CloudflareがAIエージェント向けに再設計した統合CLI「cf」とは

益子 竜与志
益子 竜与志
XThreads
最終更新日:2026年04月14日公開日:2026年04月14日

Cloudflareは2026年4月、AIエージェント時代に対応した統合CLIツール「cf」をテクニカルプレビューとして公開しました。既存のWranglerを全面的に再構築し、約3,000のHTTP API操作をカバーするこの新CLIは、AIエージェントが直感的にCloudflareリソースを操作できるよう設計されています。本記事では、新CLIの背景にある課題、主要機能、そして開発者への影響を詳しく解説します。

2026年4月、Cloudflareは開発者とAIエージェントの双方を対象とした統合CLIツール「cf」をテクニカルプレビューとして公開しました。これは既存のWranglerを全面的に再構築したもので、約3,000ものHTTP API操作をカバーし、Cloudflareのすべてのサービスを単一のコマンドラインから操作できるようにするという野心的なプロジェクトです。AIエージェントがインフラを直接操作する時代において、このような統合CLIの登場は開発ワークフローを大きく変える可能性があります。

Wranglerの限界とAIエージェント時代の課題

Cloudflareのサービスを日常的に利用している開発者の多くは、「Wrangler」というCLIツールに馴染みがあるでしょう。Wranglerは主にCloudflare Workersの開発・デプロイを中心に設計されており、長年にわたって多くの開発者に利用されてきました。

しかし、Cloudflareがその発表の中で率直に認めているように、「Cloudflareのサービスの多くが(同社のコマンドラインツールである)Wranglerによるコマンドラインでのコマンドを備えていません」という制限が長年の課題として存在していました。CDN設定、DNS管理、R2ストレージ、KVストア、Durable Objects、D1データベースなど、Cloudflareが提供するサービスの幅は急速に拡大してきましたが、CLIによるサポートが追いついていなかったのです。

さらに大きな変化として、AIエージェントが実際の開発作業を担うケースが急増しています。コーディングエージェントやインフラ管理エージェントは、GUIではなくCLIを通じてサービスを操作することを好みます。「AIエージェントはコマンドラインの利用を好んでいます」というCloudflareの指摘は、現代のAIエージェントの特性を正確に捉えています。コマンドラインは出力が予測可能で、スクリプトやパイプラインへの組み込みが容易であり、AIエージェントが自律的に操作するうえで最適なインターフェースです。

ところが、コマンドごとにフラグや構文が統一されていない場合、AIエージェントは混乱しやすくなります。一部のコマンドが特定のフラグをサポートし、別のコマンドではサポートしないという非一貫性は、人間の開発者には慣れで乗り越えられても、パターンを学習するAIエージェントには大きな障害となり得ます。これらの課題を根本から解決するために、Cloudflareは新しいCLIの開発に着手しました。

新CLIの全体像 約3000のAPIをカバーする統合インターフェース

Cloudflareが発表した新CLIのコマンド名は「cf」です。既存のWranglerを廃止するのではなく、Wrangler CLIを再構築してCloudflare全体のCLIとして再定義するというアプローチを採用しています。

最大の特徴はそのカバー範囲の広さです。新CLIはCloudflareが公開する約3,000のHTTP API操作に対応しており、これはDNS管理、CDN設定、セキュリティルール、Workers、KV、R2、D1、Durable Objects、Pages、Stream、Images、Email Routingなど、Cloudflareが提供するほぼすべてのサービスを網羅することを意味します。

テクニカルプレビューとして現在公開されており、以下のコマンドで試すことができます。

# npxで即時試用
npx cf

# グローバルインストール
npm install -g cf

現時点ではまだ小規模な製品セットのみがサポートされていますが、今後段階的にすべてのCloudflare APIサーフェスへのサポートを拡張していく予定です。既存のWranglerとの統合も計画されており、移行パスが用意される見込みです。

CloudflareのAIエージェント向け新CLI「cf」の概要図

Local Explorerによるローカルリソース検査機能

新CLIの目玉機能の一つが「Local Explorer」です。これは開発中のローカル環境でCloudflareのリソースを視覚的に検査・管理できる機能で、現在ベータ版として提供されています。

Local Explorerが対応するリソースの種類は以下の通りです。

  • KV(Key-Value ストア): キーと値のペアを参照・編集
  • R2(オブジェクトストレージ): バケット内のオブジェクトを確認
  • D1(SQLiteベースのデータベース): テーブルやレコードを検索・閲覧
  • Durable Objects: ステートフルなオブジェクトの状態を検査
  • Workflows: 実行中のワークフローの進捗を監視

Local Explorerを起動するには、開発サーバーが起動している状態でキーボードショートカット「e」を押すだけです。また、「/cdn-cgi/explorer/api」というエンドポイントを通じてOpenAPI仕様にアクセスすることもでき、ローカル環境のリソースをプログラマティックに操作することも可能です。

