長期的なゴール設定」と「組織横断的なチーム」が不可欠なのです。

AWSが提供する、長期戦を勝ち抜くための「装備」

AWSは、この長期戦を成功させるために、各ステップで活用できる包括的なサービスやプログラムを提供しています。

Step 1「試す」ための安全な実験環境【Generative AI Use Cases (GenU)】

プロンプト(AIへの指示)の書き方を覚えなくても、チャット、RAG(外部知識連携)、要約など、頻繁に使う生成AIの「鉄板ユースケース」をすぐに試せるアプリケーションです。

Step 2「任せる」ためのセキュリティと機能【Amazon Bedrock AgentCore】

AI Agentに仕事を任せる上で最大のリスクは、不適切な回答(ハルシネーション)や、意図しない行動による損害です。 AIの出力は「自社サービスの運用」として、企業が責任を負うことになります。

そこで重要になるのが、AWSが提供する「AgentCore」という機能群です。

Amazon Bedrock AgentCoreとは?

Amazon Bedrock AgentCoreは、「AI Agent」という、AIに仕事を任せて、自律的に動いてもらうための機能や仕組みを一式で提供してくれるAWSのサービスです。 より噛み砕いて表現すると、AIをチームメンバーとして働かせるための職場セットみたいなものになります。

Agent(AIの頭脳)が安全かつ確実に行動するために必要な「ガードレール(暴走防止)」「認証・認可」「ツールの管理」「実行環境」など、中核機能以外の安全な土台をAWS側で提供します。

例えると、AIが仕事をこなせるように、机(動く場所)、名札(権限)、メモ帳(記憶)、電話(外部とのやりとり)を用意するようなイメージです。

これにより、開発者は煩雑なセキュリティや管理機能の構築から解放され、AI Agentがお客様のビジネス課題を解決するためのロジックの開発に集中できるようになります。

AgentCore Runtime

AgentCore Runtimeとは、AI Agentを動かせる環境のことです。

例えると、AI社員が会社で実際に働くデスクのようなものです。

まずはこのデスクをAWS上で用意し、そこにAIの仕事道具を置いていきます。

特徴としては、クラウド上の安全・スケーラブルさ、セッション隔離、長時間実行(最大8時間)をサポートしています。

また、HTTPや「Model Context Protocol(MCP)」など複数プロトコルに対応しています。

AgentCore Identity

AIが「どの部屋に入っていいか」「どんな資料を見ていいか」を決めるアクセス権限の管理を行う機能です。

AIが勝手に他部署の機密ファイルを触らないように、見ていい範囲をIAMロールという仕組みで設定します。

特徴としては、AWS リソースや GitHub、Google、Salesforce、Slackといった 3rd party ツールへの安全なアクセスを提供します。

また、ユーザー認証(OAuth 2.0 等)や IAM(AWS 認証)を使った「誰が/どのエージェントが」アクセスできるかの制御を行います。

AgentCore Memory

AI Agentが短期的・長期的に「何を覚えておくか」を管理する機能です。

サーバーレスの仕組みで自動的にスケールします。

特徴としては、Webアプリ側でユーザーIDと結びつけたセッションデータを、Memory に保存できます。 また、ユーザーが以前に何を尋ねたか/どんな選択をしたかを保存し、次回の会話で参照します。

AgentCore Gateway

AIが他の部署(APIや外部サービス)に連絡を取るための窓口です。

例えば、「在庫データください」「天気を調べて」といった依頼をこの窓口経由で送ります。

特徴としては、複数のツールソースをひとつ のインターフェースに統合しており、API、Lambda 関数、その他 既存サービスを MCP 対応 ツールに変換できます。

AgentCore Code Interpreter

エージェントが生成したプログラム(Python/TypeScript/JavaScriptなど)を安全な環境で実行する機能です。

例えば、「ユーザーがCSVをアップロードして、エージェントにこのデータを分析してと頼む」ような機能を作るならこのモジュールを使うと便利です。

特徴としては、一般的なライブラリーが事前 インストールされた JavaScript、TypeScript、Python の構築済みでクイックスタートすることができます。

また、機密データを露出することなく内部データソースにセキュアにアクセスします。

Step 3「広め高める」ための戦略サポート【ML Enablement Workshop (MLEW)】

企業のIT部門と事業部門、さらには経営層が組織横断的に集まり、Amazonの製品開発プロセス(Working Backwards)を実践しながら、生成AIを使った具体的なビジネスアイデアを出し、1-3ヶ月で成果を出すプロジェクトをキックオフするためのワークショップを実施することができます。

まとめ

走り続けられる組織が、生成AI時代の勝者となる。

AWS AI Agent Day 2025で示されたのは、AI Agentが仕事を担う時代が目前に迫っているということです。 この長期戦において、一時的に先頭に立つことよりも「ゴールに向かい走り続けられる組織作り」こそが鍵となります。

弊社は、最新のAI Agent技術を単に「使う」だけでなく、セキュリティや長期戦略を理解し、「お客様のビジネスに本当に必要なシステム」を設計・開発するコンサルティングとエンジニアリングを提供します。 新しい技術を体系的に学び、ビジネスの根幹に関わる仕事に挑戦したい方、ぜひ一緒にこのマラソンを走りましょう。

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