AI推進の旗振り役を担う情シス・DX推進室の現実
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「生成AIを全社で活用推進せよ」——経営層からの指示を受け、情報システム部門やDX推進室がAI推進の旗振り役を担うケースが増えています。しかし、セキュリティ、ガバナンス、社内スキル、投資対効果…多くの課題を同時に解決しながらプロジェクトを推進するのは容易ではありません。
本レポートでは、Ragate株式会社が2025年12月に実施した505名への独自調査から、AI推進部門が直面する課題と成功に導くための具体策を詳しく解説します。
調査概要
本調査は以下の条件で実施しました。
- 調査期間:2025年12月11日〜
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 有効回答数:505名
- 調査対象:日本国内のビジネスパーソン(情報システム部門・DX推進室所属者)
本調査の回答者は、まさにAI推進の最前線に立つ担当者です。彼らの回答から、AI推進部門のリアルな課題が浮かび上がります。
情シス・DX推進室が直面する5大課題
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課題マップ
調査結果から、AI推進部門が直面する主要課題は以下のように分布しています。
課題 | 回答率 | 主に担当する部門 |
|---|---|---|
情報漏洩・セキュリティリスク | 42.2% | 情報システム部 |
出力精度(ハルシネーション)への懸念 | 35.2% | 両部門共通 |
著作権・コンプライアンス懸念 | 28.3% | 両部門共通 |
従業員のスキル不足 | 24.9% | DX推進室 |
社内ルール・ガイドライン整備の遅れ | 19.4% | 両部門共通 |
費用対効果(ROI)の算出困難 | 17.6% | DX推進室 |
既存システムとの連携困難 | 14.3% | 情報システム部 |
導入・運用コストの妥当性不明 | 13.3% | 両部門共通 |
経営層・現場の理解が得られない | 10.7% | 両部門共通 |
課題①:セキュリティリスクへの対応(42.2%)

情シス部門の最重要課題
約42%の回答者がセキュリティリスクを課題として認識しており、これは情シス部門にとって最優先で取り組むべきテーマです。
具体的な懸念事項
- 外部LLMサービスへの機密情報入力によるデータ漏洩
- 入力データがAIの学習に使用される可能性
- シャドーIT(現場の勝手なAI利用)の発生
- データ保管場所やアクセス権限の不透明さ
情シス部門のアクション
エンタープライズ向けサービスの導入
- Azure OpenAI Service(7.5%)、Amazon Bedrock(6.7%)など、データ非学習保証のあるサービスを選定
- VPCやプライベートエンドポイントによる閉域接続
利用ガイドラインの整備
- 入力可能な情報の範囲をセキュリティレベル別に定義
- 禁止事項の明確化(機密情報、個人情報の入力禁止等)
- インシデント発生時の対応手順策定
技術的なセーフガード
- DLPツールによる機密情報の検知
- 監査ログの取得と定期レビュー
- 認証・認可の徹底(SSO連携等)
課題②:社内ルール・ガイドライン整備(19.4%)

両部門に跨がる課題
約19%が「ガイドライン整備の遅れ」を課題として認識しています。技術的な対策だけでなく、組織的なルール作りが必要です。
整備すべきガイドラインの項目
項目 | 内容例 |
|---|---|
利用可能なツール | 承認済みサービスのホワイトリスト |
入力データの範囲 | 機密レベル別の利用可否 |
出力の取り扱い | AI生成コンテンツの表示義務 |
禁止事項 | 個人情報入力、著作物の丸写し等 |
承認フロー | 新規ユースケースの承認プロセス |
教育・研修 | 利用前に必須のトレーニング |
インシデント対応 | 問題発生時の報告・対応手順 |
段階的なアプローチ
Phase 1:最低限の禁止事項を定めた簡易ガイドラインを即時展開 Phase 2:利用実態を把握しながら詳細ルールを追加 Phase 3:定期的な見直しと改訂
課題③:従業員のスキル不足(24.9%)
DX推進室の重点課題
約25%が「従業員のスキル不足」を課題として認識しています。ツールを導入しても、使いこなせなければ効果は出ません。
必要なスキル
スキル領域 | 具体的な内容 |
|---|---|
基礎知識 | AIの仕組み、できること・できないこと |
