2026年4月、AWSはAnthropicの「Claude Mythos」Amazon Bedrockプレビューや「AWS Agent Registry」など、複数の重要なアップデートを発表しました。本記事では、これらの注目機能の概要と実務への活用方法、さらに4月第2週の主要なAWSアップデートをまとめてご紹介します。
Claude MythosがAmazon Bedrockにプレビュー登場 - サイバーセキュリティ特化の次世代AI
2026年4月7日、AnthropicはAmazon Bedrockにて「Claude Mythos」のゲート付きリサーチプレビュー(Gated Research Preview)を開始しました。Claude Mythosは、Anthropicがこれまでに開発した中で最も高度なAIモデルの一つであり、サイバーセキュリティ領域に特化した能力を持つ新モデルクラスとして位置づけられています。
Claude Mythosの最大の特徴は、主要OSや主要Webブラウザを含む重要なソフトウェアにおいて、数千件のゼロデイ脆弱性(開発者未知の脆弱性)を特定する能力を持つ点です。単独で複雑なハッキングタスクを実行でき、未公開脆弱性の特定からエクスプロイトコードの生成、複数脆弱性を3〜5件連結した高度なチェーン攻撃の構成まで対応できるとされています。
モデルのスペックとしては、コンテキストウィンドウが1Mトークン、最大出力トークンが128K、推論(Reasoning)機能に対応しており、ナレッジカットオフは2025年12月です。サイバーセキュリティだけでなく、ソフトウェアコーディングや複雑な推論タスクにおいても高い性能を発揮するとされています。

プレビューへのアクセスは、許可リスト(allow-list)に登録した組織のみに限定されており、インターネット基盤企業やオープンソースメンテナーが優先されます。利用可能リージョンは現時点でUS East (N. Virginia)のみです。一般公開は現時点では予定されていません。
注目すべきは「Project Glasswing」との連携です。AnthropicはこのイニシアチブのもとAWS、Apple、Google、Microsoftを含む50以上の組織に対し、合計1億ドル以上の利用クレジットとともにClaude Mythos Previewへのアクセスを提供しています。重要なソフトウェアインフラのセキュリティ強化とAIを活用した脆弱性発見の組織的な推進が目的です。
Bedrockから利用する際はAWSコンソールのAmazon Bedrock画面からアクセスリクエストを申請します。承認後は他のBedrockモデルと同様にAPIを通じて呼び出せます。強力なサイバー攻撃能力を持つモデルであるため、用途の明確化と適切なガバナンス体制の整備が求められます。
AWS Agent Registry - エンタープライズのエージェントスプロールを解消するプライベートカタログ
2026年4月9日、AWSはAmazon Bedrock AgentCoreの機能として「AWS Agent Registry」のプレビューを開始しました。この機能は、組織内に増殖するAIエージェント・ツール・スキル・MCPサーバー・カスタムリソースを一元管理するためのプライベートカタログ・ディスカバリーレイヤーです。
昨今のエンタープライズ現場では、チームや部門ごとに独自のAIエージェントが乱立する「エージェントスプロール」と呼ばれる問題が深刻化しています。似たような機能を持つエージェントが重複して開発され、既存の能力を把握できないまま再構築が繰り返されるという課題です。AWS Agent Registryはこの問題に正面から対応するためのソリューションです。

主な機能として以下が挙げられます。まずセマンティック検索とキーワード検索により、組織内に存在する既存のエージェントやツールを素早く発見できます。次に承認ワークフロー(Approval Workflows)を通じて、エージェントやツールの登録・利用を管理し、ガバナンスを強化できます。さらにAWS CloudTrailによる監査証跡が自動記録されるため、誰がいつどのエージェントを利用したかを追跡できます。
特徴的なのがURLベースのディスカバリー機能です。MCPサーバーやエージェントエンドポイントのURLを指定するだけで、ツールスキーマや機能説明などのメタデータが自動取得されます。アクセス手段も豊富で、AgentCoreコンソール、AWS CLI、各種SDK、そしてIDEから利用できるMCPサーバー形式が用意されています。
利用可能なリージョンはUS East (N. Virginia)、US West (Oregon)、Asia Pacific (Sydney)、Asia Pacific (Tokyo)、Europe (Ireland)の5リージョンです。東京リージョンで利用できる点は、日本国内のエンタープライズにとって大きなメリットとなります。
典型的な利用シーンは、数百から数千のエージェントを運用する大規模エンタープライズにおける既存能力の再利用促進です。ITプラットフォームチームがエージェントカタログを一元管理し、各開発チームがセルフサービスで適切なエージェントを発見・活用できる体制を構築することで、開発効率と統制の両立が実現します。
2026年4月第2週の注目AWSアップデートまとめ
4月13日週には他にも複数のAWSアップデートが発表されました。
Amazon BedrockのIAMユーザー・ロール別コスト配賦のサポート
AWS Cost and Usage Report 2.0(CUR 2.0)およびCost Explorerにおいて、IAMプリンシパル(ユーザー・ロール)別にBedrockのモデル推論コストを把握・配賦できるようになりました。チームやプロジェクト、コストセンターなどの属性タグをIAMユーザー・ロールに付与してコスト配賦タグとして有効化することで、どの組織単位がどれだけのAI推論コストを消費しているかを可視化できます。複数チームでBedrockを共有利用している組織にとって、コスト管理の精度が大幅に向上します。
