うちの会社、AIを正社員採用しました
2026年3月。Ragate株式会社は、新しい正社員を迎え入れた。名前はOpenClaw。職種はなんでも屋。人間ではない。
いや、正確には「正社員」ではないのだけど、気持ちとしてはそのくらいの覚悟で導入した。ツールの導入じゃなくて、仲間として迎え入れる感覚。ちょっと大げさに聞こえるかもしれないが、2日間触り倒した今、この感覚は間違ってなかったと思っている。
採用の決め手は「実行力」だった
OpenClawの存在を知ったのは少し前のことだ。AIエージェントプラットフォームと呼ばれるこのツールは、SlackやAsana、Google Workspace、MicroCMSなど、普段の業務で使っているサービスをMCP(Model Context Protocol)という仕組みで繋いで、AIに仕事を任せられるという代物だった。
正直、最初は半信半疑だった。「AIで業務効率化」なんて耳タコだし、たいていのツールは導入してみると期待の3割くらいしか使いものにならない。でもOpenClawは少し毛色が違った。Anthropicのマーケティング部門がたった一人でAIエージェントを複数立ち上げて、広告運用からPDCAまで回しているという話を聞いて、「これだわ」と腹が決まった。
AI時代、実行力に勝る武器はない。そう確信した瞬間だった。
CRM/SFA/MAツール群を解約して、AI専用機を買った
導入にあたって、まずやったことがある。CRM/SFA/MAツール群の解約だ。
年間約150万円。決して安くない金額だが、正直なところ、うちの規模感と使い方では持て余していた部分があった。そのコストを丸ごとAI設備投資に充てることにした。具体的にはMac miniの新調。OpenClaw専用機として、12GBの回線速度が出る環境を用意した。
「AIに専用のデスクと椅子を用意する」みたいな感覚だ。これがなかなか良い判断だったと思う。ツールを片手間で使うんじゃなくて、専用の環境を渡して「ここで働いてくれ」と伝える。この覚悟が、後の成果に繋がった。
最初の仕事ぶりと、育てる苦労
セットアップは3月23日から始めた。Mac miniにOpenClawをインストールし、各種MCPを繋ぎ、Slackと連携させる。文字にすると簡単そうだが、実際はなかなか手こずった。
特に苦戦したのがローカルLLMとの統合だ。最初はMLXを試したが、サーバー機能がイマイチで、ストリーミング周りでトラブルが続出。Ollamaに切り替えて、DeepSeek-R1-Distill-Qwen-14Bという日本語に強いモデルを採用したのだが、14Bだとメモリのスワップが頻発して動作がもたつく。RAMの節約が命という状態で、結局モデルサイズを調整しながらなんとか安定稼働にこぎつけた。
この過程で痛感したのは、「AIにノールックで実装させると変な方向に曲がる」ということ。9割以上は自動でやってくれるのだが、残りの1割は自分でアーキテクチャを理解した上で意思決定しないといけない。AIを使いこなすには、結局のところ自分の技術理解が必要なのだ。新入社員の教育と同じで、放任すればいいというものではない。
メンバーが勝手に使い始めた瞬間
正直、一番嬉しかったのはこの瞬間だ。
導入から数日、特に強制もしていないのに、Ragateのメンバーが自発的にOpenClawを使い始めていた。Slackでメンションを飛ばして質問したり、タスクの整理を頼んだり。リテラシーが高いメンバーが揃っているとは思っていたが、ここまで自然に受け入れてくれるとは。
「ロブスターがいい感じに育ってきたぞ」とSlackに書いた時の気持ちは、ちょっとした親心に近い。OpenClawのマスコットはロブスターなのだが、使えば使うほど賢くなっていく様子を見ていると、本当にチームの一員が成長しているような感覚になる。
僕が見ている景色
OpenClawの導入は、単なるツール導入ではない。僕はこれを、Ragateの競争優位性の根幹にしたいと考えている。
具体的に言うと、MQL(マーケティング活動で獲得したリード)の完全自動化。コンテンツの生成、配信、反応の分析まで、AIが自律的に回す。一方で、SQL(営業が直接アプローチすべきリード)への施策は人間が介入する。信頼を勝ち取るフェーズは、やはり人間の力が必要だ。
つまり、AI+人間のハイブリッド。マーケティング部門に人を雇用しない体制を、本気で目指している。従来の会社は売上や利益に比例してマーケターや人事を増やしていくが、その構造をスキップできる可能性がここにある。販売管理費の圧縮。これは経営者としてかなり魅力的だ。
これからのこと
夏頃には、もっとハイスペックなサーバーを調達して、ローカルLLMをフル活用できる体制を整える予定だ。コンテンツマーケティングの完全自動化、動画やHTMLメールの量産、インターネット調査の自動化。やりたいことは山ほどある。
「もっと早く入れればよかった」というのが正直な感想だ。とはいえ、今この時点でも他社と比較すれば圧倒的に速い。この冬はSlackのOAuthを極め、各種MCPやSkillを整え、AI合宿まで実施した。本日よりいよいよ本格始動する。
OpenClawという名前の新入社員は、まだ入社して数日。でも、この先10年の競争優位性を一緒に作っていける存在だと、僕は確信している。















