はじめに――なぜマルチエージェント体制が必要だったのか
私たちRagateは、AIを組織の「実働部隊」として活用することを継続的に模索してきました。OpenClawの導入後、次の課題が見えてきました。
- AIエージェントに複雑なタスクを投げると、コンテキストが膨らみすぎて精度が落ちる
- 実装・調査・レビューをひとつのエージェントがすべて担うと、処理が直列になって遅い
- 「人間がすべての指示を出す」モデルでは、AI活用のスケールに限界がある
そこで注目したのが、OpenClaw(司令塔)× Claude Code on Amazon Bedrock(実装担当)という組み合わせです。AWSが公式に推奨するエンタープライズ向けのClaude Codeデプロイパターンを参考に、Ragateの開発フローに合わせた体制を構築しました。

構成の全体像
今回構築したマルチエージェント体制のコンポーネントは以下の通りです。
- OpenClaw(オーケストレーター):タスクを受け取り、分解・振り分けを担当。メモリ管理と進捗把握も担う
- Claude Code(実装エージェント):ファイルの読み書き・ビルド・テストを実行する専門エージェント
- Amazon Bedrock:Claude Code のバックエンドとして利用。IAMフェデレーション認証で安全にアクセス
- Slack:人間(私たち)とOpenClawのインターフェース。指示は大きな方針のみ
このアーキテクチャの肝は「責務分離」です。OpenClawが「何を・どこまで」を決め、Claude Codeは「言われた範囲でツールを回す」。人間は方針と承認にだけ集中できます。
Amazon Bedrock × Claude Code のセットアップ
AWSブログ「Claude Code on Amazon Bedrock のデプロイパターンとベストプラクティス」で推奨されているパターンを参考に、以下の構成で環境を整えました。
- 認証:IAM Identity Center による SSO(開発チーム全員が企業の認証情報でアクセス)
- インフラ:Claude Code専用のAWS アカウントを分離(本番環境のクォータ枯渇を防ぐ)
- モニタリング:OpenTelemetry + CloudWatch ダッシュボードで開発者ごとのトークン消費を可視化
Claude Code 側の設定はシンプルです。
export CLAUDE_CODE_USE_BEDROCK=1
export AWS_PROFILE=claude-code-profile
export AWS_REGION=ap-northeast-1
claude --version # 動作確認
OpenClaw からClaude Codeを動かす――ACP連携
OpenClawにはACP(Agent Client Protocol)という、外部コーディングエージェントを制御する仕組みがあります。これを使うと、Slackのスレッド上でOpenClawとClaude Codeが対話しながら開発を進める様子をリアルタイムで確認できます。
openclaw.json にACP設定を追加します。
{
"agents": {
"list": [
{
"id": "claude",
"runtime": {
"type": "acp",
"acp": {
"agent": "claude",
"backend": "acpx",
"mode": "persistent",
"cwd": "/path/to/project"
}
}
}
]
}
}設定後、OpenClawに自然言語で指示するだけでClaude Codeが起動します。
「認証機能の実装をClaude Codeに依頼して。
cwd は /Users/dev/myapp で、persistent モードで動かしてね。」
OpenClawが内部で sessions_spawn(runtime: "acp", agentId: "claude", thread: true, mode: "session") を呼び出し、Slackスレッドにバインドされたセッションが開始されます。
実際に動かしてみた
試験的に「APIエンドポイントの追加」タスクをマルチエージェント体制で処理しました。流れはこうです。
- Slackで「ユーザー一覧APIを追加して」とOpenClawに指示
- OpenClawがタスクを分解し、Claude Codeに仕様を渡す
- Claude CodeがAmazon Bedrock経由でコードを生成・テスト実行
- 完了報告をOpenClawが受け取り、Slackで私に通知
実作業時間:約8分。同じタスクを手動でやると30〜40分かかっていたものが、指示→完了報告を受け取るだけで済みました。その間、私は別の設計業務を進めていられました。
ハマったポイント
- タイムアウト設定:複雑なタスクでは
timeout: 600(秒)が必要。デフォルトだとSIGKILLで落ちる - pty: true は必須:Claude CodeはTTYが必要なCLIのため、pty設定を忘れると動かない
- Amazon Bedrock のクォータ:専用AWSアカウントを使わないと、本番のクォータを食い合うリスクがある
- AWSリージョン:Claude Code on Bedrockはap-northeast-1(東京)で利用可能。レイテンシが気になる場合はクロスリージョン推論プロファイルも検討
導入の効果

2週間の試験運用で見えてきた効果をまとめます。
- 実装タスクの処理速度:単純な機能追加で3〜5倍の速度向上
- 開発者の集中時間:実装作業への直接介入が大幅減少。設計・レビューに時間を使えるように
- コスト可視化:CloudWatch ダッシュボードでトークン消費をリアルタイム把握。月額コストの予測精度が上がった
Amazon BedrockのCloudWatchメトリクスが整備されているため、「AIに使ったコストとその成果」を数字で出せるのは、組織的AI活用の観点から非常に重要です。
まとめ――組織的AI活用への示唆
「AIに仕事を任せる」というコンセプトは、まだ「ひとつのAIに何でもやらせる」フェーズから進化しています。役割を分けて、最適なエージェントに最適なタスクを振る——これが2026年の実践的なAI活用の形です。
OpenClaw × Claude Code on Amazon Bedrockの組み合わせは、エンタープライズレベルの安全性(IAM認証・モニタリング)を確保しながら、組織全体でAIエージェントチームを運用できる実用的なスタックです。
次のステップとして、Claude Code agent teamsを使った複数エージェントの並列実行にも挑戦予定です。引き続き知見をブログで共有していきます。
参考: Claude Code on Amazon Bedrock のデプロイパターンとベストプラクティス(AWSブログ)















