エンジニア出身であることの強み
経営者として顧客と向き合う中で、エンジニアとしての経験が最も活きるのは「提案の解像度」です。
技術的な実現可能性、工数の見積もり、リスクの所在、運用時の課題──これらを肌感覚で理解しているからこそ、顧客の課題に対して具体的で実効性のある提案ができます。抽象的な絵を描くのではなく、実装レベルまで落とし込んだ提案ができることは、エンジニア社長の大きなアドバンテージだと思っています。
例えば、顧客が「DXを推進したい」と相談してきたとき、営業トークとして「最新のクラウド技術で業務効率化を実現します」と語ることは誰にでもできます。でも、その企業の既存システムの構成や運用体制を理解した上で、どのアーキテクチャを採用すべきか、どのタイミングでサーバーレスに移行すべきか、どこまでマネージドサービスに任せるべきかを判断するには、技術の深い理解が必要です。
プログラミングに没頭していた日々
20代前半、僕はコードを書くことに夢中でした。学生時代のC言語から始まり、様々な言語やフレームワークに触れ、エラーと格闘しながら少しずつ成長していった日々は、楽しさと苦しさが同居していました。
深夜までデバッグに追われて心が折れそうになることもあれば、難解な問題を解決できたときの達成感もありました。コードレビューで指摘を受けて悔しい思いをしたこともあれば、自分が書いたプログラムが誰かの役に立っているという実感に喜びを覚えたこともあります。
今、経営者として顧客の前に立つとき、その頃の経験が僕の言葉に重みを与えてくれていると感じます。技術的な困難さを知っているからこそ、無理な納期や非現実的な要求に対してきちんと「No」を言えますし、逆に実現可能な範囲で最大限の価値を提供する方法を考え抜くことができます。
技術を正しく見極めて導入する責任
エンジニア社長として最も大切にしているのは、技術を正しく見極めて導入する姿勢です。
世の中には常に新しい技術やツールが登場し、それらが「革新的」「画期的」と喧伝されます。でも、すべての技術がすべての企業に適しているわけではありません。流行に飛びつくのではなく、顧客の課題、既存の技術スタック、チームの技術レベル、予算、運用体制などを総合的に判断した上で、最適な技術を選択する必要があります。
技術の本質を理解しているからこそ、その技術が解決できる課題と解決できない課題を見極められます。派手な機能やトレンドワードに惑わされず、顧客にとって本当に価値のある技術を提案できることは、エンジニア社長としての誇りです。
売上と顧客満足の両立
正直に言えば、営業出身の社長のほうが売上を伸ばすスピードは速いと思います。プレゼンテーションが上手く、人を惹きつける話術に長け、契約を取ることに特化したスキルを持っているからです。
ただし、売上が伸びることと顧客満足が持続することは別の話です。過度な期待を抱かせて契約を取ったものの、提供されるサービスや製品の品質が伴っていなければ、リピーターは生まれません。最初の取引で終わってしまい、長期的な関係を築くことができないケースも多く見てきました。
もちろん、優れた技術責任者がそばにいて、営業と技術のバランスを取れている組織は別です。でも、経営者自身が技術を深く理解していれば、提案段階から実装、運用までの一貫した品質を担保しやすくなります。
僕たちRagateが大切にしているのは、短期的な売上よりも長期的な信頼関係です。一度取引をした顧客が次も僕たちを選んでくれる、そして他の企業に紹介してくれる──そういう関係性を築くことが、持続的な成長につながると信じています。
エンジニア社長としての誇り
エンジニアとしてコードを書いていた頃の経験は、今の経営判断のすべてに活きています。技術の難しさを知っているから顧客に誠実でいられますし、技術の可能性を信じているから未来志向の提案ができます。
エンジニア社長であることは、僕にとって誇りです。これからも技術への深い理解を軸に、顧客の課題解決に真摯に向き合い続けていきたいと思っています。