プロンプトエンジニアリング | 効果的な指示の出し方 |
ユースケース発見 | 自業務へのAI適用方法 |
品質管理 | ハルシネーションの検知・対処 |
セキュリティ意識 | 機密情報の取り扱い |
DX推進室のアクション
体系的な研修プログラム
- 全社員向けの基礎研修(eラーニング等)
- 部門別の実践ワークショップ
- アドバンスト層向けの専門研修
社内チャンピオンの育成
- 各部門から推進者を選出
- 推進者向けの集中トレーニング
- 推進者を通じた部門内展開
ナレッジ共有の仕組み
- 成功事例の社内共有会
- プロンプトライブラリの整備
- 社内AIコミュニティの運営
課題④:ROI算出の困難さ(17.6%)
経営層への説明責任
約18%が「ROI算出が困難」と回答しています。AI投資の正当性を示すため、効果の可視化は避けて通れません。
ROI測定の難しさの要因
- 効果が「時間短縮」など定性的なものが多い
- 導入前後の比較測定が困難
- 効果発現までに時間がかかる
- 直接的なコスト削減より間接効果が大きい
測定可能なKPIの設定
活用領域 | 測定KPI例 |
|---|---|
コンテンツ作成 | 作成時間、修正回数、公開件数 |
情報収集・調査 | 調査工数、レポート品質 |
システム開発 | コード行数/時間、バグ率 |
問い合わせ対応 | 平均応答時間、解決率 |
議事録作成 | 作成時間、カバー率 |
ROI算出のフレームワーク
ROI = (効果金額 - 投資コスト) / 投資コスト × 100
効果金額 = 削減工数 × 人件費単価 + 売上増加額 + 品質向上効果
投資コスト = ツール費用 + 導入費用 + 教育費用 + 運用費用課題⑤:経営層・現場の理解獲得(10.7%)
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組織横断的な合意形成
約11%が「理解が得られない」と回答しています。比率は低いものの、この課題があるとプロジェクト自体が前に進みません。
経営層への説明ポイント
競合動向の提示
- 調査データ:約39%の企業が導入済み、35%が投資拡大予定
- 「導入しない」ことのリスクを明示
段階的な投資計画
- 小規模PoCから開始し、効果検証後に拡大
- リスクを最小化しながら進められることを説明
具体的なROI試算
- 先行企業の事例データを活用
- 自社への適用シミュレーション
現場への説明ポイント
「仕事を奪う」ではなく「仕事を支援する」
- AIは人間の能力を拡張するツール
- 付加価値の高い業務に集中できる
成功事例の共有
- 同業他社や類似部門での効果実績
- 社内パイロットの成果報告
段階的な導入
- 強制ではなく、希望者から開始
- 成功体験を積み重ねて拡大
成功するAI推進のロードマップ
Phase 1:基盤整備(1〜2ヶ月)
担当 | タスク |
|---|---|
情シス | セキュリティ要件の整理 |
情シス | 利用ツールの選定・契約 |
両部門 | 利用ガイドラインの策定 |
DX推進 | 推進体制の構築 |
Phase 2:パイロット展開(2〜3ヶ月)
担当 | タスク |
|---|---|
DX推進 | パイロット部門の選定 |
両部門 | 研修プログラムの実施 |
DX推進 | 効果測定の仕組み構築 |
情シス | 技術サポート体制構築 |
Phase 3:全社展開(3〜6ヶ月)
担当 | タスク |
|---|---|
DX推進 | 全社研修の実施 |
両部門 | ユースケース集の整備 |
DX推進 | 成功事例の横展開 |
情シス | 運用・監視体制の強化 |
Phase 4:高度化・最適化(継続)
担当 | タスク |
|---|---|
両部門 | ガイドラインの改訂 |
DX推進 | 新規ユースケースの発掘 |
情シス | 内製化の推進 |
両部門 | ROIの継続的測定・報告 |
まとめ
本調査により、以下の点が明らかになりました。
- セキュリティ(42.2%)が最大の課題であり、情シス部門の最優先テーマ
- ガイドライン整備(19.4%)とスキル不足(24.9%)への対応が組織的に必要
- ROI算出(17.6%)は経営層への説明責任として避けて通れない
- 段階的なロードマップに沿った推進が成功の鍵
情シス・DX推進室には、技術とビジネスの両面からAI推進を牽引する役割が求められています。本レポートの内容を参考に、自社のAI推進を成功に導いてください。
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