Amazon S3 Files の発表
Amazon EFS技術をベースに構築された新機能で、S3バケットを共有ファイルシステムとして任意のAWSコンピュートリソースから直接接続できます。ファイルシステムAPIとS3 APIの両方からデータへ同時アクセスが可能で、既存のコードや移行作業なしに利用できます。AIワークロードやデータ分析における大量ファイルの共有アクセスシーンで特に有用です。
Amazon WorkSpaces Advisor の発表
生成AIを活用してIT管理者がAmazon WorkSpaces Personalの問題を診断・解決できる新サービスです。設定の自動分析、問題の自動検出、アクションにつながる推奨事項の提供機能を持ちます。仮想デスクトップ環境の管理コストと運用負荷の削減に貢献します。
Amazon OpenSearch Service - 統合オブザーバビリティプラットフォーム
メトリクス・ログ・トレース・AIエージェントトレーシングを単一インターフェースに統合した統合オブザーバビリティプラットフォームが追加されました。Prometheusとのネイティブ統合(直接的なPromQLクエリサポート)と、LLM実行の可視化向けOpenTelemetry GenAIセマンティック規約のサポートが加わっています。AIエージェントのトレーシングと従来のインフラ監視を一元化できる点が特徴です。
AWS DevOps Agent・Security Agent がGA(前週4月6日発表)
AWSの「フロンティアエージェント」第一弾として、DevOps AgentとSecurity Agentが2026年4月6日に正式提供開始しました。DevOps Agentはクラウドオペレーションの自動化を担い、顧客事例ではMTTR最大75%削減・解決速度3〜5倍向上が報告されています。AWS環境に加えAzureやオンプレミス環境のインシデント調査にも対応しています。Security Agentは継続的なコンテキスト認識型ペネトレーションテストを開発ライフサイクルに統合します。
開発者・アーキテクトが押さえておくべき実務への活用Tips
Claude Mythosへのアクセス申請を早めに準備する
現在はゲート付きリサーチプレビューのため、AWSコンソールからのアクセスリクエスト申請が必要です。セキュリティ診断・ペネトレーションテスト用途での活用を検討している場合は、用途の説明資料を整備した上で早期申請を行うことを検討してください。強力なサイバー攻撃能力を持つモデルであるため、利用目的の正当性と適切なガバナンス体制の整備が不可欠です。
AWS Agent Registryを使ったエージェント管理設計パターン
既に複数のBedrockエージェントやMCPサーバーを運用している組織では、Agent Registryへの早期登録を推奨します。登録時のメタデータ(機能説明・使用モデル・対応タスク種別)を標準化しておくことで、後からのセマンティック検索精度が高まります。プラットフォームチームが登録基準と承認フローを設計し、各開発チームが自律的に登録・更新できる体制を整えることが、エージェントスプロール解消の第一歩となります。
BedrockコストをIAMロール別に可視化する手順
対象のIAMプリンシパルに適切なタグ(team、project、cost-centerなど)を付与し、AWS Cost Explorerのコスト配賦タグ設定画面で有効化します。翌日以降のコストデータからタグ別の集計が反映されます。チームごとのBedrockコスト配賦レポートを定期的にレビューすることで、AIコストの透明性を高められます。
OpenSearchでAIエージェントのトレーシングを実現する
Amazon OpenSearch Serviceの統合オブザーバビリティプラットフォームにより、AIエージェントのトレーシングと従来のインフラ監視を一元化できます。OpenTelemetry GenAIセマンティック規約に対応したトレースをエージェントから送信することで、LLMの呼び出し回数・レイテンシー・トークン使用量をPrometheusメトリクスと同じダッシュボードで監視できます。
まとめ - AIエージェント活用の新段階へ
2026年4月のAWSアップデートを振り返ると、3つのトレンドが明確に見えてきます。
第一に「AIによるセキュリティ強化」です。Claude Mythos PreviewやAWS Security AgentのGAは、AIを攻撃者と同等以上の能力で脆弱性発見・修正に活用する時代の到来を示しています。セキュリティチームとAIの協働が、従来のペネトレーションテストの概念を刷新しつつあります。
第二に「エージェントのガバナンス・管理」です。AWS Agent RegistryやAgentCore Policyのリリースは、単一エージェントの時代からエージェントフリートの管理時代への移行を象徴しています。エンタープライズにとって今後の重要課題は、AIエージェントを「いかに作るか」から「いかに組織全体で安全・効率的に管理するか」へとシフトしています。
第三に「AIコストとオペレーションの可視化」です。BedrockのIAMコスト配賦サポートやOpenSearchの統合オブザーバビリティは、AI活用の本格化に伴うコスト・品質管理への需要に応えるものです。
2026年4月28日には「What's Next with AWS」と題したバーチャルイベントが開催予定で、AgentCoreなどの新機能に関するさらなる発表が期待されます。引き続き最新動向のキャッチアップを続けていきましょう。
















