2025年第4四半期、AWSはre:Invent 2025を中心に多数のサーバーレス関連アップデートを発表しました。Lambdaの新機能であるdurable functionsやManaged Instancesをはじめ、API Gatewayのレスポンスストリーミング、Step FunctionsのローカルテストAPI、S3 VectorsのGA(一般提供開始)など、AIワークフローや大規模アプリケーション開発に直結する重要な機能が続々と登場しています。本記事では、これらの主要アップデートをエンジニア視点で整理し、実践的な活用ポイントをご紹介します。
2025年Q4のAWSサーバーレス動向概観
2025年11月に開催されたre:Invent 2025では、サーバーレスアーキテクチャのさらなる進化を示す発表が相次ぎました。なかでも注目度が高かったのは、長時間・マルチステップのワークフローを状態管理つきで実行できる「Lambda durable functions」と、EC2の特殊インスタンスをサーバーレスとして扱える「Lambda Managed Instances」の2つです。
全体的なトレンドとして、AIエージェントやLLM駆動アプリケーションへの最適化が色濃く出ています。Lambda durable functionsはAIワークフローのオーケストレーションを念頭に置いた設計であり、API GatewayのレスポンスストリーミングはLLMのストリーミング応答をRESTで扱いやすくするものです。また、S3 VectorsのGA、DynamoDBのGSI拡張など、データ層においてもRAGやAIアプリケーション向けの強化が進んでいます。
コスト面でも見逃せないアップデートがあります。Database Savings Plansによりマネージドデータベースサービスのコストを最大35%削減できるようになったほか、Lambda Managed InstancesではCompute Savings PlansやReserved Instancesを活用したコスト最適化も可能です。サーバーレスの「使った分だけ払う」モデルと、予約購入による割引を組み合わせる選択肢が広がりました。
AWS Lambda の進化(durable functions・Managed Instances・新ランタイム)

Lambda durable functionsは、マルチステップのサーバーレスワークフローで状態管理を可能にする新機能です。実行中の重要なポイントで状態とステップをチェックポイントとして保存し、最大1年間の実行一時停止も可能です。障害が発生した場合は最後のチェックポイントから自動的に再開するため、外部インフラを管理することなく耐障害性の高いワークフローを構築できます。Python と TypeScript に対応しており、AIエージェントのオーケストレーションやマルチステップの承認フローなど、長時間にわたる処理を安全に実行する際に威力を発揮します。
Lambda Managed Instancesは、Amazon EC2の柔軟性とフルマネージドインフラを組み合わせた新しいコンピューティングオプションです。Graviton4やネットワーク最適化インスタンスといった特殊なEC2インスタンスタイプにアクセスしながら、OSのパッチ適用・ロードバランシング・オートスケーリングはAWSが管理します。高性能なGPUや特殊ネットワーク機能が必要なワークロードに対して、サーバーレスの管理容易性を維持したまま対応できる点が大きなメリットです。
その他のLambdaアップデートも実用的なものが揃っています。マルチテナントSaaSアプリでテナントごとに独立した実行環境を提供する「テナント分離モード」、高スループット処理でコールドスタートを削減する「SQS Provisioned Mode」が追加されました。非同期呼び出しのデータ送信上限は従来の256KBから1MBへと拡大され、IPv6ネットワーキングのサポートによりNAT Gatewayなしでインターネットアクセスが可能になりました。ランタイムではRustが実験的ステータスからGA(一般提供)へと移行し、Python 3.14・Node.js 24・Java 25の新ランタイムも追加されています。
API Gateway・EventBridge・Step Functionsの新機能
Amazon API Gatewayでは、REST APIでのレスポンスストリーミングが利用可能になりました。レスポンスペイロードを段階的にクライアントへ送信できるため、LLMを活用したチャットボットやAIエージェントのようにレスポンス生成に時間がかかるアプリケーションのUXを大幅に改善できます。TTFB(Time to First Byte)が短縮されることで、ユーザーは応答の最初の部分をすぐに受け取ることができます。
