ドメインカットと技術カット、どちらを選ぶべきか
クライアント支援企業が事業を展開する際、大きく分けて2つのアプローチがあります。
一つは「ドメインカット」。特定の業界や業務領域に特化し、その分野における深い知見をもとに支援を行うスタイルです。もう一つは「技術カット」。特定の技術やプラットフォームに特化し、その技術的専門性をもとに課題解決を図るアプローチですね。
私が最近考えているのは、どのタイミングで顧客と出会うかによって、最適なアプローチが変わってくるということです。
超上流工程、つまり「何が課題なのか」「どう解決すべきか」という段階から関わる場合は、ドメインカットが有効です。業界特有の課題や商習慣を理解していなければ、そもそも適切な課題設定ができませんから。
一方で、ある程度「解決したい課題」が明確になっている状態から支援をスタートする場合は、技術カットでも十分に価値を発揮できます。「この技術で解決できます」というアプローチが刺さるわけですね。
SMB市場で起きている変化
ただ、ここで見逃せないのがSMB市場で起きている大きな変化です。
近年、中小企業においても内製化の波が加速度的に進んでいます。以前なら外部に丸投げしていたシステム開発を、自社で内製する企業が増えているんです。
この変化には、いくつかの要因があります。クラウドサービスやノーコード・ローコードツールの普及、そして何より生成AIによるコーディング支援の登場です。
GitHub CopilotやCursor、その他の生成AIツールを活用すれば、エンジニアの生産性は飛躍的に向上します。経験の浅いエンジニアでも、AIのサポートを受けながら、それなりのシステムを構築できる時代になってきました。
こうした環境下で、従来のような「開発だけやります」という事業モデルは、正直かなり厳しくなってきていると感じています。
技術カットで生き残るために必要なこと
もし技術カットで事業展開していくなら、相応に先端技術を押さえる必要性があります。
内製化が進んでいる企業に対して価値を提供するには、その企業が自社では実現できない技術的アドバンテージを持っていなければなりません。単なる開発リソースとしてではなく、「この技術は私たちにしか提供できない」という差別化ポイントが必須です。
AWSのサーバーレス技術、生成AIの実装、最新のフロントエンド技術、セキュリティ対策など。常に学習を続け、技術のフロンティアを走り続ける覚悟が求められます。
Ragateが選んだ道
こうした市場の変化を見据えて、Ragateは昨年から早々に舵を切りました。
私たちが選んだのは、超上流工程からの支援を垂直統合するというアプローチです。
顧客の課題解決を起点に、戦略策定から要件定義、設計、開発、運用まで、一気通貫で支援できる体制を構築してきました。いわば、ドメインカットと技術カットの両方を組み合わせた形ですね。
そのために、組織としてもさまざまな取り組みを進めてきました。
MBAスキルの醸成 | 経営戦略やマーケティング、財務といったビジネス知識を学習し、 顧客の経営課題を理解できる力を養成。 |
|---|---|
先端技術の学習文化 | AWS、生成AI、最新の開発手法など、 常に技術のアップデートを続ける組織文化の構築。 |
生成AIのいち早いキャッチアップ | ChatGPTが登場した直後から積極的に活用し、 顧客への提案やプロダクト開発に統合。 |
こうした取り組みのおかげで、内製化や生成AIの波に押されることなく、むしろ私たちの輝ける新たなポジションを獲得することができました。
SI・コンサルファームに求められる変化
興味深いのは、最近SIもコンサルファームも、大きな変化を求められているということです。
以前、コンサルティングファームは「絵に描いた餅で終わる」と批判されることがありました。素晴らしい戦略を提案するものの、実行支援まではやらない。結果、企業内に実装する力がなく、何も変わらない、という問題です。
そこで近年のコンサルファームは、戦略策定だけでなく実行支援まで手掛けるようになりました。いわば「川下」への進出ですね。
一方、SI企業には逆の動きが求められています。従来の開発中心の支援から、もっと「川上」、つまり戦略や企画の段階から関わることが期待されています。
こうした変化の中で、SIもコンサルファームも、顧客ニーズや社内リソースの変化に伴い、相応に四苦八苦しているのが良く感じ取れます。組織の構造、人材のスキルセット、評価制度、すべてを変えていかなければならないわけですから。
これからのクライアント支援企業のあり方
結局のところ、これからのクライアント支援企業に求められるのは、垂直統合の力だと考えています。
戦略から実装まで。ビジネスからテクノロジーまで。その両方を理解し、つなげられる力。
もちろん、すべてを自社でやる必要はありません。パートナーシップを活用しながら、顧客にとって最適な支援を提供できればいいんです。
大切なのは、顧客の本質的な課題を理解し、それを解決するための最適な手段を選択し、実行まで伴走できること。そのために必要な知識やスキル、ネットワークを持っていること。
市場は常に変化しています。内製化、生成AI、クラウド技術の進化。こうした変化を脅威と捉えるか、機会と捉えるか。
私たちRagateは、これらの変化を機会として捉え、新しい価値提供のあり方を模索し続けていきます。