これはAIエージェントにとって特に有用な機能です。エージェントがCloudflareリソースを操作する際、その結果をリアルタイムで検査し、期待通りの変更が反映されているかを確認する手段として活用できます。従来はダッシュボードを開いて確認する必要があった作業が、CLIの枠組みの中で完結するようになります。

Infrastructure as Codeと一貫性のあるコマンド設計

新CLIのもう一つの重要な柱がInfrastructure as Code(IaC)への対応です。「wrangler.jsonc」設定ファイルを拡張し、Cloudflareの複数サービスをまとめて宣言的に管理できるようになります。

従来のWranglerでは、Workers向けの設定に特化していたため、DNSレコードやCache Rulesといった設定はダッシュボードやAPI呼び出しで個別に管理するしかありませんでした。新しいアプローチでは、これらの設定を単一の設定ファイルに集約し、バージョン管理リポジトリで管理することが可能になります。

// wrangler.jsonc(例)
{
  "name": "my-app",
  "main": "src/index.ts",
  "dns": [
    {
      "type": "A",
      "name": "@",
      "content": "192.0.2.1"
    }
  ],
  "cache_rules": [
    {
      "description": "Static assets",
      "expression": "(http.request.uri.path matches \"^/static/\")",
      "action": "set_cache_settings"
    }
  ]
}
Local ExplorerとInfrastructure as Codeの概念図

AIエージェントとの相性という観点では、一貫性のあるコマンド設計が特に重要です。新CLIでは「get」「list」「create」「update」「delete」などの動詞を一貫して使用し、すべてのコマンドで「--force」や「--json」といった共通フラグが利用可能になっています。この統一性により、AIエージェントはCloudflareのどのサービスに対しても同じパターンでコマンドを構築でき、予測可能な出力を得ることができます。

「--json」フラグによる構造化出力は、AIエージェントが実行結果をプログラマティックに解析するうえで特に役立ちます。人間が読むためのテキスト出力とは異なり、JSONとして受け取ることで次のアクションへの入力として直接利用できます。

TypeScript型ベースの新スキーマアーキテクチャ

新CLIの基盤となるのが、TypeScript型ベースの新しいスキーマアーキテクチャです。従来のOpenAPIスキーマはAPIドキュメントの生成には適していましたが、CLIコマンドの生成やSDKの自動生成という用途では限界がありました。

新しいスキーマアーキテクチャでは、TypeScriptの型定義を「単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)」として位置づけています。この型定義から以下のアーティファクトを自動生成できます。

  • CLIコマンド: 型定義に基づいて一貫性のあるCLIインターフェースを自動生成
  • Workers Bindings: Workers上でリソースにアクセスするためのバインディング
  • 設定ファイル: wrangler.jsoncのスキーマバリデーション
  • OpenAPIスキーマ: 既存のドキュメント基盤との互換性維持
  • SDK: 各プログラミング言語向けのクライアントライブラリ
  • Terraform Provider: IaCツールとの連携

この設計は、Cloudflareがサービスを拡張するたびにCLI、SDK、Terraformプロバイダーなどのツールを別々にメンテナンスする必要がなくなることを意味します。型定義を更新するだけで、すべてのツールに変更が伝播する仕組みです。

開発者の観点からは、CLIとコードの動作が常に一致することが保証されるため、「CLIでは動くのにコードでは動かない」という不整合に悩まされることがなくなります。また、自動生成されたTypeScript型を利用することで、Workersの開発においても型安全性が高まります。

今後のロードマップと開発者が知っておくべきこと

現在のテクニカルプレビューはまだ初期段階であり、Cloudflare全サービスの完全なサポートには至っていません。しかし、Cloudflareが示しているロードマップは明確です。

短期的には、現在プレビューで提供されている小規模な製品セットから、段階的にすべてのCloudflare APIサーフェスへのサポートを拡張していきます。中期的には、既存のWranglerとの統合が予定されており、既存のWranglerユーザーが円滑に移行できるパスが用意される見込みです。

開発者がいまできることとしては、以下のアクションが有効です。

  • テクニカルプレビューを試す: npx cfで今すぐ体験できます
  • Local Explorerを活用する: 現在の開発環境で「e」キーを押してローカルリソースを確認してみましょう
  • フィードバックを送る: Cloudflare Developers Discordでフィーチャーリクエストや不具合報告が受け付けられています
  • IaCへの移行を検討する: wrangler.jsoncベースの設定管理への移行準備を進めておくと、本格提供時にスムーズに対応できます

AIエージェントを活用したインフラ管理や自動化の観点では、この新CLIは非常に重要な位置づけを持ちます。エージェントがCloudflareのリソースを自律的に管理できるようになることで、「コードを書く→テストする→デプロイする→監視する」というサイクルの多くの部分をエージェントに委ねられる将来像が現実味を帯びてきます。

Cloudflareの統合CLIは現時点では発展途上ですが、その設計思想と技術的アプローチは非常に先進的です。エージェント時代の開発者ツールとして、今後の展開に注目していく価値があるでしょう。

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