なぜ10Gbps回線が必要だったのか
Ragateでは、メンバーの仕事において通信環境の高速化は必須だと考えています。これは私がエンジニア出身であり、営業で案件を獲得したらそれで終わりではないという考え方を持っているためです。
多くの企業では、営業部門が案件を取ってきて、それを開発部門に引き継ぎ、後は現場でなんとかしてもらう、という流れになりがちです。しかし私たちの仕事はそこからが本番です。顧客と約束したシステムの品質、納期、パフォーマンスを実現するためには、開発メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境が不可欠です。
その環境を構成する要素の中で、通信速度は極めて重要な位置を占めています。クラウド環境へのデプロイ、大容量のデータ転送、リモート環境との連携、ビデオ会議での画面共有など、日常業務のほぼすべてが通信速度に影響を受けるからです。
固定費は上がるが、見えないコストは大きく削減される
10Gbps回線の導入は、確かに固定費の増加を伴います。一般的な法人向け回線と比較すれば、月額コストは明らかに高くなります。しかし経営判断として重要なのは、見えるコストだけでなく、見えないコストも含めた総合的な評価です。
通信速度が遅いことで発生する見えないコストは、実は相当な規模になります。例えば、大容量ファイルのアップロードに10分かかるところが1分で済めば、1人あたり9分の時間が生まれます。これが1日に5回発生すれば45分、月20営業日なら15時間です。仮にメンバーが10人いれば月150時間、年間1800時間の削減になります。
さらに重要なのは、待ち時間によって発生する集中力の分断です。作業の途中で数分の待機が発生すると、人間はその間に別のことを考え始めます。そして元の作業に戻る際に、再び集中状態に入るまでに時間がかかります。この切り替えコストは、単純な待ち時間以上の生産性低下を引き起こします。
メンバーを支援するための環境整備
営業で顧客と約束したことをしっかりと果たせるように、メンバーを支援したいという想いから、通信環境への投資を決めました。これは単なる設備投資ではなく、チームへのメッセージでもあります。「会社は皆さんが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整える責任がある」というメッセージです。
10Gbps回線を導入するだけでは不十分です。その速度を実際に活用できるように、MacBookの貸与も行っています。さらに、有線LANポートを持たない機種を使用するメンバー向けには、10Gbpsに対応した有線LANアダプターも支給しました。回線速度がボトルネックにならないよう、エンドツーエンドで環境を整えることが重要だと考えています。
自分でHUB配線をやった理由
各机へのHUB配線は、実は私自身で行いました。18歳から20歳まで働いていた会社では、ハードウェアやネットワークの保守業務を担当していたので、その経験が活きて嬉しかったです。
経営者が自ら配線作業をすることに疑問を感じる人もいるかもしれません。しかし私は、この作業を通じて改めて実感したことがあります。それは、オフィスのネットワーク環境は単なる設備ではなく、チームの生産性を支える血管のような存在だということです。
配線ルートの設計、各デスクへの最適な配置、将来的な拡張性の確保など、実際に手を動かすことで見えてくる課題があります。外部業者に依頼することもできましたが、自分で理解し、最適な構成を考えることで、より良い環境を作ることができました。
エンジニア出身だからこその視点
私がエンジニア出身であることは、こうした判断に大きく影響しています。開発現場で働いた経験があるからこそ、通信速度が1秒遅れることの積み重ねが、どれだけストレスになり、生産性を低下させるかを理解しています。
多くの経営者は、目に見える成果物や売上には関心を持ちますが、それを生み出す過程の品質には注意が向きにくいものです。しかし実際には、開発環境の質が最終的なアウトプットの質を大きく左右します。顧客との約束を守るためには、約束を実現するための環境を整えることが経営者の責務だと考えています。
まとめ
10Gbps回線の導入は、固定費の増加というわかりやすいコストを伴います。しかしその投資によって削減される見えないコストは、はるかに大きいと実感しています。待ち時間の削減、集中力の維持、ストレスの軽減など、数字では測りにくい効果が確実に現れています。
営業が顧客と交わした約束を果たすのは、現場のメンバーです。そのメンバーが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることは、経営者としての重要な役割だと考えています。通信環境への投資は、その考え方を具現化した一つの形です。
これからも、メンバーが価値を生み出すために必要な環境への投資は惜しみません。それが結果的に、顧客への価値提供の質を高め、会社全体の成長につながると信じているからです。













