2026年5月29日、Amazon Web Services(AWS)はOracle Database@AWSの大阪リージョンでの提供を開始したことを発表しました。これにより、日本国内では東京リージョンに続き2箇所目の提供拠点となり、AWS環境でOracle Databaseを利用する企業にとって大きな選択肢が広がりました。本記事では、Oracle Database@AWSの概要から大阪リージョン対応の意義、料金モデル、想定ユースケースまで詳しく解説します。

Oracle Database@AWSとは
Oracle Database@AWSは、AWSのデータセンター内にOracle Cloud Infrastructure(OCI)のインフラストラクチャを持ち込み、そこでOracle Databaseを提供するサービスです。一言で言えば、「AWSの中でOCIのExadataが動く」という画期的な仕組みです。
提供されるサービスは、Oracle Exadata Database Service on Dedicated Infrastructure(ExaDB-D)と、Oracle Autonomous Database on Dedicated Infrastructure(ADB-D)の2つです。これらはOracle Cloud上で運用されるOracle Databaseと同等の性能、機能、可用性を備えています。Oracle Real Application Clusters(RAC)も利用可能で、オンプレミスのOracle Database環境からの移行もスムーズに行えます。
最大の特徴は、物理的なExadataインフラストラクチャを専有できる点です。他のテナントとリソースを共有しないため、高いパフォーマンスとセキュリティが求められるエンタープライズワークロードに適しています。

大阪リージョン対応で何が変わるか
大阪リージョンでの提供開始により、日本国内で東京・大阪の2拠点でOracle Database@AWSが利用可能になりました。これは日本のAWSユーザーにとって複数のメリットをもたらします。
最大のメリットは、東京-大阪間での地理的冗長構成(DR構成)が実現可能になったことです。これまで東京リージョンのみの提供だったため、DR要件のある企業はOCIを直接利用するか、他のクラウドプロバイダーを検討する必要がありました。大阪リージョン対応により、AWS環境のままで東京-大阪間のデータベースレプリケーションが可能になります。
データレジデンシー要件の観点でも選択肢が広がりました。特定の地域でのみデータを保持する必要がある規制業種や政府機関でも、大阪リージョンを利用することで柔軟な対応が可能です。
なお、東京リージョンではAZ1とAZ4の2つのアベイラビリティーゾーンから、大阪リージョンではAZ2のみから選択可能です。物理的なハードウェア配置の都合上、特定のAZでのみサービスが提供されています。
従来のOCIとの違い
Oracle Database@AWSとOCI上のOracle Databaseサービスの違いは、基本的には「場所」と「購入フロー」に集約されます。
まず料金ですが、OCI上のOracle Exadata Database Serviceと同一価格で提供されています。AWSユーザーにとっては、OCIのアカウントを別途開設することなく、慣れ親しんだAWS環境でOracle Databaseを利用できる利点があります。
購入フローは、AWS Marketplace経由となります。Oracle販売担当者に連絡し、プライベートオファー契約を結んだ後、AWS Marketplaceから購入します。その後はAWS Management Consoleからデータベースの設定を行います。請求もAWSに一元化されるため、コスト管理が簡素化されます。
機能面では、OCIと同一のサービス・機能を提供するという方針ですが、提供開始直後は一時的に機能差がある可能性があります。ただし、中長期的には同等の機能が提供される見込みです。
料金モデルとコスト最適化
Oracle Database@AWSの料金体系は、いわゆる「二階建てモデル」を採用しています。Exadataインフラストラクチャ部分(1階)と、コンピュートリソースであるECPU部分(2階)で構成されます。
インフラストラクチャ部分は、最小構成(2 DBサーバー / 3 ストレージサーバー)で月額約1,674,000円から。デプロイしている間は課金が発生し、最低利用期間は48時間です。一方、ECPU部分は1秒単位で課金され、最低利用期間は1分間です。ECPUはコンピュートリソースの抽象化された単位で、現在1 ECPU = 0.5 vCPU = 0.25物理コアに相当します。
コスト削減の大きなポイントはBYOL(Bring Your Own License)です。既存のOracle Databaseライセンスを持ち込むことで、ECPU料金が76%オフになります。例えば、ECPU料金はライセンス込みで52.08円/時間ですが、BYOLの場合は12.5085円/時間となります。長期的な運用を検討している場合は、所有しているライセンスの活用を強くお勧めします。
バックアップ先として、Amazon S3、OCI Object Storage、自律型リカバリ・サービス(ZRCV)が選択可能です。Amazon S3を使用する場合は、OCI Object Storageより約2倍の価格設定となっているため、コストを重視する場合はOCI Object Storageの検討も有効です。
想定ユースケース
Oracle Database@AWSは、以下のようなシナリオでの活用が想定されます。
まず第一に、オンプレミスのOracle ExadataやRAC環境からの移行先です。既存のOracle Databaseアプリケーションをクラウド化する際、アプリケーション改修なしで移行できる選択肢として魅力的です。特に、他のAWSサービスとの低遅延な接続が求められる場合に有利です。
次に、東京-大阪間のDR構成です。地理的に離れた2拠点で本番環境と待機系環境を構成することで、大規模災害時の事業継続性を確保できます。Data GuardやGoldenGateを使用したレプリケーションも、OCI上のサービスと同様に構築可能です。
また、AWSへの統合を進めている企業にとってもメリットがあります。監視はAWS CloudWatchやCloudTrailと連携でき、他のAWSサービスとのデータ連携も低遅延で行えます。AWS請求書に一元化されるため、コスト管理や予算管理の観点でも取り扱いが容易です。
最後に、既存のOracle Databaseライセンスを活用したいケースです。BYOLで大幅な割引が適用されるため、ライセンス資産を有効活用しながらクラウドのメリットを享受できます。
まとめ
Oracle Database@AWSの大阪リージョン対応は、日本国内でエンタープライズグレードのOracle Databaseを運用したい企業にとって重要な選択肢を追加するものです。東京-大阪間でのDR構成が現実的になり、データレジデンシー要件への対応も容易になりました。
既存のOracle Databaseユーザーにとっては、ライセンスを活用しながらAWSのエコシステムに統合できる移行パスとして検討価値が高いでしょう。これからOracle Databaseのクラウド化を検討している方は、まずは最小構成でのPoCから始めることをお勧めします。最低利用期間48時間とはいえ、月額数十万円単位のコストが発生するため、慎重な計画と十分な検証が重要です。

