ALBプライベート統合も注目の機能です。Application Load BalancerをパブリックインターネットにさらすことなくVPCベースのアプリをREST APIとして安全に公開できます。社内システムや機密性の高いAPIをVPC内に閉じながら、API Gatewayの認証・スロットリング・ログ機能を活用するユースケースに適しています。加えて、TLSセキュリティポリシーの強化によりAPIのセキュリティ設定をより細かく制御できるようになりました。
Amazon EventBridgeでは、拡張ビジュアルルールビルダーがコンソールに追加されました。カスタムアプリや200以上のAWSサービスのイベントを発見・サブスクライブできるUIで、スキーマレジストリとの統合やドラッグアンドドロップキャンバスにより、イベント駆動アーキテクチャの設計・管理が容易になっています。またSQSフェアキューをEventBridgeルールのターゲットとして指定できるようになりました。
AWS Step FunctionsではTestState APIによるローカルテストが強化されました。AWSにデプロイすることなくワークフロー定義をローカルで検証でき、自動テストスイートの構築にも活用できます。新たに追加されたメトリクスダッシュボードはアカウントレベルとステートマシンレベルの運用状況を可視化し、ワークフローの健全性監視をより直感的に行えます。
コスト最適化とデータ層の強化(Database Savings Plans・DynamoDB・S3 Vectors)

コスト最適化の観点では、Database Savings Plansの登場が大きなインパクトをもたらしています。RDSやAuroraなどのマネージドデータベースサービスのコストを最大35%削減できるコミットメントベースの割引プランです。サーバーレスとRDB・NoSQLを組み合わせたアーキテクチャを採用している場合、ストレージとデータベースのどちらにおいてもコスト最適化の手段が整ってきました。
Amazon DynamoDBではグローバルセカンダリインデックス(GSI)において複数属性を使った複合キーを作成できるようになりました。最大8つの属性を組み合わせてプライマリキーを定義できるため、複雑なクエリパターンに対応するGSI設計の柔軟性が大幅に向上しています。これまでアプリケーション側で工夫が必要だったソート条件を、DynamoDB側の設計で対応できるケースが増えます。
Amazon S3 VectorsはAIエージェントやRAGシステム向けのベクトルストレージとして一般提供(GA)が開始されました。数十億規模のベクトルをコスト最適化された形で格納・検索できるため、LLMを活用したサービス構築に必要なデータ基盤として活用できます。別途Pineconeや OpenSearch を外部で運用する手間なく、AWSエコシステム内でベクトルストアを完結させられる点が注目されています。
コンテナ系では、Amazon ECS Express Modeが追加されました。単一コマンドで本番環境対応のコンテナアプリケーションをデプロイできる機能で、サーバーレスとコンテナを組み合わせたアーキテクチャの採用ハードルが下がっています。パブリックプレビュー中のECS MCPサーバーはAIを活用した開発・運用体験を提供しており、今後の展開が注目されます。
RagateのAWSサーバーレス活用支援
Ragate(ラーゲイト)株式会社は、AWSを中心としたクラウド支援・AI活用(AX)・テクノロジーアドバイザリーに強みを持つITコンサルティング企業です。AWSパートナーとして、サーバーレスアーキテクチャの設計・構築・最適化から、AIエージェントの導入・活用推進まで幅広く支援しています。
今回ご紹介したLambda durable functionsやS3 VectorsのようなAIワークフロー向け新機能は、導入のメリットが大きい一方で、最適なアーキテクチャ設計や既存システムとの統合には専門知識が求められます。Ragateでは、これらの新機能を含むサーバーレスアーキテクチャの採用支援や、AIエージェント・RAGシステムの構築支援を提供しており、ビジネス要件に合わせた最適解を共に検討します。
また、Ragateはクラウドマイグレーション・脆弱性診断・MVP開発といったサービスも展開しており、クラウド活用の初期段階から本格運用まで一貫してサポートします。AWSサーバーレスの最新機能を自社のプロダクトやサービスにどう活かすか検討されている方は、ぜひRagateにご相談ください。
















