戦略とシステムを分断する時代は終わる。コンサルとSIの垂直統合が加速する理由

戦略とシステムを分断する時代は終わる。コンサルとSIの垂直統合が加速する理由

最終更新日:2025年10月19日公開日:2025年10月19日
XThreads

SI・コンサル業界の構造が大きな転換点を迎えています。これまで当たり前だった「戦略策定はコンサル、システム構築はSI」という分業体制が、顧客にとって最適な形なのか。

私たちRagateは早期から、戦略策定からシステム構築までを一気通貫で提供してきました。この選択が、これからの業界標準になると確信しています。

分断されたプロセスが生む構造的な問題

戦略を策定する企業と、それを実現するシステムを構築する企業が別々になっている。この業界構造は長年続いてきましたが、冷静に考えれば非常に非効率です。

まず、情報の伝達ロスが避けられません。コンサルティング会社が顧客と議論を重ねて策定した戦略を、SI企業に引き継ぐ過程で、必ず文脈や意図の一部が失われます。文書化された要件定義書だけでは、なぜその判断に至ったのか、どんな議論があったのかという背景までは伝わりきりません。

次に、責任の所在が曖昧になります。策定された戦略が実現できなかった場合、それは戦略自体に無理があったのか、実装の問題なのか。境界線が引かれているがゆえに、本質的な課題解決よりも責任の押し付け合いが発生するリスクがあります。

さらに、顧客側の負担も大きい。複数のベンダーとのコミュニケーション、プロジェクト間の調整、契約や予算管理の複雑化。これらはすべて顧客の時間とコストを消費します。

なぜ垂直統合が必然なのか

垂直統合とは、戦略策定からシステム構築、運用保守まで、価値提供のプロセス全体を一社で担う体制のことです。この形態が今後加速する理由は明確です。

第一に、デジタル技術の進化スピードが上がっています。クラウドサービス、生成AI、サーバーレスアーキテクチャなど、新しい技術が次々と登場する環境では、戦略と実装を切り離すことが現実的ではなくなっています。技術の可能性を理解していない戦略は机上の空論になりやすく、戦略の意図を理解していない実装は的外れになりがちです。

第二に、顧客の期待値が変化しています。企業のデジタル変革において、顧客が求めているのは「提案書」や「要件定義書」ではなく、実際に動くシステムと、それによって生まれるビジネス成果です。分断されたプロセスでは、最終的な成果に対する説明責任が曖昧になります。

第三に、スピードが競争優位の源泉になっています。戦略策定に半年、要件定義に三ヶ月、開発に一年というタイムラインでは、市場環境が変わってしまいます。戦略とシステムを同時並行で進められる体制が、変化への適応力を高めます。

戦略に責任を持たないコンサルの限界

従来型のコンサルティングモデルには、構造的な限界があります。それは、策定した戦略の実現可能性や成果に対して、最後まで責任を持たない仕組みになっていることです。

プロジェクトが提案書の納品で終わる場合、その戦略が本当に実行可能だったのか、期待した成果を生んだのかを検証する機会がありません。仮に実装段階で問題が発覚しても、「それは実装側の問題」として切り離されてしまいます。

顧客企業の担当者は、こうした構造に気づき始めています。高額なコンサルティングフィーを支払っても、結局は別のベンダーに同じ説明を繰り返し、調整に時間を取られる。この非効率性に対する違和感が、市場全体で高まっています。

合理的に考えれば、戦略を描いた人間が実装まで見届ける体制の方が、顧客にとって価値が高いことは明白です。

Ragateが実践してきた一気通貫アプローチ

私たちは早期から、この垂直統合モデルを実践してきました。顧客の経営課題をヒアリングし、現状分析を行い、デジタル戦略を策定する。そして、その戦略をAWSやサーバーレス技術を用いて実際に構築し、運用まで伴走する。このプロセスを一社で完結させることで、顧客に対して最終的な成果にコミットできる体制を築いています。

この一気通貫のアプローチには、いくつかの優位性があります。まず、戦略策定の段階から技術的な制約や可能性を織り込めます。実現不可能な戦略を描くことがなく、逆に技術の進化によって可能になった新しいアプローチを提案できます。

次に、実装段階で戦略の意図を正確に反映できます。なぜこの機能が必要なのか、どんな価値を生むべきなのかを、チーム全体が理解している状態で開発を進められます。細かな判断の積み重ねが、最終的な成果の質を大きく左右します。

さらに、フィードバックループが高速に回ります。実装してみて初めて分かる課題や、運用段階で見えてくる改善点を、すぐに戦略レベルにフィードバックできます。この反復プロセスが、顧客のビジネス成果を最大化します。

これからの業界標準

垂直統合は、これからの業界標準になるべきだと考えています。顧客視点で考えれば、その方が合理的だからです。

もちろん、すべてのプロジェクトで垂直統合が最適解とは限りません。大規模なシステム刷新では、複数のパートナー企業との協業が必要になる場面もあります。しかし、少なくとも中小企業のデジタル変革においては、戦略からシステム構築まで一社で担える体制が、スピードとコストの両面で優位性を持ちます。

すでに市場は動き始めています。大手コンサルティング会社が開発部門を強化し、SI企業が戦略コンサルティング機能を内製化する動きが加速しています。これは、顧客の期待値が変化していることの証左です。

私たちのような中小規模の企業にとっても、この変化はチャンスです。大企業のような組織の壁がない分、戦略と実装をシームレスに繋げやすい。顧客との距離が近い分、細かなニーズに応えやすい。この機動力が、これからの時代の競争優位になります。

最後に

戦略とシステムを分断する時代は終わりつつあります。顧客が求めているのは、美しい提案書ではなく、実際に動くシステムと、それによって生まれるビジネス成果です。

これからのパートナー企業に求められるのは、最後まで責任を持って伴走する姿勢です。戦略を描くだけではなく、それを実現し、成果を出すところまでコミットする。そんな企業が、顧客から選ばれる時代になっていくはずです。

Careerバナーconsultingバナー