チャレンジ×リスク×リターンの思考法──目先の損得だけで人生を決めてはいけない

チャレンジ×リスク×リターンの思考法──目先の損得だけで人生を決めてはいけない

最終更新日:2025年11月01日公開日:2025年11月01日
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新しいことに挑戦するとき、つい「得するか損するか」だけで判断していませんか。

実は、若い時期のチャレンジは、目先の金銭的なリターンだけで測ってはいけません。20代でチャレンジした失敗が、30代で大きな成功の土台になることもあれば、安全ばかり選んできた結果、40代で身動きが取れなくなることもあります。

今回は、僕が起業から8年間で学んだ「チャレンジ×リスク×リターン」の思考法について書いていきます。ハンターハンター風のタイトルにしてみましたが、内容は至って真面目です。

チャレンジを「定量的なリターン」だけで測ってはいけない

多くの人が、新しい挑戦を前にしたとき「これをやって、どれくらい儲かるのか」を最初に考えます。これ自体は間違いではありません。ただ、それだけで判断するのは危険です。

たとえば、僕が23歳で起業したとき、目先の収入で考えれば会社員を続けたほうが圧倒的に安定していました。起業1年目の収入なんて、お世辞にも良いとは言えませんでした。でも、その後の8年間で得たものは金額では測れません。

経営判断を何百回と繰り返し、採用や育成、戦略策定、資金繰り、営業、プロダクト開発と、すべてを自分で回してきた経験は、どんなMBAコースでも学べない実践知です。もし当時、「月給30万円 vs 起業後の不安定収入」という定量比較だけしていたら、今の自分はいませんでした。

チャレンジのリターンには、目に見える金銭的なものと、目に見えないスキル・経験・人脈・視野の広がりがあります。特に20代〜30代は後者の価値が極めて大きいのに、それを見落としてしまう人が多いのです。

若ければ若いほど、中長期のリターンを重んじるべし

人生は長いです。そして、若い時期ほど「時間」という最大の資産を持っています。

仮に25歳でチャレンジして失敗したとしても、30歳までに5年間の猶予があります。その5年で得た学びを次に活かせば、30代で大きく飛躍できる可能性があります。一方、40歳で初めて大きなチャレンジをして失敗すると、立て直しに必要な時間がどうしても限られてきます。

僕自身、20代はワーカーホリック気味に働き、休みなく事業に没頭しました。様々な交友関係や人付き合いを捨てましたが、この時期に積み上げた技術力と事業経験が、今のRagateの基盤になっています。サーバーレス技術の黎明期から案件を積み重ね、AWS Top Engineersに選ばれたのも、20代の集中投資があったからです。

もちろん、無理をしすぎて体を壊したら元も子もありません。ただ、若い時期は「回復力」も「学習速度」も高いので、多少の無茶が効くのも事実です。この時期にどれだけ自分に投資できるかが、30代以降の選択肢の広さを決めます。

チャレンジと失敗の回数は比例する──でも時間を浪費してはいけない

チャレンジすれば失敗します。これは避けられません。そして、失敗の数だけ人は強くなります。

僕もこれまで数え切れないほど失敗してきました。新規事業を立ち上げて数ヶ月で畳んだこともあれば、採用で見誤って組織が混乱したこともあります。でも、その失敗から学んだことが次の判断精度を上げてくれました。

ただし、ここで重要なのは「失敗から学ぶこと」であって、「無意味に失敗を繰り返すこと」ではありません。同じ失敗を何度も繰り返すのは、単なる時間の浪費です。

失敗したら必ず振り返りをして、何が悪かったのか、次はどう改善するのかを言語化する癖をつけるべきです。僕は失敗案件があるたびに、社内で「なぜ失敗したのか」を共有し、再発防止策を議論します。これをやるかやらないかで、失敗の価値が10倍変わります。

また、失敗には「早く失敗する」ことも重要です。半年悩んで動かないより、1ヶ月で小さく試して失敗したほうが圧倒的に効率的です。特にスタートアップや新規事業では、スピードが命です。失敗するなら早く失敗して、次に進むべきです。

成功は逆算できない、でも失敗は逆算できる

ここが一番重要なポイントかもしれません。

成功の道筋は、事前に完璧に描けません。どんなに綿密な事業計画を立てても、市場は予想外の動きをしますし、競合も変化します。AWSのサーバーレスが今ほど普及するとは、10年前には誰も確信できませんでした。僕たちも「これが絶対成功する」と確信して始めたわけではなく、試行錯誤の中で今の形になりました。

つまり、成功は「アート」に近いものです。偶然の要素、タイミング、運も絡んできます。だから、成功を逆算して「この通りにやれば成功する」という完璧な設計図は存在しません。

一方で、失敗は逆算できます。過去の失敗事例を見れば、「こうすると失敗する」というパターンが見えてきます。資金繰りを無視して拡大した企業、市場調査をせずにプロダクトを作った事業、組織文化を軽視して採用を急いだ会社。失敗の共通点は驚くほど似ています。

だからこそ、僕は「失敗の逆算」を重視しています。新しいチャレンジをするときは、「これをやったら失敗するだろうな」というパターンをリストアップして、それを避ける設計をします。これだけで、成功確率は格段に上がります。

リスクとリターンのバランスをどう取るか

最後に、リスクとリターンのバランスについて触れておきます。

チャレンジにはリスクがつきものですが、「リスクを取らない」ことも実は大きなリスクです。変化の激しい時代に、安全ばかり選んでいると、気づいたときには市場価値が下がっているかもしれません。

ただし、無謀なチャレンジは避けるべきです。「全財産を賭ける」「家族を犠牲にする」といった極端なリスクは、失敗したときの代償が大きすぎます。僕が起業したときも、最低限の生活費は確保しつつ、小さく始めました。

理想的なのは、「失敗しても致命傷にはならないが、成功したら大きなリターンが得られる」という範囲でチャレンジすることです。そして、そのチャレンジから得た学びを次に活かしていけば、徐々にリスク許容度も上がっていきます。

まとめ

チャレンジを評価するとき、目先の金銭的リターンだけで判断してはいけません。特に若い時期は、中長期で得られるスキルや経験の価値を重視すべきです。

失敗は避けられませんが、失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないことが重要です。そして、成功は逆算できませんが、失敗は逆算できるので、失敗パターンを避ける設計を意識しましょう。

人生は一度きりです。安全ばかり選んで後悔するより、計算されたチャレンジを重ねて、自分の可能性を広げていきましょう。

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