アップル創業50周年——ジョブズに熱中した20代の自分を思い出した
2026年4月1日、アップルが創業50周年を迎えた。時事通信のニュースがタイムラインに流れてきたとき、私はふと20代のあの頃を思い出した。
スティーブ・ジョブズの伝記を読みふけっていた時期があった。確かウォルター・アイザックソンが書いた分厚い上下巻で、電車の中でも風呂の中でも、とにかく夢中になって読んだ記憶がある。CEOとして会社を立ち上げたり、いつか起業したいと漠然と考えていた頃だ。なぜあんなにジョブズという人間に引き寄せられたのか、50周年のニュースを読みながら改めて考えてみた。


「シンク・ディファレント」が刺さった理由
ジョブズの何がそんなに面白かったのか。ひと言で言えば、「常識を疑うことを実際にやり切った人間」だったからだと思う。
「違った視点で考えよう(Think Different)」というアップルのキャッチフレーズは、単なる広告コピーではなかった。ジョブズ本人がそれを体現していた。マウスとキーボードによる操作を広めたマッキントッシュ、音楽の聴き方を変えたiPod、そしてスマートフォンの概念を作り直したiPhone。どれも「なぜ今まで誰もこうしなかったのか」と感じさせる製品だった。
私がジョブズの伝記に熱中したのは、技術や製品の話だけでなく、その思考の構造が面白かったからだ。彼は「ユーザーが何を欲しがっているか」ではなく、「ユーザーが本当に必要としているものは何か」を問い続けた。マーケットリサーチを重視せず、自分の直感と美意識を信じ切った。その哲学は、ビジネスや経営を考え始めた自分にとって、一種の衝撃だった。
復帰後のジョブズが教えてくれた「失敗からの再起」
伝記を読んで印象に残ったのは、成功のエピソードよりも、失敗と復活の物語だった。
80年代後半、ジョブズは自分が創業した会社から追い出される。社内政治に敗れ、アップルを去ったジョブズが設立したNeXTは商業的に苦戦し、ピクサーも長らく赤字続きだった。それでも彼は諦めなかった。そして97年にアップルに復帰したとき、会社は倒産寸前だった。あの状況から、iPod、iTunes、iPhone、iPadという怒濤の革新を生み出した。
20代の私はこのパターンに強く惹かれた。「一度ダメになっても、本質的な力があれば必ず復活できる」という証明として、ジョブズの軌跡が輝いて見えた。自分もいつか何かを作り出したい、たとえうまくいかなくても諦めない——そういう気持ちに、彼のストーリーは火をつけた。
50年目のアップル、そして「次のジョブズ」は誰か
今日のアップルは、世界で最初に時価総額3兆ドルを突破し、今や4兆ドルを超える巨大企業だ。ティム・クックという優れた経営者のもとで、安定した成長を続けている。
ただ、AIの時代においては正直、出遅れ感がある。エヌビディアやマイクロソフトがAIブームをリードする中、アップルの「Apple Intelligence」はまだ革新的なインパクトを放てていない。プライバシーを重視するアップルらしい慎重さとも言えるが、ジョブズが生きていたら何を作っていたのだろう、とつい想像してしまう。
ジョブズが残した言葉に「自分が明日死ぬとしたら、今日やろうとしていることは本当にやりたいことか」というものがある。この問いは15年近く経った今も、私の中に残っている。Ragateを創業して9年、OpenClawという仮想従業員の実験を始めたのも、結局はこの問いへの自分なりの答えだと思っている。
アップルが創業50周年を迎えた4月1日、ジョブズに熱中した20代の自分と、現在の自分の間にある距離を測りながら、私はそんなことを考えていた。51年目のアップルが「違った視点」で何を見せてくれるのか。そして自分自身は、この問いにどう答え続けるのか。















