AI開発における属人化の課題
現在のAI開発では、プロンプトエンジニアリングやエコシステムとの接続において、開発者ごとに独自のノウハウが蓄積され、秘伝のタレ化が進んでいる。MCPの発展によってエコシステムは着実に広がっているが、それらを現場で活用できているかといえば、まだまだ道半ばだ。
この現象はOSSの世界と似ている。NPMには優れたモジュールが数多く存在するが、結局はエンジニアの好みや裁量によって属人的な開発が行われている現場が多い。エコシステムやコンポーネントが発展しても、それらを適材適所で使いこなさなければ現場の生産性は上がらない。単にツールが増えただけでは意味がなく、それをどう使うかが重要になる。
AI開発の二極化
この先、AI開発は二極化すると考えている。
一つ目は、ミッションクリティカルな処理におけるシステム固有のAIワークフロー構築だ。基幹システムなどでは、Difyやn8nなどを使ってある程度冪等性のあるワークフローを管理・実行する必要がある。これは従来型の開発に近く、確実性や再現性が求められる領域だ。
二つ目は、エージェント開発だ。エージェントは自立的にMCPなどのエコシス
テムやナレッジへのクエリーを実行し、ユーザーのタスクに対して自らタスクを設計して実行する。この領域では、AIが自律的に判断し行動する能力が求められる。
Claude Skillsの革新性
Claude Skillsは、まさにこのエージェント開発に向けた機能だ。エージェントがタスクを実行する際の作業要領や思考をパッケージ化してエージェントに渡すことができる。これにより、自立志向の手間を省けるためトークン数が節約でき、組織内でAIの思考回路を共有することも可能になる。
個人的には、マーケットプレイスなどでClaude Skillsが配布されることを期待している。これは、MoEアーキテクチャーにおける各専門家に対する外付けの記憶のようなものだと捉えている。もし認識が間違っていたら申し訳ないが、そういった印象を持っている。
SI・コンサル企業としての使命
SI・コンサル企業としての使命は、このエージェントをいかに市場に浸透させるかだと考えている。なぜなら、エージェント開発のほうが開発工数が遥かに小さいからだ。
エージェント開発では、エコシステムを調達してMCPとして接続し、タスクの内容に応じてClaude Skillsを呼び出すという2点を重点的に強化するだけで、ある程度の精度の出力を期待できる。もちろん運用時には、LLM自体のアップデートやデータ基盤のセキュリティ担保など別途対応が必要になるが、従来のワークフロー型開発と比較すれば工数は大幅に削減できる。
この先の時代は、エージェントによる素早いAX・CXへの統合が求められてくるのではないか。顧客体験や従業員体験を向上させるために、迅速にAIを統合できる体制を整えることが競争優位性につながる。SI・コンサル企業は、この変化を見据えて自社のケイパビリティを再構築する必要がある。
エージェント時代への準備
エージェント開発が主流になる時代に向けて、私たちが準備すべきことは何か。まず、MCPエコシステムへの理解を深め、活用できるコンポーネントを継続的にキャッチアップすることだ。次に、Claude Skillsのようなエージェント向け機能の活用方法を習得し、組織内でナレッジを共有する仕組みを構築することだ。
そして最も重要なのは、顧客の課題をエージェントでどう解決するかという視点を持つことだ。従来のワークフロー型開発とエージェント開発のどちらが適しているかを見極め、最適な提案をする能力が求められる。
AI開発の二極化は避けられない流れだ。この変化を捉え、顧客に価値を提供し続けるために、私たちも進化していく必要がある。